番外編② 忍者の里10
麗香さんの案内で、俺達は奥の部屋へと通される。
襖を開いた先は大部屋になっており、その奥ににこやかな笑みを浮かべた二人の男女が座っていた。
「「おかえりなさい、静香」」
「只今帰りました、父様、母様」
片膝をつき首を垂れる静香ちゃん……、なんかカッコいい。
これは俺も真似するしかあるまい。
「って主様!? 主様はいいんですよ! これは我が家の挨拶なんで!」
「いやしかし、郷に入っては郷に従えと言うだろう?」
「ハッハッハ! 噂に違わぬ面白い人だね!」
よくわからないが、御父上には印象が良かったようだ。
この勢いで名乗ってしまおう。
「静香さんの御父上、私は静香さんと同じ会社の同僚で佐藤太郎と申します。どうぞ、宜しくお願いいたします」
「宜しく、佐藤君。君のことは静香から色々と聞いているよ。そしてそちらは柴咲さん、で合ってるかな?」
「は、はい! 自分は柴咲詩緒と申すものです! 宜しくお願いします!」
静香ちゃんから色々と何を聞かされているのか気になるところだが、それよりも柴咲さんの反応の方が気になる。
一体、何故体育会系のノリなのだろうか。
「っ!? あ、いや、太郎さん、これは違うんです! 私は決して屈してなんかいません!」
クッする……?
今のやり取りの中に、クッ殺要素があったのか?
「あ、太郎さん絶対誤解してる!」
「誤解なのか?」
「太郎さんはエッチなこと考えていると鼻がヒクヒクするんです!」
というのは世を忍ぶというか、詩緒ちゃんの真の能力を誤認させるために作った偽りの設定だ。
詩緒ちゃんの異能は対白鳥家に対する切り札となる可能性があるため、俺達は以心伝心であるアピールしておく作戦だ。
「……ふむ、柴咲さんはどうやら凄く感受性が高いようだね。私の本質を見抜いてしまったのかな?」
「「っ!?」」
その瞬間、お義父さんの凄みが増した気がする。
温和でヨン様のような印象だったが、どうやらこの人、藍染惣右介のような裏のあるタイプのようだ。
よく見ると「騙したつもりはないさ。ただ君達が誰一人理解していなかっただけだ。僕の本当の姿をね」とでも言いそうな顔をしている。
あの藍染惣右介のイメージを重ねると、一気に緊張感が増して思わず屁を漏らしそうになる。
これは本格的に尻の穴を閉めてかからなければならなそうだ――と思った瞬間、お義父さんが急に横に吹っ飛ぶ。
「あなた、娘の大切な方々に対して凄んではダメですよ?」
恐ろしく速い手刀……流石お義母さん。




