番外編② 忍者の里9
長らく誰も呼んでくれなかったが、俺の名前は佐藤 太郎だ。
佐藤という姓は、はっきり言ってどこにでもいる平凡な姓だと思う。
というか、日本全国で最も多い姓らしいので、人生で一度も佐藤さんど出会ったことがないという人はほぼいないだろう。
それに加え太郎という平凡の代表のような名前の組み合わせは、無個性の象徴のような名前に思える。
流石の俺も、中学生の頃親に何でこんな名前にしたんだと尋ねたことがあった。
すると親は、「逆に新しいと思ったから」と答えたのだ。
悔しいが、確かにそうかもしれんと思った記憶がある。
しかし今冷静に考えると、やはりテキトーに名付けたのではないかと疑ってしまう。
某ライダーの登場人物や、全国の同姓同名の方には悪いが、どう考えても弱そうな名前だ。
白鳥 一刀斎
対
佐藤 太郎
もう、名乗りの時点で負けが確定しそうな予感しかしない。
「クッ……、静香ちゃん、どうやら俺はここまでのようだ……」
「た、太郎さん!? なんでいきなり膝を屈してるんですか!?」
「どう足掻いても、一刀斎の名に勝てるビジョンが浮かばない……」
「文字通り名前負けしてる!?」
名は体を表すという言葉は本来誉め言葉で使うことが多いが、俺の場合は平均的な能力に対して使われることが多かった。
いくら修行したとはいえ、パンピーが平八に敵うワケが――
「しっかりしなさい!」
俺が闇落ちしそうになっていると、詩緒ちゃんのビンタ――が飛んでくると思いきや、そのまま頭を抱きしめられた。
「太郎さんは、あれだけ厳しい修行も乗り越えたじゃないですか。もっと自信を持ってください」
「詩緒ちゃん……」
詩緒ちゃんの硬い胸板が、この瞬間だけは何故だか凄く柔らかく感じ――
「フン!」
たのは気のせいだったようである。
首相撲からの強烈な膝蹴りで、一気に現実に引き戻された。
「ありがとう詩緒ちゃん、目が覚めたよ」
「それは良かったですね!」
全く、照れ隠しの冗談だというのに、相変わらず詩緒ちゃんは可愛いな。
「……太郎さんのバカ」
「バカ、いただきました」
「もーっ! 二人だけでイチャつかないでくださいよー!」
そんな感じで三人仲良くじゃれ合っていると、いいから早く上がれと麗香さんに急かされてしまう。
一刀斎様の姿はもう見えなくなっていたとはいえ、確かにこんな所でじゃれ合っている場合ではなかった。
「俺達の戦いは、これからだ!」
「いや、確かにそうですど終わらないですからね?」
打ち切り回避。




