番外編② 忍者の里14
「……確かに、娘を物扱いするような言い回しは好ましくないね。しかし、親としてはそれ以上に気になることがある。……何故、ここに柴咲さんも連れてきたんだい?」
まあ、それはそうだろう。
男が交際している女性の親に挨拶をしに行くのは、ほぼ間違いなく婚約、または交際の許しを得るためである。
当然例外はあるだろうが、普通ならそう思われても仕方がない。
だからこそ、挨拶に来た男が娘とは違う女性を連れてきたとなれば、一体何のつもりだと疑念を抱くのも当然と言える。
「彼女もまた、本日お伺いした理由に関りがあるからです」
「……ほぅ?」
お義父様の目つきが再び鋭さを増す。
いきなり卍解されたらどうしよう。
……いや、仮にされたとしても退くつもりはないぞ。
何故ならば俺はここに来た時点で、とっくに覚悟完了しているのだからな。
そう、不退転の覚悟を!
「まさか、二股をしている――なんてことはないよね?」
完全に敵対したあとの愛染フェイス!
一刻も早く、ここから消えたい……!
い、いや、ダメだ! 俺は退かぬ! 媚びぬ! 顧みぬ!
「し、してます。私は二人を愛していますので!」
「主様……!」
「太郎さん……」
心に聖帝を宿した俺の言葉に、静香ちゃんと詩緒ちゃんが嬉しそうな声を上げる。
しかし、それとは対照的にお義父様の霊圧がすんごいことになってしまった。
今にも黒柩の完全詠唱版が放たれそうな勢いである。
「……なるほど、そういうことですか」
そんな緊迫した雰囲気の中、怒った様子も困惑した様子もないお義母様が独り言のようにつぶやく。
「紀香……?」
「アナタ、冷静に考えてみてください。二股をしている男性が、わざわざ馬鹿正直に二股していることを交際相手の両親に報告しに来ると思いますか?」
「……思わないが、静香の話では誠実な男だと――」
「誠実な男性は二股などしませんよ」
「グハァ!」
冷静に状況を判断し俺のフォローをしてくれそうだったお義母様から、思わぬ言葉の刃が飛んでくる。
事実なだけにクリティカルヒットだ。
「しかし、一般的には誠実と言えずとも、そこに愛がないワケではありません。……愛、ありますよね?」
「は、はい! ここに愛はあります!」
心臓に拳を当てて自信を持って答える。
舐めたらアカンぜよ。
「だとしても、それはただ優柔不断なだけだろう?」
「グハァ!」
正論パンチが痛い……
しかし俺は退かぬ(略
「勿論それもあるでしょうが、それだけではない――ということです」




