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現代ダンジョン冒険譚  作者: 冬空
パーティー編*名前変わるかも?
24/31

ゆうじ、恐ろしい子……!

結論から言えば、祈りは通じなかった。

例えばだ、ひさしの案内に従って角を曲がったとする。

ふつう、気配の一切ないそこに魔物がいるはずなんてないのに、なんの不幸か、魔物がポップした瞬間に立ち会う。そうなれば当然襲われるわけで……。


「いっつもこうなんだから! 先頭はあたしが行くっていつも言ってるでしょ!? どうして突っ走ったの!?」

「ごめんなさい。新メンバーに浮かれてました」


すっごい縮こまった正座で説教されるリーダーの図が出来上がった。

もちろん、魔物は倒している。倒してなきゃ説教なんてできない。仁王立ちで立つゆうは半信半疑といった眼差しだ。


「これで何度目か覚えてる?」

「えっと………3回目?」

「あん?」

「違うんですね、はい」


意気消沈といった感じだ。可哀想なぐらい縮こまった姿に、止めた方がいいかと思ったタイミングで、横合いからポンポンと肩を叩かれる。

そちらに振り向けば、ゆうじがいた。


「行こう」

「良いのか?」


俺の言葉に、ゆうじは首を横に振る。


「ああなったゆうは止まらない。反省させるまで説教が続くんだ」

「いや、さすがに……」

「巻き込まれたいの?」


俺はその一言に黙った。

好き好んで説教される趣味はない。ひさしが悪い。俺は悪くない。よし、これで大丈夫。


「じゃあ、行こうか」

「うん。とはいっても、少し散歩するぐらいだけどね」


10分を目処に戻ると決めて、ゆうじの後に続いて歩き始める。今いる階層は2階。相も変わらず人が多く、魔物が少ない階層だ。必然的に魔物となかなか出会わないのに、どうすればポップする瞬間に遭遇するというのか。


「驚いたでしょ?」

「驚いたに決まってる。ふつう、あんな場面に遭遇すると思わないからな?」

「ははっ、だろうね。僕も同じだったよ」


そういってゆうじは懐かしげに瞳を細める。

ただそれは一瞬のこと、パッと切り替えるように愉しげな笑みを浮かべた。


「ここまで離れれば大丈夫かな」

「どういう意味だ」


意味深な発言が気になり、俺は腰に佩く剣の柄を掴む。

先日のことがあったばかりだ。人が近くにいる状況とはいえ、警戒して損はない。

そんな俺にゆうじはそっと顔を近づけて、囁くように言う。


「ここだけの話、ゆうはひさしの事が好きなんだ」

「は?」


想定外の発言に俺は間の抜けた声を漏らす。

突拍子もない話をされたら誰だってそうなる。意味深な発言から、こんな話に繋がるとはふつう思わない。

呆然とゆうじを見る俺の視線をどう捉えたのか、ゆうじは笑いながら続きを話す。


「あんなにプリプリ怒ってるのに、内心だと『そういうところが好き!』って言ってるんだよ? 可笑しいと思わない?」

「え、あ、そ、そうなのか……?」


いわゆるツンデレってやつなのだろうか。

先程のことを思い出し、妙にしっくりくる。


「いや待て。どうして分かるんだよ。読心術でも修めているのか?」

「いや。ただ前に聞き出しただけ。少し酔わせて聞いただけだよ?」


思わず半目となってしまう。

他所様のあれやこれやに口を出すつもりはないが、それはどうかと思う。


「あんまり人の恋路に手を出さないほうが良いぞ? 後ろから刺されても知らないからな?」

「刺されるとしたら正面からでしょ。ゆうの性格的に」

「あー、確かに」


妙に納得した。

ゆうじは楽しげにケラケラと笑うと、スッと真面目な表情に切り替わる。


「ゆうのこと、嫌わないでほしいんだ」


俺は目をまばたく。


「急にどうしたんだよ」

「ぅん。ほら、ゆうって見たとおり強気な性格でしょ? だから人に嫌われやすいんだ。あんな性格だけど、繊細な子だから傷つきやすいんだ」

「だから、嫌わないでほしい、か」

「うん、そういうこと。無理にとは言わないよ。相性は人それぞれだし。だから、これはお願い。今日だけでも、そんな素振りは見せないで欲しいんだ」

「ひさしは良いのかよ」


あの運の悪さはゆうよりも嫌われそうなんだが?

そんな意味で聞いた言葉に、ゆうじは笑う。


「それこそ、だよ。ひさしは嫌われた程度でへこたれないし、笑って突っ切るタイプだからね」

「うん、納得感しかないな」


深く頷く。


「それで、どうなのかな?」


俺は手で頭を掻く。


「別に嫌ってなんかない。まぁ、強気な、てか、勝ち気な性格だとは思った。だが、それで嫌になるほど浅慮なつもりはないからな?」


それでいったら会社の上司とかの方が嫌いだ。

急な仕事入ったから後はよろしくと、定時直前に押し付けていなくなったあの野郎。今でも思い出すたびに怒りが湧く。


「ふぅん。なら良いよ。そろそろ落ち着いてるだろうし、戻ろう」


そういってゆうじは、元来た道を戻り始めた。

なんともあっさりとした返事だ。この答えが満足かどうかも教えてくれない。

ただ、合格はもらえたと受け取って良いだろう。そうでなければ「良い」なんて言わなかっただろうから。

俺は背を追いかけながら、気になったことを聞いてみた。


「なあ、もし嫌いだって答えていたらどうなっていたんだ?」


その質問に、足を止めることなく答えが返される。


「別になにも。ただ、パーティーは今日限りになっていただけだよ」

作者のなかで、ゆうじのキャラ像が腹黒ショタとなりました。理由は分かりません。

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