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リファイン ─ 誰でもない男の、意外な選択と、その幸福 ─ そして世界は変わる  作者: かおる。
第七章

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2025年5月20日(火)デバフの開発

 俺は、桐ヶ谷さんと吉野さんの入れ替わりを繰り返し、3着目のポンチョを作り終えたところで、魔力が乏しくなったので終了。


 最終的に、ポンチョ3着と奥田くん用の探索着が出来た。

 俺の分は急がなくてもいいので、残り1着は明日に回すことにした。



 とりあえず、出来たポンチョを真司に着せてみた。

 真司は腕を上げたり屈伸したりして、着心地を確かめる。


「軍用のポンチョだけあって、動きを妨げない作りになってるな」

「ホルスターからハンドガンを取り出すのが、少し手間じゃないか?」

「腰から取り出そうとすると、裾がジャマだな。まあ、レッグホルスターに変えれば大丈夫だろう」


 真司はスマホを取り出すと、ミリタリーグッズの通販サイトを開き、その場でホルスターを注文した。


「明日には届く」

 そう言って、スマホをポケットにしまう。


「みんながダンジョン内でスマホを使いだしたら、宅急便が届くようになるかもな」

「ああ、ピザのデリバリーとか頼むヤツが出てきそうな気がする」

「それはさすがに……。いや、護衛付きの配送業ならできるかな」

「そりゃいい。魔法使いの宅急便か。吉野さんなら面白がってやるかもな」



 時間が余ったので、桐ヶ谷さんの派生スキルを増やすことにした。地上で起きそうなトラブルに対処するためだ。

 桐ヶ谷さんのスキルが地上でも効果があるのは、昨夜実証済みだ。



「”特殊効果の付与”ってスキルも曖昧だよなあ。何でもアリなのかな?」

「攻撃するときに『麻痺』や『睡眠』が付与出来るなら、対人戦ではかなり有利になるぞ」

「対人戦なら『毒』とか『魅了』ってのもありじゃないか? ゲームだと、攻撃魔法で敵を倒すほうが早いからあんまり使わないけど、現実の世界で『魅了』なんて使ったら反則級に強いと思うぞ。同士討ちさせられるし」


 俺の言葉に真司も頷く。


「何にも持っていない状態で、相手を毒状態に出来るか? 毒専用のアイテムが必要な気がしないか?」

「それを言ったら、『爆裂』だって何にも持っていないのに爆発するじゃないか」

「でも『爆裂』は触媒みたいなものを使ってるだろ? 鏃だったり、昨日のチンピラのネックレスとか」

「だったら、スライムらしく『酸』はどうだ? それなら無限に生産できる気がする」



 あれこれ意見が出たところで、一つずつ検証していくことにした。


 まず『魅了』だ。

 ちょうどマグラットとバグルスがいたので、バグルスに魅了を掛けてみることにした。


 俺はマンガでおなじみの、目がハートになって頭の上をヒヨコが輪になってヒヨヒヨ踊ってる姿をイメージし、鏃に向かって魔力を込める。

 体が薄く光り出し、それが腕を通って鏃に流れていく。


 スキルが増えた感覚があったので、頭の中の桐ヶ谷さんに、図鑑の表示を確認してもらう。


「桐ヶ谷さん、どうでしょう? スキル増えてませんか?」

『魅了……増えてますよ。凄いですね。こんな簡単に派生スキルが増えるなんて……ビックリしました』

「そこは慣れですかねー。吉野さんとのやり取りで、あれこれ派生スキルを増やした経験が活きてます」

「増えたのか? だったら、早速試してみよう」



 俺はバグルスの太もも目掛けて、魅了を付与した矢を放った。


 バグルスはギャっという声を上げて倒れるが、すぐに起き上がった。

 そして、周りを見回すと、マグラットに向かって攻撃を始めた。


「あれって、マグラットが攻撃してきたと思ってんのかね」

「だろうな」


 バグルスは負傷しているため動きづらそうだが、攻撃力ならマグラットより強い。

 のんびり観戦していると、やがてマグラットが灰に変わった。


「おお~、効果抜群じゃん」

「マグラットの攻撃を受けても魅了が解けなかったところを見ると、なかなか強力だな」


 真司はそう言うと、傷だらけで勝ち誇っているバグルスを撃ち殺した。


「だが、魔法に対する抵抗力が強いヤツがいたら、効果がないかもしれない」

「んじゃ、どの階層までデバフが効くか試してみようぜ」



 道中、色々なデバフを試してみたが、『麻痺』と『睡眠』は派生スキルとして追加出来た。

 麻痺に掛かった異生物は、しばらく動けなくなる。

 睡眠は、その場でスヤーっと寝始めるが、倒れたときの衝撃で目が覚めることがあった。こっちは使いどころが難しいかもしれない。


 ただし、『毒』は追加出来なかった。『酸』にいたっては、派生スキルとして増やすことは出来たが、ダンジョン産の矢を溶かしてしまう被害が出たため、中止した。



「毒と麻痺のコンボが使えれば、安全圏から敵を倒せるんだが。実際に自分で毒を受けてみたら、イメージしやすいんじゃないか?」

 真司が提案する。


「それって、すんげえ苦しそうなんだけど。それに、ダンジョンに毒を使う異生物がいるのか?」

 俺は露骨に嫌そうな顔をする。


「20階層にいたと思うぞ。バカでっかい蜘蛛型の異生物。自衛隊が苦戦してる映像を見た覚えがある」

「ヒエー。俺たちがそこまで行くのは、ずいぶん先なんじゃないか?」

「オマエと吉野さんがいれば、実力的には問題ないだろ」

「暴力団の問題が片付けばな。正面から絡んでくるヤツばかりじゃないだろうし、少しでも危険があるうちは吉野さんにムリさせられないよ」

「そこは向井さんとうまく連携を取っていこう。ナンブにいる内通者を排除出来れば、徐々に暴力団も力を失っていくはずだ」



 そんなことを喋りつつ9層に到着。ここまで、何の問題もなくデバフが効いた。

 サーベリオンの巨体にも効果があったので、おそらく人間にも効くだろう。



 地上に戻るとまだ早い時間だったが、真司は出掛ける用事があるという。



「これからスポーツクラブの申し込みをしてくる。トレーニングウェアも揃えないといけないし」

「……桐ヶ谷さんが通ってるクラブか」



 すでに脳内桐ヶ谷さんから、オリジナルの桐ヶ谷さんが通っているスポーツクラブの名前と、主な利用時間帯を教えてもらっている。



 俺は、軽い足取りで去っていく真司を見送った。


「オンオフの切り替え早──」

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