表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リファイン ─ 誰でもない男の、意外な選択と、その幸福 ─ そして世界は変わる  作者: かおる。
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/122

2025年5月4日(日)午前9時 再びダンジョンへ

第三章スタートです。

再びダンジョンにやってきたけれど……。

 俺はナンブにやって来た。

 今日は、自分のスキルの確認が第一目的だ。


 特に気になるのは『擬態』。

 どうやって吉野さんになったのか、いまだにわからない。

 あと、スキルの働きが、地上とダンジョンでどのくらいが違うのか──それも確かめたい。

 そして、アレだよアレ。グレー文字だった“風魔法”。


 吉野さんが俺のスキルを使えたってことは、俺も彼女の魔法が使えるはず。

 やっぱり使ってみたいじゃん、魔法って。



 そう意気込んで来たものの、前回スライムにひどい目に合わされている。とてもじゃないが、ソロで入るのは気が乗らない。説明会でも、ソロはダメだと散々言ってたし。


 ベテラン探索者はソロでも入るが、それはそれ相応の実力があるからで、こっちは全身初心者装備のビギナーだ。このままダンジョンに入ったら、どうしたって悪目立ちする。


 パーティーを組むのはいい。問題は、どうやって仲間を見つけるかだ。

 俺は、この点をまったく考えてもいなかった。


 何となく、入口前に人待ちっぽい探索者は数名いるが、声を掛けていいものかどうか……。


 あからさまにガラが悪い男とパーティーを組むのは論外だが、ゲームみたいに酒場でメンバーを集めるわけでもないし、大声を出してメンバーを募集している人もいない。

 吉野さんは、大学のサークルメンバーとダンジョンに来るつもりだったので、野良パーティーの入り方など知らなかった。



 しばらくダンジョン入口でウロウロしていると、男性グループが声を掛けてきた。


「一人で来たの?」

「よかったら一緒に行かない?」


 助かりますと言いかけたが、脳内で吉野さんが待ったを掛けた。


 初心者装備で困った顔をした女の子が一人でいたから、親切心から声を掛けてくれたのかもしれない。

 だが、今の俺はか弱い18歳の女の子でしかない。女性の身で知らない男だけのグループに入ると、面倒が起きる可能性もある。



 吉野さんの判断は早かった。ここはスルーしろ、とのこと。



「友だちと待ち合わせてるんで、大丈夫です」

 俺はかわいらしい笑顔でやり過ごした。



 しばらく待つと男女4人のグループが来た。どうやら学生のようだ。

 俺は、吉野さん監修のもと、精一杯甘え上手な女子大生を演じてみた。



「あのー、友だちとダンジョンに入る約束してたんですが、ドタキャンされちゃって。ソロだとまだ怖いし、この前魔法が使えるようになって、色々試したてみたいんですよ。お邪魔にならないようにしますので、同行させてもらえませんか?」


