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現代ダンジョン冒険譚  作者: 冬空
ソロ編
10/31

決着

なんででしょうか、雑魚敵を相手にしてるとは思えないぐらいの熱量で書いてました。

最初に突撃してきたのはコボルドだ。

群れの中から飛び上がり、先頭を越えて着陸したコボルドたちは俺に向けて走り出す。

数は3匹ほど。愚直に一直線に向かってくる。

彼我の差が2メートルをきり、1メートルになった瞬間、俺はギアを上げる。

走る早さが上がり、一瞬にして詰められる距離。戸惑い、困惑する目の前のコボルドに向けて、俺は勢いそのままに正面に構えた盾で衝突。ドン!と鈍い音を上げながら吹っ飛んだコボルドは群れに激突し、土煙が昇り、悲鳴が轟く。

左右から襲いかからんとしたコボルドたちはその光景を前に足が止まる。

衝突を利用して勢いを殺した俺は、呆然と立ち尽くすコボルドたちの無防備な首を切り裂き、殺す。

噴き出す血飛沫、俺の体に降り注ぎ服を赤く染める。

まるで血染めの樹。並木みたいだと思った。

逸れた思考をしつつも、敵から意識は逸らず。慌てふためく魔物たちを外周から1匹ずつ殺す。

抵抗は当然あった。俺を認識した魔物たちが上下左右からバラバラな動きで攻撃しにかかる。

俺はそれらの攻撃を背後に下がることで避け、空振った瞬間にできる隙を逃さずに確実な一撃を入れる。

この一撃で殺す必要はない。少しでも負傷させることを念頭においた一撃だ。倒せた数は少なく、だけど、少なくない重傷者を生み出せた。

右から迫るコボルド。止めを刺すには時間が足りない。

攻撃を繰り出されると同時、俺は迂回するように横へと避け、その次いでに胴を切りつける。

分かたれるコボルドの胴体。血を噴き出し、すぐにアイテムと化す。

混乱は落ち着き始めていた。敵の視線は全て俺へと向けられ、その瞳には憎悪を感じる。

背筋がゾクリとした。これは今までとは違う。

見たことのない反応だ。死の気配を感じた。

たぶん、初めて感じたと思う。それぐらい、目の前の敵が強くなってる。

手が震える。剣をうまく掴めず、ガタガタと音を鳴らす。

俺は今、恐怖している。目の前の敵に対して。

絶対に殺してみせると、そう語る彼らの殺意の瞳に、俺は恐怖した。

これが本当の戦いか。

今までのはまだ戦いとも言えないぬるま湯であったと気づかされる。

引くべきか。いや。引いたところで敵は何処までも追いかけてくるだろう。勘なんてなくても、それぐらい分かる。

なら、戦うか。敵の数は10と少し。問題なく倒せるはずだ。

だけど、それは万全であればの話。今の俺は萎縮してる。そんな状況で確実に倒せるとは限らない。

なら、他に頼るか。たぶん、それが一番良いのだろう。逃げながら、頼れる者を探すべきだ。

だけどさ、この程度で逃げてるようじゃ、この先やっていけない。

深く潜ればまた、群れを成す敵と遭遇する。その時に逃げられるとは限らないし、頼れる者がいるとも限らない。

大袈裟かも知れないが、ここが明暗を分ける時だと思う。恐怖を乗り越えられるか、否か。

あまりにも早く来たものだと思う。

もう少し先でも良いのに。いや、早くて良かったか。

俺を囲むようにジリジリと動き円が作られる。いつでも攻撃ができるように構えられた武器。八方塞がりとはまさにこの事だ。

俺はそれをただ見守っていた。馬鹿なことしてると思う。命を捨てる行為だと。

だけどさ、成長するなら今だと思うんだよ。

あえて自らを死地に置くことで、更なる強さを得る。

なんともありがちだとは思わないか?

