小さな始まり
3話:小さな始まり
サイバーラボでのアルバイトを始めて数週間が経った。翔の提案による改善案は着実に成果を上げ、社内でも「やり手のアルバイト」として知られるようになっていた。しかし、翔は決して調子に乗らず、目立たないように振る舞い続けた。前世での失敗から学んだ慎重さが、彼を抑えていたのだ。
そんなある日、サイバーラボにとって大きなチャンスが舞い込んできた。新規のクライアントが、顧客管理アプリの開発を依頼してきたのだ。このプロジェクトは、会社にとっても売上と認知度を大きく伸ばす可能性があり、社内は活気に満ちていた。翔もこのプロジェクトに関わることになり、初めて自分が中心となって動く機会を得る。
プロジェクト開始早々、翔はアプリの開発に加えて、収益化の方法についても考え始めた。サイバーラボの経営状況を考えれば、ただ納品して終わるのではなく、長期的な収益源を確保することが重要だと彼は感じていた。そのため、サブスクリプションモデルや広告収入を取り入れる方法を提案し、会社にとっての安定収益源を作り出すアイデアを出した。
この提案は、チーム内で賛否両論を巻き起こした。新しい収益モデルに対するリスクや、顧客がそれに納得するかどうかなど、不安視する意見も少なくなかった。しかし、翔は冷静にそれぞれの懸念に対して根拠を示し、前世で得た豊富な経営知識を活かして一つ一つの反論を覆していった。
その真剣な姿勢と鋭い考察に触発され、周囲のメンバーも次第に彼の案に納得していく。そして、翔が提案した収益モデルを組み込んだ顧客管理アプリの開発が正式に決定され、プロジェクトは新たな目標に向けて動き出した。