 向こうのグループも魔法に興味があるようで、快く了承してもらえた。

 吉野さんからもクレームは入らなかった。どうやら、女子大生らしく自然に振る舞えたらしい。



 彼らと一緒にダンジョンに入る際、スキャナーの画面が他人からは見えないようするため、俺はさり気なく最後尾に並んだ。



 ヤマムラ ソウタロウ

 Registration Code: 14111-766732M

 Achieve : 1F

 Location:Konan 003, Yokohama City, JPN

 2025,0504,0936 : IN



 スクリーンに表示されたのは、俺の名前だった。

 この本人認証システムは、深域管理機構の自信作だ。偽造や不正はあり得ない。


 24時間吉野さんと一緒にいるせいか、俺はだんだん自分が山村荘太郎なのか吉野美玲なのか、わからなくなってきていた。

 この認証画面を見て、二日ぶりに、自分は山村荘太郎だと証明されて、心底ホッとした。



 そういえば、俺が行方不明になった件はどうなったんだろう。


 あのゴッツい人、向井さんって言ったっけ。わざわざ俺を探してダンジョンに入ってきてくれたけど──、そのときにはもう、俺は吉野さんの姿になっていた。

 いくら探しても、見つかるわけがない。


 あのあと、退場の記録は付いたはずだから……そんな大ごとにはならなかったのかもしれない。一応、注意くらいはされるかと思ってたんだけどな。



 結局、ダンジョンでは何があろうと自己責任ってことか。

 向井さんも、“深域管理機構は、ダンジョン内の安全を保証する機関ではない”みたいなことを言っていたし。

 まあ、放っておいてくれたほうが、こっちも助かる。今の状況で目立ちたくない。



 ふと、「この人、もう人間じゃありませんよ」みたいなアラートが鳴ったらどうしようと思い、俺は足早にゲートから離れた。



 ***



 神奈川県深域管理機構、港南支部の3階には、ダンジョンの入退場を監視するセキュリティルームがある。壁一面にいくつものモニターが並ぶその部屋に、『注意』を知らせる緑色の点滅とブザーが鳴った。



 アラームには3種類ある。

 要確認の『注意』と、警戒を促す『警告』、緊急時の『警報』だ。



 警備員がスクリーンを確認した。

 映っていたのは、小柄な女性がゲートを通過する場面だった。


 入場者の記録を見ると──



 ヤマムラ ソウタロウ

 Registration Code: 14111-766732M

 Achieve : 1F

 Location:Konan 003, Yokohama City, JPN

 2025,0504,0936 : IN



 ヤマムラという男には、初回の実技講習で一時行方不明になったという記録があった。

 当日に退場したログが残っていたため大事には至らなかったが、後日事情を聞くことになっていた。

 しかし、名前からして、スクリーンに写った人物は、どう見てもバンドの持ち主ではなさそうだ。



 腕のバンドを他人と交換することは規約違反だが、それ自体を取り締まる法的根拠はない。だが、ダンジョン内の犯罪を野放しにするわけにもいかなかった。


 ダンジョンが出来た当初、高額なダンジョン資源をめぐって争いになり、行方不明になったり、殺害される探索者が少なくなかった。

 ダンジョン内では無敵の強さを発揮する探索者でも、地上に出れば弱体化する。ダンジョンの内外を問わず、探索者には危険がつきまとうようになった。


 本人になり代わって資源を売り払えば、大儲けが出来る。


 ダンジョン資源を売りに来た探索者を拉致し、場所を聞き出したあとに殺害する事件も起きた。暴力団関係者の関与が疑われたが、決定的な証拠は見つからなかった。


 そこで取られた対策は、採取した資源と本人を紐づけることだ。滞在した階層と売りにきた資源のデータに乖離はないか、厳密にチェックされるようになった。


 不正な転売を防ぐため、厳格な本人認証が求められた。

 指紋、声紋、網膜での認証では不十分だったため、新たなシステムが導入された。

 魔石共鳴型量子DNA認証システム(MQD)だ。


 この技術は、探索者のDNA分子が持つ微細な量子状態を検出し、個人ごとに異なる振動特性を解析する。

 さらに魔石の特性を利用し、DNA配列だけでなく、細胞内の微弱なエネルギー反応もスキャンすることで、より正確な個人特定が可能になる。


 このシステムは絶対に破られないと、開発会社は言い切った。

 もしこの本人認証システムがハッキングされたら、誰も安心して探索業が出来なくなるだろうとも。



 しかし、今、警備員の目の前で、ヤマムラ ソウタロウとは別人と思われる人物がダンジョンに入っていった。

 なりすましがあれば、黄色い『警告』のランプが付いて、盛大にアラートが鳴るはずなのだ。見逃しはありえない。



 一体、どうやって……。



 警備員はアラームを『注意』から『警告』に切り替え、報告書にこう記した。


 要注意人物:ヤマムラ ソウタロウ

 監視レベル:警告 脅威度2


 ──と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