それで隠された力が覚醒したりしたら、それこそまさしく英雄譚の始まりだ。


「ははっ」


思わず笑ってしまった。そんな都合の良いことは起こらない。

俺はただの凡人だ。他者を圧倒する才覚も、特殊な出自もない平凡な男だ。

だけどさ、この状況はまるで英雄譚にありそうだとは思わないか?

敵は最弱で、強敵ではない。だけど、いま、この瞬間、俺は英雄だ。自分だけの、物語の英雄だ。

なら、その中でぐらいカッコつけたいに決まってる。

危機的状況を華麗に解決して、物語に刻む。

あぁ、そう考えるだけで興奮が止まらない。

自然と笑みが浮かんでしまう。敵が怖じ気づき、1歩下がる。だけど、その足は再び1歩前へと進む。その瞳には覚悟があった。

何がなんでも倒してみせるという覚悟の炎が。

まるで魔王に挑む勇者のように見えた。

この俺が魔王か。

なんとも似合わない役どころに苦笑する。

英雄にして魔王。なら、それっぽく言ってみるか。


「この俺を倒したくば死力を尽くせ! 生き足掻いてみせろ!! さもなくば、死ぬのはお前たちだ!!」


その叫びを合図に、本当の戦いが火蓋をきった。

前後左右からの同時攻撃。避ける隙を無くし、確実にダメージを通そうとする意思を感じる。

高さはそれほどでもないため上に避けようかと見れば、先読みされたようにコボルドが待ち構えていた。


「ははっ。どこまでも逃がす気がないらしい」


目線を正面へと戻す。隙は無し。距離はまだある。

今できることは少ない。その中で俺が選んだのは、


「正面突破だ!!」


盾を構え、突っ走る。正面にいたチビゴブリンたちは慌てて武器を振り下ろすが、その全ては盾に防がれ、逆に吹っ飛ばされる。

だが、左右からの攻撃は防げず、攻撃を受けてしまう。


「ッ!!」


一体一体の攻撃力は低いとはいえ、重なると明確なダメージとなる。

苦痛を堪え、包囲網を突破する。と同時、背後で鳴る打撃音。

壁まで吹っ飛ばされてうめき声を上げるチビゴブリンたちを後ろ目に、振り返れば先程まで俺がいた場所にこん棒が重なる光景が見えた。

魔物たちはすぐに俺へと視線を向けて駆け出そうとするが、重なった仲間が邪魔をして抜け出せないようだ。

俺はその隙を見逃さず、横ぶりに剣を振り抜く。

切り裂く音と共に魔物に作られる横傷。どれも深い傷だ。内、何匹かは今の攻撃で死んだ。生き残った者も、幾ばくかもしない内に死ぬだろう。

これで3割ほど敵は減った。あと7体ほど。

俺は敵が持ち直すよりもさきに動き、首を、心臓を貫いていく。

減れば減るほどに俺に余裕が生まれ、敵には恐怖が刻まれる。

そうして倒していけば、残りは1体となる。

残ったのはコボルドだった。

体を震わせながらも武器を構え、俺を殺そうとしてる。

俺はそれに対し、同じように武器を構える。

最後ぐらい、ちゃんと打ち合って終わらせたいと思ったのだ。

勝敗は決まってると分かってるのに、自分勝手なものだと思う。

それでもさ、最後まで抗う意思をみせたこいつを、ただ倒すというのはその覚悟を踏みにじる行為に感じた。

コボルドを見据え、俺は声をかける。


「じゃあ、行くぞ」


それを合図に、俺たちは走り出し、お互いの武器をぶつけ合う。

2合目はなかった。コボルドの武器はそのまま飛ばされ、その体は切られ、消えて行く。

悲鳴はなかった。コボルドはただ、悔しそうな表情を浮かべてアイテムと化した。


こういうノリが良い時にキャラぶれしてないか、スゴく不安になるんですよね。

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