親友が出来ました
「お嬢様到着しました。」
と言いアンナが馬車の扉を開けて手を繋いで会場まで歩いて行く。
王都の中心部にある公爵邸を出てほんの数分馬車に揺られて王城に到着した。
白で統一された大きな建物に緊張してしまう。
思わずアンナと繋いでいた手を無意識に強く握ってしまったみたいで緊張を感じ取ったアンナが元気づけるように
「お嬢様、旦那様も仰っていた通りそんなに緊張されなくて大丈夫ですよ。」
そう笑顔で言った。
そうなのだ、お父様にも子供達通しの一部の貴族しかいないささやかなティーパーティだから気軽に行っておいでと言われたのだ。
だがしかし、今日失敗することで破滅の道へと進むというのに緊張するなという方が無理な話である。
緊張で早まる胸を押さえているとパーティー会場の前に到着してしまった。
「お嬢様、ではここから先は招待されているご子息、ご息女様しか入れなくなってしまうので私はここで失礼させていただきます。お帰りになるまで馬車で待機していますね。」
今回のティーパーティは子供しか入れないためアンナとはここでお別れだ。
「ありがとうアンナ、私頑張るわ! 」
アンナにお礼を言い、扉に手をかけて中に入る。
「うわーーすごい。」
中に入ると、シャンデリアが天井で綺麗に輝き、真っ白な机が何十個と並びその上にちょっとしたお菓子やケーキが自由取れるような形で並んでいる。
あまりにも、きらびやかな雰囲気に思わず声が出てしまった。
そして、ある程度この雰囲気に慣れたところで会場の端の方を定位置として、お菓子をつまんだりボーッとしていた。
結構な時間そうしているとふと、気付いた事がある。
会場を見回してみると、会場の真ん中辺りにものすごい人だかりが出来ているのだ。
「あー、あの人だかりはこの国の王太子様がいるからですよ。」
すぐ真横からニョキっと顔を出した男からものすごい早口で言葉が発せられた。
驚いて、咄嗟に後ろに下がりながら声がした方に視線を向けると、そこには暗い緑色の瞳と長い髪を1つにくくり、メガネをかけた小さくて細身の男が立っていた。
え?あなた、一体誰ですか?
と困惑している私に、その男は胸に手を当てて深く頭を下げた。
「ご挨拶申し上げます。僕は、ライナース公爵家の長男でクルト・ライナースと言うものです。ついさっきあなたが人だかりを不思議に思ってそうな顔をしていたので、思わず口出しをしてしまいました。」
お、おぉ、早口過ぎてほとんど何を言っているのか分からないし、ずり落ちてくるメガネを話している途中で一定のテンポで直すのでそれが気になってしょうがないんだが。
なんだか、申し訳ないが前世の私と通じるものを感じてしまった。
とりあえず、
「あぁ、そうなんですの」
動揺しながらなんとか返事をする。
すると、クルトもといメガネくんは
「はい、そうです。僕も気になって人混みに混じって見に行ったのですが、とても美しい方でした。親友としてはぜひ見ることをお薦めします! 」
興奮気味にメガネくんは捲し立てる。
「あー、はいそうなのですか。」
そう言いながらあれ? と引っかかることがあった。
私達っていつの間に親友になったのかしら?
首を傾げながら疑問に思っていると
「ささ、遠慮しないで見て来てください、僕だけが見てしまったのは申し訳ないですから。」
メガネくんに背中を押され人混みへと向かう。
なんだか、よく分からないのですが親友が一人出来てしまったようです。
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