第60話 若い男女が一つ屋根の下、何も起こらないハズもなく……
俺は先日から寝かせておいたカレーと、簡単なサラダを二人に提供する。
柴咲さんはカレーを一口食べると、目を丸くして驚いた。
「これ、凄く美味しいですよ!?」
「そうだろう。ネットに転がっていたレシピに、少しアレンジを加えた自信作だ」
俺はどちらかと言うと甘党なので、一般的なカレーより少し甘めを意識している。
ハチミツや牛乳、ココアなどを加えてまろやかに仕上げた逸品だ。
「むむぅ、これは負けている、かも……」
料理が得意という白鳥さんを唸らせることができたのは素直に嬉しい。
「こんなものなら、毎日でも作ってやるぞ」
「「……」」
女性に言われてみたいセリフの男性バージョンである。
白鳥さんは幸せそうな表情を浮かべ、柴咲さんはキョロキョロと視線を泳がせている。
それぞれ違った反応で面白い。
「ふふっ、実は詩緒ちゃん、料理ができないんですよ。だから、私と主様で詩緒ちゃんの胃袋を掴んじゃいましょう」
「うぅ……」
完璧っぽい柴咲さんにも弱点はある、か。
それにあざとさのようなものを感じるのは、俺が二次元に毒され過ぎているからだろう。
にしてもこの二人、属性盛り過ぎである。
俺のパンピーっぷりが際立ってしょうがない。
食事を終え、白鳥さんと二人で食器を洗う――というイベントは発生しない。
何故なら、我が家には食洗器があるからだ。
世界が便利になるにつれ、定番イベントが少しずつ消えていっている気がする。
「さて、話すべきことは話したし、次はするべきことだ」
「次にするべきこと?」
白鳥さんも柴咲さんもわかっていないようだ。
「若い男女が一つ屋根の下、何も起こらないハズもなく……」
「「っ!?」」
俺が碇司令のポーズでそう言うと、二人がビクリと肩を震わす。
ついでに白鳥さんは胸も震わす。眼福だ。
「都合のいいことに明日は休日、泊っていくのも問題ないだろう」
「も、問題ありますよ! 女性には、その、色々準備があるんですからね!」
「大丈夫だ、問題無い」
恐らくは下着が可愛くないとか、上下不揃いとかそんな理由だろう。
そんな装備でも大丈夫だ。むしろ興奮する。
「着替えも用意している」
俺はそう言って、クローゼットからYシャツを2枚取り出す。
彼シャツというヤツだ。俺は欲望に忠実に生きるぞ。
「そういう問題じゃ――」
「白鳥さんは覚悟完了しているようだぞ」
「はい。いつでも問題ありません、マイロード」
白鳥さんは覚悟完了すると忍者から貴族プレイにチェンジするらしい。
次話で一応完結となります!




