番外編② 忍者の里12
「改めまして、静香を救っていただきお二人には感謝いたします。先程はあんなことを申しましたが、実際のところはもしそんな状況になろうものなら全力で阻止していましたので、どうか安心してください。現代の忍者はそこまで冷酷ではありませんので」
……それはつまり、昔の忍者であれば血の繋がった娘だろうが容赦なく見捨てていたということなのだろう。
怖いなさすが忍者こわい。
「ということは、静香ちゃんは監視されていたってことでしょうか?」
「ええ。実は皆さんの会社にも、私が手配した者が忍び込んでいるんですよ?」
マジで!?
思わず静香ちゃんと詩緒ちゃんの顔を見るが、二人とも俺と同じように驚いた表情を浮かべていた。
いやいや、静香ちゃんが気づかないのはともかく、詩緒ちゃんが気づいていなかったというのは結構ヤヴァイ。
それがもし能力対策をされていたからということであれば、色々前提条件が狂ってくる。
「ふふ♪ 静香が気づかないのも無理はないですよ。相手はこの里以外の上忍で、しかも接触は一切せず監視に徹してもらっていましたから」
ということは、恐らくそれなりに離れた距離から監視をしていたということなのだろう。
そうであれば詩緒ちゃんが気づかないのも無理はない。
詩緒ちゃんの嗅覚は、別に犬などのように遠方の匂いを嗅ぎとれるほど鋭いワケではない。
嗅ぎとれる範囲は人間の規格内に収まっているため、距離がある程度離れていれば共感覚は機能しないのだ。
紀香さんも静香ちゃんのことしか気にしていない様子だし、恐らくだが能力についてはバレていないと思われる。
ただ、確信できるほどの根拠はないため、詩緒ちゃんの能力に頼り切った戦略は破棄した方が良さそうだ。
「でも私が静香ちゃんと初めて出会ったとき、既に男性不振になってかなり病んでましたけど……?」
「メンタルに関しては個人差もありますし、完全に防ぐことなど不可能です。それに私もそこまで過保護ではありませんしね。だから、本当に危険と判断した場合しか助けないでいいと命じてありました」
……親としては冷たいスタンスだとは思うが、忍者ということを考えればむしろ甘いと言えるかもしれない。
いや、事実上のボディーガードを付けているようなものだから、一般家庭よりも過保護な気もする。
「まあ、私は過保護なので静香にトラウマを植え付けたクソガキ共については、全員使いものにならないようにしてやったがね」
ナニそれ怖い!




