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現代ダンジョン冒険譚  作者: 冬空
パーティー編*名前変わるかも?
25/31

連携

無事に合流を果たした俺達は探索を再開した。もちろん、先頭はリーダーであるひさしではなく、ゆうだ。

ひさしはその後ろ、ゆうに手を繋がれている。

なんでも、突っ走るのを防ぐためにしてるそうだ。

恋人繋ぎでは、とは思うが、本人たちは気にしてないのか、気づいていないのか、これといった変化はない。

前にいるゆうじに顔を近づける。


「なあ、あれ気づいているのか?」


指をさすまでもなく、ゆうじは「あれね」と呟く。


「ひさし“は”気づいていないと思うよ」

「“は”ってことは」

「うん。ゆうは気づいている、というより、故意だね」

「やっぱりかぁ」


なんとなくそうなんじゃないかと思った。

顔が見えないのに、その、なんというか、まとってる雰囲気がな……とても嬉しそうに見えるんだよ。

気のせいかもと思ってはいたが、専門家の意見もあり、正しかったと証明された。


「いつもあんな感じなのか?」

「あれを見て、稀だと思う?」


呆れたような眼差しに、俺は首を横にふる。


「いや。ただ、居づらくはないのかと思っただけ」

「ああ、そんなことね。昔からあんな感じだから、もう見慣れたよ。そうでなくとも、いつもは彼女がいたからね」

「彼女っていうと、今休んでる人か」


元々、今回の募集を行うことになったのもメンバーの1人が休んだことに起因する。

その理由は記載されていなかったものの、その間の繋ぎ、ないし、新メンバーとして加入も視野に入れた募集だと書かれていた。

ゆうじは肯定するように頷き、前をむく。


「ゆう、ひさし、敵が来るよ」


甘い空気が霧散する。

パッと手を離した2人は「OK.!」「了解」と軽快な返事を返して武器を構える。

ひさしは俺と同様、片手剣と小盾を左右の手に持つバランスタイプ。

逆に、ゆうが構えるのは身の丈に迫る大盾1つ。背負った大盾を細腕1本で持ち上げ、正面に構える様は衝撃的だった。


「紳二郎さんは見学。僕たちの戦い方を見てて」


そういってゆうじは腰に佩く剣を2つ(・・)抜く。

それを両手に握りしめて、気軽な足取りで2人の元へと歩いていく。

俺はその様子を眺めながら興奮していた。

こうしてちゃんと他人の戦いを見るの初めてなんだよな。

一応、冒険者の資格を取得する際に見たことはある。

だけど、パーティーでの戦闘となると初めてだ。

3人がどのように戦うのか楽しみに待っていれば、奥の方からやってくるチビゴブリンの群れ。

現在、俺達がいるのは2階ではなく4階。群れが出現する階層だ。

俺達に気がついたチビゴブリン達が走り出す。彼我の距離は約10メートル。先陣をきったのはひさし。速さを意識した姿勢で駆け、会敵と同時に剣を振り抜き倒す。


「ほい、次」


次いで動いたのはゆうじ。ひさしの後ろから敵陣の背後へと回り込んだゆうじは、逃げ出そうとする敵を優先的に倒して、逃げるのを許さない。


「じゃ、最後はあたしね」


重そうな大盾を両手で持ち上げて、ゆうは走り出す。

その走りは大盾を持ってるとは思えない軽やかなものであり、そのまま速度を加速させて、大きく飛ぶ。

勢いそのままに天井付近まで飛び上がり、


「散開!」


ゆうの号令に2人は下がる。

そして、落下の勢いに合わせて、下に向けて構えた大盾ごと敵陣に衝突。

ドン! と大きな音をたてて煙が立ち込める。

敵陣から聞こえるうめく声。見なくてもわかる。死屍累々の光景が広がっているのだろう。

これが彼等の戦い方。

その光景を目の当たりにした俺は、


「…………」


絶句していた。

いや、普通そうなるだろ……。

防戦一方も許さない圧倒的な勝利。蹂躙とさえ呼べる攻勢に、数分も経たずに敵は壊滅した。

煙が晴れて見えるのは、床に散らばるアイテムたち。

あれがチビゴブリンたちの残骸かと思うと、なんともいたたまれない気持ちを抱く。


「紳二郎さん、どうでした?」


そう聞いてきたのは、ひさし。剣に付着した血を振り払い、剣を鞘に納めながらの質問だ。


「凄かった、その一言に尽きるな。俺、要らなくないか?」


剣士が2人もいて、もう1人とか、バランスが完全に前衛に偏っている。

入れるなら魔法職だろ。募集要項にタイプが指定されてなかったから応募したが、駄目かもしれない。

ひさし達のことを悪くいってるわけではない。メンバーになるのが難しいことを指していった言葉だ。

お試しで応募したとはいえ、組めるのならその機会を逃さない。

そんな心づもりで来ていたから、初めて会った際、2人が剣を装備してるのを見たときから半ば諦めてはいた。だけど、実際に実力を目の当たりにして痛感した。


―――俺がいても足手まといだ。


3人の息の合った連携。言わずとも各々が役割を理解して動く、その信頼性。それは一朝一夕では身につくような技術と信頼関係ではない。

そんなパーティーに俺がいたところで邪魔になるだけ。

失敗したなぁー、と思う俺に対して、ひさしは笑う。


「おっ、ほんとに? おーい! ゆう、ゆうじ、さっきの凄かったってさー!」


嬉しげに報告するひさしに対して、2人の反応は「はいはいそうね」「だろうね」と淡白なものだった。

興味がないというよりは、自信の表れ。それだけ真似できないと自負している証左だろう。

ますます入りづらい。この後どうしたものかと悩み、頭を掻く。

ひさしは2人の反応に気分を害した様子も見せずに、笑みを浮かべたまま言う。


「それと、な~んか勘違いしてるみたいだけど。俺が求めてるのは戦闘力のバランスじゃなくて、信頼できる仲間、それだけですよ」

「それで行くと今の俺は」

「まだまだ調査段階。これからに期待って感じかなー」

「2人はそう思ってなさそうだけどな」


敵意とまではいかないが、歓迎していない空気を2人から感じる。

本人たちは隠してるつもりかも知れないが、そういう害意ほどわかりやすい。

仲の良い輪に他人が入ったらそうもなるか。

それにはひさしも気づいているのか、申し訳なさげだ。


「一応、納得はしてもらったんだけど、すぐには整理がつかないみたいで。申し訳ないけど、そこを含めて試験ってことで。頼みます」


そういって頭を下げるひさしを前に、俺は息を吐く。


「少し考えさせてくれ」

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