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目が良くなる毒

アオは都を過ぎさらに南下した。

八剣山。

アオの知っているかぎり一番高い山だった。

そこまで、歩きづめでも二日近くかかる。


荷物の中に入ってる竹筒には夏に酒と交換した”目がよく見える毒”が入っている。

ここいらで一番高い山に行けば、どこでも見渡せるはず。

アオはミコトを探そうとしていた。

この謎の病に、もしかしたらミコトなら直す薬、いや毒を持っているかもしれない。

そんな直感がアオの頭の中を走っていたのだ。


だが、八剣山はそんなに甘い山ではなかった。

行者たちが修行に使う山で女人立ち入り禁止になっているほどの険しい山だった。

終わり際とはいえ冬だ。風も冷たい。

旅館の老人は「何人も死んだ」と言っていた。


手は豆がつぶれて血だらけになっている。

それでもアオは登りつづけた。すこしでも高い所にいかなければ・・・・

だが山というより崖になってくる。これ以上は素人には無理だった。

気づけばあと一歩でも動けば落ちそうな所にまできていた。

足元の崩れた石がカラカラと落ちていく。

どこまで落ちたかわからない。

それでもまだ上を目指した。

このままでは山が邪魔で向こう半分が見えない。

だがもう賭けるしかない。

アオは毒を飲んだ。


強い風がアオの体を揺らす。

腹のそこが熱くなってきた。その熱さがだんだん上に上がってくる。

ノドをとおり口の奥から鼻の奥にそして目の奥に達した。

アオは怖くなり目を閉じた。

だが、閉じたはずなのに視界が閉じられない。

まぶたなど透かして見えるのだ。

崖の下を見ると肉眼では見えるはずのない地面のこけまで見える。

アオは一気に遠くを見渡した。

冬の晴天で雲はほとんどなく見渡せた。ものすごい情報量がアオの視界から入ってきた。

不思議なことに一つの街に何百人といるであろう人の顔や姿まで一瞬で認識できた。

ミコトは見当たらない。

ゆっくりと見渡した。 はるか遠くには日本一と言われるフジの山まで見えた。

南の国の集落も見渡したがいないようだ。

アオはあきらめず目を凝らした。

時が経つにつれ、目の機能は上がっていく。それと同時に目の玉が血管を浮き立たせ段々出てきた。

痛い。

どれほど見続けただろう。

段々と太陽が西に傾いている。


アオはここまで一睡もせずにやってきた。体は疲弊しきっている。

これ以上ここにいれば疲れ果て、落ちてしまうかもしれない。

もしかしたら山の向こう半分の方にいるのかもしれない。

あきらめ一回下山しようとしたとき。

アオはふと川を見た。

はるか西の方角の大きな川だ。

そこで魚釣りをしている男が見えた。


「いた!!」


ミコトだ。 大きなアクビをしながら釣竿だけをたらし大きな岩のうえで寝ている。

ここからあの山までどれほどかかるか。また二日はかかってしまう。

アオはその立っているのも精一杯の場所で荷物から火打ち石と布に巻かれた松明をだし。

強風の中くろうして火をつけた。

松明はちいさな煙をあげもうもうと燃え出す。


「たのむ! 気づいてくれ!! 」


アオは大きく松明をまわした。

ほんとうなら見えるはずなどない。

それでも松明を、回し続けた。


「このままじゃ、ミツキも都の連中も死んじまうかもしれないんだ、たのむ! たのむ!」


アオは大きな声でミコトに話しかけた。

そのときだった。 寝ていたはずのミコトがばっと上体をおこした。

誰かと話している。 どうみても近くには誰もいない。

近くには雑草くらいしかいない。

そして、ふと自分の方を見た。そして首をかしげもう一度誰かと話している。

ミコトは荷物の中からアオに上げたものと同じような竹筒を取り出しその中から何か飲んだ。

おそらくアオと同じ毒だ。

ミコトはアオに気づいた。

そして笑顔で手を振った。

アオは手でこっちっくるよう合図した。

ミコトは最初よく理解できないようだったが、自分を指差しアオを指差し頭のうえで大きく円を作った。

すると、すぐに釣竿をかたづけ始めた。

アオは安堵した。

通じたのだ。 でもいったいなぜ? 

不思議なことがおおすぎてアオも理解がつかないが、とりあえずその危険な場所から降りることにした。



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