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リファイン ─ 誰でもない男の、意外な選択と、その幸福 ─ そして世界は変わる  作者: かおる。
第九章

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2025年5月26日(月)再会

 万が一に備えて身構えたまま待っていると、ナンブで知り合った有田さんが現れ、その後ろから金子さんも姿を見せた。


 顔見知りだったのでひとまず警戒は解いたが、桐ヶ谷さんの姿で二人に会うのは初めてだ。俺は、あくまでも初対面のフリをすることにした。



「──ちょっと失礼しますよ。ウチの甥っ子が、こっちに知り合いがいるって言うんで来てみたんだけど」


 有田さんは俺と真司の顔を見る。


「……違ったみたいだな」

「でも、さっきの魔力は、絶対吉野さんだった。あんなに大きな魔力は、彼女しかいないんだ」

「そうは言っても、ここにはいないぞ?」


 なにやら金子さんと有田さんでもめ始めた。

 金子さんは前と違って、ずいぶん積極的に見える。


 そういえば、吉野さんの魔法で遠くに飛ばされた魔石を探そうとして、派生スキルを増やしたこともあったっけ。

 あれからスキルだけでなく、精神的にも成長したのかな。



『あちらの若い男性は、探知系のスキル持ちなのかしら? 魔力の大きさが判別出来るとなると、山村さんの正体がバレたりしませんか?』

 頭の中で、桐ヶ谷さんが警戒したように囁く。


(真司ならともかく、魔力の大きさだけでは、個人の識別はできないと思いますよ。──でも、吉野さんの魔力の大きさを覚えてて、こっちへ来たのか……。面倒なことになったぞ)



「──それで、何かご用かしら?」

 二人を早めに追い払いたい俺は、ちょっと不機嫌そうな態度を取る。


「ジャマして悪いね。有田ってモンなんだけど……」


 有田さんは、俺のほうを見て目を細める。


「キミ……もしかしてスマホのオークションで動画に出てた人かな? 顔は見えなかったけど、そのキャットスーツと……」

 有田さんの視線がさり気なく下のほうに行き、ほんの一瞬俺のヒップを確認する。



 なるほど、有田さんは尻派だな。



「よくわかったわね。でも、あんまりジロジロ見ないでくださる?」

「……ゴ、ゴホン。失礼。お会いできて光栄です。実は、あの動画で自分もアナタのファンになりましてね。こんなにキレイな女性だとは思わなかった。いや、ホントにお美しい」

 有田さんは、気まずそうに咳払いをして誤魔化す。


「あら、そう? ありがとう」

「実は、オークションのスマホを買ったのはボクなんですよ。最後の競り合いが激しくてね、落とせるかどうかヒヤヒヤしましたよ」

「まあ……スマホは気に入っていただけました?」

「そりゃ、もちろん。なんなら、あと5台くらい買っちゃおうかな~って。えへへへ」

 有田さんは機嫌よさそうに喋る。


「ちょっと、叔父さん……そんなにいらないでしょ?」

 金子さんが眉をひそめて、デレっとした有田さんの横っ腹をつっつく。


「我が社の製品を気に入っていただけたようで、何よりです。あいにくこの場に名刺を持ってきていないのですが……ディープレイーヤーの小沼です。よろしく」

 真司は前に出て、有田さんに右手を差し出す。


「ああ、こりゃどうも。社長さんですか? いやあ、こんな美しい女性と毎日仕事ができるなんて、実に羨ましい。あ、こっちは甥の金子章平です。こう見えても、ボクはそれなりに探索者として名が通ってまして。いつもはナンブで活動してるんですけど、箱根にも詳しいですよ。毎週末、箱根で車のレースをやってまして。その帰りにダンジョンに寄るんですよ。……まあ、箱根は広いですからねえ~。お二人は初めてですか? よろしければご案内しますよ?」

 有田さんは真司の右手を両手で握り、ハイテンションで一気にまくし立てる。


「初めての場所を自分で調べていくのも、探索の醍醐味だと思いません?」

 俺はそっけなく言う。


「あ……そうそう。うんうん。ホントにそうですね」

 有田さんは首がもげそうなくらいブンブンと振って同意する。


「それに、GPSが使えるので、ダンジョン内のマッピングをしようかと。楽しそうでしょ?」

「ああ、わかります。ボクも、子どもの頃から散々ゲームはやってますから。方眼紙を買ってきてマッピングしたり、アイテム集めをコンプリートするまで何日も徹夜して……」

「まあ、方眼紙ですか? おかしな人ですね。ふふふ」

「あ? そ、そうかな? アハ、アハハハ……」



 そんな感じで、どうでもいい雑談が続くと──



『あの──山村さん、そろそろ』

 頭の中で桐ヶ谷さんの呆れた声が響く。


(それはわかってるんですが……どう会話を打ち切ったらいいと思います?)

『普通に「先を急ぎますので」でいいんじゃないかしら?』



「あの……せっかくお知り合いになれたところですが、私たち、先を急ぎますので」

 俺は有田さんの話を適当に打ち切って、その場を去ろうとした。


「ちょ、ちょっと待って! えっと……あ、魔水に興味ありませんか? 魔水が出てる場所だけお教えします。それで撤収するので、そこまでぜひご一緒させてくださいっ!」

 有田さんが慌てて頼み込む。



(……だそうです。タダで教えてくれるそうですよ)

『じゃあ、もらうものもらって別れましょ』

(ドライですね)

『いえ、作業効率の問題です。魔水を探し回る手間が省けるなら、しばらく付き合ってもいいんじゃないですか?』

(うーん、それだけで済むかなあ……)



「あ、異生物が現れたら、全部ボクが倒しますので、ご心配なく。防御も完璧ですよ。なにしろ、ボクのスキルは、鉄壁の守りを誇るシールドなんで。そもそもシールドとは──」

 有田さんが勇ましげに胸を張る。


「叔父さん、ボクは射撃の練習に来たんだけど」

「私も、スキルの練習をしたいんですよね」

 俺と金子さんは、揃って有田さんを冷たい目で見る。


「ん? ああ、そうか。じゃあ、ボクはフォローに回りますので、章平と……あの、アナタのお名前を伺っても?」

 有田さんはしゅんと肩を落とし、控えめに尋ねてきた。


「──では、アンジェラとお呼びください」

「アンジェラさんですか、美しい名前ですね。アンジェラ……」

 有田さんは、恍惚とした表情で繰り返す。



『なんでアンジェラなんですか?』

 桐ヶ谷さんが不思議そうに尋ねる。


(俺の中で、カンフー女優といえば、アンジェラ・マオなので。それに本名を名乗って、オリジナルの桐ヶ谷さんに迷惑を掛けるわけにいかないじゃないですか)

『なるほど。それもそうですね』

カンフー女優としてはミッシェル・ヨーのほうが知名度があるかな?

でも、アンジェラって名前の響きがいいよね。


※12/1変更点

金子さんが魔力の大きさを見分けられるようになったという、前段階の説明を追加しました。

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