番外編② 忍者の里3
「ウフフ♪ 驚きましたか?」
確かに、少しは驚いた。
しかし、俺は白鳥さんが変わり身の術を使うところを何度も見ているので、すり替わり自体には大して驚いていない。
むしろ気になるのは……
「ヤワラカイデス」
「……え? え? そ、そう? 私、静香に比べるとサイズは控えめだと思うけど……」
確かに、胸部装甲の厚みに関しては妹さんの方が明らかに上である。
しかし、全体的な柔らかさという意味ではお姉さんの方が遥かに上と言っていいだろう。
妹さんはどちらかというと鍛え抜かれたアスリート的な体であるのに対し、お姉さんは女性特有の柔らかさに磨きをかけた極上の抱き枕のような抱き心地なのだ。
白鳥(妹)さんはくノ一における「女のワザ」は体質のせいでほとんど修得できなかったと言っていた。
それがもし学べていれば――、その完成形がこのお姉さんの肉体なのかもしれない。
「ちょ、ちょっと!? 状況がよくわからないけど、とりあえず太郎さんから離れなさい!」
「えっと……、私もすぐ離れようと思ったのだけど、このお兄さんが手を緩めてくれなくて……」
「太郎さん!?」
「すまない。あまりに抱き心地が良くてな」
これはアレだ。
名付けるのであれば「人をダメにする肢体」だ。
「そ、そんなに良かったですか? 私の肢体……」
「ああ、素晴らしいと言わざるを得ない。普通の男であれば絶対にアナタのことを放そうとしないだろう」
「まあ♪」
「た・ろ・う・さ・ん!?」
柴咲さんが、決して子どもに見せられないような表情を浮かべている。
いや、アレは子どもどころか大人でも泣きそうなレベルだな……
「柴咲さん、今のは冗談だ。俺の本当の狙いは、彼女を拘束することにある」
「っ!?」
「迂闊だったな。俺が動揺することも考慮して懐に飛び込んだのだろうが、お姉さんはもう少し深く推理するべきだった」
「す、推理って!? っ! う、嘘!? 抜けられない!?」
お姉さんは恐らく懐に入り込んだときと同様に変わり身の術を使うつもりだったのだろうが、この術は肉の部分をガッシリ掴まれていると発動しない。
妹さんの肢体でしっかりと予習済である。
最高の修行だったのでコツは完璧に掴んでいた。
「柴咲さん! 俺ごとで構わん! ヤレ!」
「ヤ、ヤレって何するつもり!?」
決まっている。ご褒美だ。
「それ、言ってみたかっただけでしょ!」
そう言いつつも、柴咲さんはしっかりと行動を開始している。
「ちょ!? 嘘でしょ!? 暴力はん――グハァ!?」




