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蟻が顔の上を歩いた。

ミコトはそのかゆみで目を覚ました。

小屋の中にはアオや家族はもういない。


アクビをしながら外に出ると、奥さんがかごを担いでいる。


「ああ あんた起きたの? ずいぶん飲んだみたいだね。」


固定する紐をゆわきながら、くすっと笑う。


「あの、アオさんは・・・」


「ウチの人なら畑さ、酒に漬ける花を育ててるもんも結構あるからね。 アタシはこれからキノコ拾い。

アンタもう発つのかい? 」


ミコトは顔をポリポリとかきながらあたりを見回した。


「そうですね。 長居しても何ですし。 アオさんの畑はどちらですか? 挨拶していきたい。」


律儀りちぎだね。 ここ真っ直ぐいってアケビが巻いている木を左にちょっと行ったところだよ。開けてるからすぐわかる」


「ありがとうございます」


ミコトはそういうと一礼して奥さんを見送った。

そして大きなアクビを一つした。



畑はすぐにわかった。

ちょっとした広さの場所を想像していたミコトだったが、そこは一面の花畑だった。

一番むこうの畑の端までは歩いてちょっとかかりそうだ。

咲いているのは錨草いかりそうの薄紫の花だ


「おー あんた もう発つんか」


畑の真ん中で雑草とりをしているアオがミコトに気づき声をかけ近づいてきた。


「すごい広さですねー 」


「ああ、ここは特にな。昨日話したろ? 俺の親父の話。」


「え? ええ」


ミコトは半分酔っ払って眠っていたので、ほとんど話を覚えてなかった。


「あのくそ親父がな、この錨草いかりそうだけは特に沢山育てろってうるさくてな。 なんせ煎じるとこれ有名な夜の薬になるからな。

増えすぎちまって困ってるよ。酒に使うんだってこんなには使わんしな。」


「あの昨日は本当におかげで久々によく眠れました。 また寄りますので。」


「ああ、だがあんたもブラブラしとらんで何処かに根を張っていかにゃいかんよ。せめて酒くらい金で買ってくれ」


アオはミコトの背中をポンと叩いた。

ミコトはニコッと笑うと会釈をして、出発した。

と思ったら足元の小石につまづいて転ぶ。

照れくさそうに笑い。 アオも笑った。


「達者でな」


アオはミコトの姿が小さくなるまで見送った。



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