見舞い
どやぁ~(*´∀`)♪
翌日の10時ごろ、佐上が見舞いにやってきた。
「果物を持ってきました。食べれない物はありますか?」
「敬語は止めないか? 死地を潜り抜けた仲なんだからさ」
「それもそうか。で、食べれないものはあるか?」
そういってカゴに入った果物を見せてくれた。中にはリンゴやバナナ、ミカンなどの果物が入っており、どれも美味しそうだ。
「いや、ないな。リンゴもらっても?」
「皮は剥くか?」
「頼む」
「カゴ、椅子に置くぞ?」
「そこしかないからな。全然大丈夫だ」
4人部屋の病室は各部屋のスペースが狭く、両脇の幅は人ひとりが通れるぐらいの幅しかない。一応、冷蔵庫やテレビ付きの台も1つだけあるが、置くスペースなんてほとんどないも同然。
佐上は折り畳み式のイスの上にカゴを置いて、新たに1つ、病室の隅からイスを持ってくるとそこに座り、バックから取り出した自前のナイフで皮を剥く。
シュルシュルといった擬音が付きそうなほど切れることなく繋がっていく皮、俺はその光景に感嘆のため息を漏らす。
「上手いな。普段から料理とかするのか?」
「いや、あんまりしないな。普段は妻が作ってくれるから」
「結婚してるのか」
「40も近いからな。子供を持つとしたら若いうちに、と思ってな。あと、運が良かったのさ。妻も元は冒険者をやっていてな、たまたまパーティーを組む機会があって、そのとき仲良くなったんだ」
瞳を細めて懐かしげに語る話に、俺は相づちを打つ。
穏やかな時間だった。悪夢を見たことで鬱々とした気分が晴れていく。
悪くない。
ふとそう思った。1人だけならきっと抜け出せなかった。永遠と暗いことばかり考えて病んでいただろう。それだけネガティブになっていた。
辛い時に誰かが側に居てくれるそのありがたさを噛みしめる。
「見舞いに来てくれてありがとう」
俺は自然と、そう口にしていた。
佐上は一瞬目を見開き、フッと笑う。
「どういたしまして。リンゴ、剥き終わったぞ」
そういうと共に目の前に差し出されたのは6等分されたリンゴの乗った皿、それもうさぎ型に切られている。
俺はぱちくりと目を瞬く。
「器用なことするなぁ」
「ちょっと興が乗ってつい。嫌だったか?」
「いや、ありがたくもらうよ」
皿とともに使い捨てのフォークを受け取り、1つ刺して口に運ぶ。シャク! と小気味のよい音をたて噛み切られるリンゴ。舌の上で感じる自然由来の甘さと少しの酸味。歯で噛みながらその味を堪能して飲み込む。
「うまっ」
「それは良かった。俺も余った端のほうを……」
手掴みでパクッとリンゴを食たべた佐上は、「これは確かに旨い」と感想を呟く。
俺は「だろ?」なんて返したりして、食べ終わるまでの間、互いに取り留めのない話をした。
食べ終わった皿とフォークを佐上は自前で用意した袋に入れて片付ける。
俺はその様子を見て思わず声を漏らす。
「きっちりしてるなぁ。俺なら果物だけ持ってくるぞ」
「そうか? 普通だと思うけど」
「いや、普通、そこまで用意しないと思うぞ? 用意したとしても、フォークやナイフとか、必要になるだろう物だけだろうし。ゴミならここで捨てれば良いと、用意しないひと絶対いるからな?」
俺の言葉に佐上は「たしかに居そうだ」と、うなずきながら同意する。
「几帳面だよな。俺はそこが良いと思うけどさ」
「ははっ、久しぶりに人から褒められたよ。ありがとう」
「いや、素直に思ったことを言っただけだからな? まっ、ありがたく受け取るよ」
「そうしてくれ」
会話はそこで一度途切れる。なにも話すことがなくなったから途切れた訳じゃない。
ではなぜ、途切れたのか。それは佐上の顔つきが、雰囲気が変わったためだ。
やっぱり、ここに来たのは見舞いだけが理由じゃなかったか。
思わずため息が漏れる。元から分かってはいた。昨日の今日だ。日が替わったことである程度落ち着いているとはいえ、死人が出たんだ。大なり小なり話題になったはずだ。
俺はその後の話をまだ知らない。佐上が来たのはきっとその話をするためだろう。
分かってはいても気が重くなる。どんな話をされるのか考えただけで鬱になりそうだ。
ワンチャン違う話であってくれと願うも、真剣な表情で佐上が口にした話題は予想通りのものだった。
「昨日の事件について、話をさせてほしい」
「やっぱりか……」
「そう嫌そうな顔をしないでくれ。気が重いのは俺も同じなんだ。だけど、これは話しておかなければならない、当事者の1人として」
聞かない訳にはいかないな。
俺は一度目をつぶり、開く。覚悟を決めるためにそうした。
でなければ、この重く感じる口を開くことなんて出来ない。
ため息を吐きたくなる思いをグッと堪えて、佐上を見つめ返す。
「教えてくれ、あの後なにがあったのか」
あと2、3話でソロ編終わる予定。
そこに+して空也との話をどこかに挟む予定。
最後らへん、もしかしたら変わるかも?




