番外編② 忍者の里8
「ね、姉さんだけズルいです! 主様! 私のことも名前で呼んでください!」
「そ、そうですよ太郎さん! いくら静香ちゃんのお姉ちゃんだからって、私達を差し置いて他の女の人を名前呼びするのは許しません!」
「しかし、三人で話し合ってそういう取り決めになっただろう?」
俺は我慢弱く尻穴の緩い人間だ。
普段から名字呼びを徹底していたのは、俺が職場でポロっと漏らさないための措置である。
「じゃ、じゃあこの里にいるとき限定ってことにしましょう!」
「そ、そうね! いくら太郎さんでも、条件付けすればそこだけで漏らすよう訓練できるハズだし!」
ということで、この里にいる間限定で二人の名前呼びが解禁されることとなった。
少々こじつけ感のある理由ではあったが、心情から察すれば理解はできる。
麗香さんはコイツそんなに信用されていないのか? と少し呆れていたが、俺は元々自分を信用していないので凹むことはない。
ただ、条件付けなどまるでペットのような扱いをされていることには少々興奮した。
「よくぞ来られた、佐藤殿、柴咲殿」
麗香さんに家の中に招き入れられると、そこには〇拳の平八のような髪型をした強面のオッサンが立っていた。
明らかに只者ではない気配だが、この人が白鳥さんのお父さんなのだろうか……
もしそうだとしたら、きっとお母さんは物凄い美人で、素晴らしい遺伝子を持っているに違いない。
「ただいま、お爺ちゃん!」
「静香よ、よくぞ帰った」
ほぅ……、お父さんではなくお爺さんであったか。
しかし、それはそれでイヤなニュースと言えるかもしれない。
何せ孫というのは、場合によっては実の子より可愛いこともあるようだからな……
「お初にお目にかかります。私は静香さんと一緒に仕事をさせていただいている、佐藤 太郎と申します。どうぞ宜しくお願いいたします」
「お、同じく同僚の柴咲 詩緒です! 宜しくお願いいたします!」
「……私は静香の祖父で、白鳥 一刀斎だ。見ての通りこの家は広いのでな……、今日からしばらくは旅館にでも泊まるくらいの気持ちで過ごすと良いぞ」
「「は、ははぁ!」」
その渋い声と厳かな雰囲気、そして圧倒的強者の放つ存在感に思わず恐縮した反応をしてしまう。
それは柴咲――詩緒さんも一緒なようで、珍しく気圧されているいようだ。
というか、一刀斎って名前も強そうなのはどうしてなのだろうか……
もしや、昔から名前負けしないように研鑽を積むとこうなるのか?
じゃあ俺は……




