忘れもしない通路の前で
幾度目かの戦闘のち、俺はある場所で足を止めた。
それは、横合いに作られた通路、その先にあるのは行き止まりだ。
前へと進み始めたパーティーから1人置いてかれる形で残った俺に、最初に気がついたのはゆうじだった。
足を止めて、後ろを振り返ったゆうじが訝しげに言う。
「何かその先にあるの?」
俺は、見ていた通路から目を逸らして、ゆうじに顔をむけて首を横に振る。
「いや、なんでもない」
「ふぅん」
ゆうじは意味深に声をもらして、通路の先を目を細めて見やる。
「2人とも何かあったの?」
そこに加わるのは、ゆう。俺達が足を止めたのに気がついて戻ってきたみたいだ。
それに続けてやって来たひさしが、通路のほうを見てポツリと呟く。
「ここ、あの事件現場じゃないか?」
「ああ、あれね。ニュースになってたやつ。へぇ、ここなんだ」
ゆうは興味深かげに通路を見る。
けれど、その先に事件の痕跡は何一つ残ってはいない。ただ、変わらぬ景色があるだけ。
あのとき流れ出た血は跡形も消え去っている。
二度と見たくない光景を見ずに済んでほっと安堵するとともに、やりきれない想いや虚しさが心を満たす。
「手を出してください」
急にゆうじがそういって片手を差し出す。
これを掴め、ということなんだろうが、急に言われて困惑する。
「どうしたんだよ突然」
「いつまでも居続けそうだから手を貸すだけですから」
「いや、べつにされなくても着いて行くぞ?」
俺の言葉を無視して言い訳をはじめるゆうじに、俺は冷静に返す。
すると何故かゆうじは溜め息を吐いて、無理やり俺の手を掴んで歩き始めた。
「おい、ほんとにどうしたんだよ!?」
「ゆう、ひさし、さっさと行くよ。着いて来なかったら置いていくから」
仲間の突発的な行動に2人は顔を見合わせ、なぜか同時に肩をすくめる。
その分かってる感、お互いのなかで完結しないで俺にも教えてほしい。
訳も分からないまま歩くことしばらく、たどり着いたのは上階へと続く階段の前。ここを登ってゆけば外へと出ることができる。
そこで離される手。ゆうじはこちらへと振り向くが、顔が合うことはなく、横に逸らされた顔の目線はやや斜め下を見る。
「今日はもう十分でしょ。このまま帰ろう」
「いや、でもまだ時間が」と言いかけて、遮るようにゆうじが声を上げる。
「元々! そんなに長いするつもりはなかったんです。今日は互いの顔見せ合いをして、かるく潜るだけの予定だったんです。それはすでに達成した。なら、今日はもう良いでしょ」
急な変わりように困惑する俺の肩を、ひさしが叩く。
俺がそちらへと振り向こうとする前に、顔を近づけたひさしが囁く。
「すみません。ああなったら梃子でも動かないんです。申し訳ないけど、今日はこのまま帰らせてください。あっ、もし探索を続けたいのなら、一度外に出てからにしてくれでお願いします。迷惑料ってことで今日の収入に色をつけるんで」
だから頼みますと、そう願われては断れない。そもそも断るつもりもなかった。
だけど、これだけは言っておきたかった。
「聞きたいことがある。できれば出た後にでも」
「OK。あっ、答えづらい質問はしないでくださいよ?」
俺がわかってると頷けば、「じゃ、また後で」といってひさしが離れる。
そのまま先頭まで歩いていったひさしは、すれ違い様にゆうじの頭を一撫でしてこちらへと振り返る。
「じゃ、帰ろっか」
色々と複雑なパーティーなんです。その色々を私が知らない、という問題があるんですけど。
闇が深すぎて見えないんですよね……。とくにゆうじの闇が一番ヤバい気がする。気のせいであってほしいけど。
章の意図から少し逸れるけど、クエスト感覚で楽しも。
てな訳で、
新クエスト【パーティーの闇を暴け】スタート




