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第9話 柴咲さんがYシャツを返してくれない

 


 つい先程、俺は同僚の柴咲さんからココアをぶっかけられた。

 何故そんなことになったかというと、恐らく俺の言動で彼女が照れたことが原因だろう。

 俺は文字通りの意味で気になっていると言ったのだが、冷静に考えてみれば気になっているとは恋愛的な好意とも取れる。

 いきなり真っ向からそんなことを言われたら、誰だって少なからず照れるハズだ。

 彼女の反応は少し過剰ではあったものの、原因を作った俺が文句を言う筋合いはない。






「本当にごめんなさい!」



 ココアまみれのまま仕事をしていると、落ち着きを取り戻したのか柴咲さんが頭を下げに来た。



「いや、悪かったのは俺なんで気にしないでくれ」


「気にします! とりあえず、それ脱いでください!」


「それはできない。何故ならば裸になってしまうからだ」



 背広は脱いでいたため被害は無かったが、Yシャツとインナーは半分以上茶色に染まっている。

 これを脱いでしまうと完全に裸になるか、裸に背広を着る変態スタイルになるので、それは避けたいところだ。



「これ! Yシャツ買ってきたんで、着替えてください!」



 そう言って柴咲さんは新品のYシャツを押し付けてくる。

 どうやら暫く戻ってこなかったのは、これを買いに行っていたからのようだ。

 なんだか悪い気もしたが、折角買ってきてくれたのに受け取らないのも困らせることになるので、素直に着替えることにした。



「汚したシャツは、洗濯して返します」



 新品のYシャツまで貰ってしまったうえに洗濯までさせては悪いと断ったのだが、柴咲さんは頑なで結局押し切られてしまった。



「主様」



 柴咲さんが去ったあと、入れ替わるように白鳥さんが現れる。



「……まだ主になったつもりはないんだが」


「すいません。でも、一言言いたくて」



 一言言うのに主様と呼ぶ必要は全くないと思ったが、とりあえず続きを促す。



「あのYシャツ、恐らくもう、戻ってきませんよ」


「それは、どういう……」


「決まってます。自分のものにするんです」


「そんなワケが……」


「あります。私なら、そうしますから」



 それは白鳥さんだけじゃないかな……





 しかし翌日、俺のYシャツは本当に返ってこなかった。

 柴咲さんの言い分では、「汚れが落ちなかったので私の方で処分しておきますね」とのことだったが……



「主様、これを」



 白鳥さんがスマホを差し出してくる。

 そこに映されていたのは、柴咲さんが俺のYシャツを着て、襟元をクンカクンカしながらベッドを寝転がっている姿だった……




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