第49話 守護れなかった……
「良くないですよ! というか飛躍しすぎです! なんでもう結婚するの前提なんですか!?」
「そうだな。まずこれを言わなければならなかった。……結婚しよう、柴咲さん」
「~~~~っ!」
正拳突きが飛んできた――が、俺にヒットする寸前で白鳥さんに受け止められる。
「また悪い癖が出てますよ、詩緒ちゃん」
「悪いけど、今のは衝動的じゃなく、自分の意思で打ち込んだから」
「尚更悪いです。やらせませんよ」
「……私の突きを、片手で受け止めるんだもんね。本気の静香ちゃんが強いのは十分理解したよ。でも――私だってまだ本気じゃない」
柴咲さんはそう言うと同時に一瞬で俺の背後に回り込み、手刀を叩き込もうとする。
それを白鳥さんが再び受け止めようとするが、それはフェイントで、本命の前蹴りが俺の尻に炸裂する。
ぶぶぅー!
その瞬間、俺の尻が爆発した。
「って、なんでオナラするんですか!?」
「そんなの、尻に刺激を与えたからに決まっている」
芳醇な臭いが広がり、柴咲さんが顔をしかめる。
「ニンニク臭がします……」
「流石匂いフェチの柴咲さん。今日の昼食はガーリックライスだった」
「私じゃなくてもわかりますよ!」
そんなことはない。普通はクサいくらいしかわからないものだ。
「はぁ、なんだか緊張感がなくなっちゃいましたよ……」
「それは良かった。正直、二人が急にバトル漫画のようなやり取りをし始めるのでどうしようかと思ったぞ」
あのまま続いてたらどうなったのか気にはなるが、俺のために二人を争わせるワケにはいかないので止めさせてもらった。
無論、柴咲さんが尻以外に攻撃していたとしても、屁はしっかり出ていただろう。
何故ならば、ちょっとの衝撃で出るよう調整してあったからだ。
「守護れなかった……」
そんな中、白鳥さんだけが未だバトル漫画のノリのままであった。
「気にするな白鳥さん。今回は柴咲さんの方が一枚上手だっただけだ」
「でも主様、こんなことでは主様に仕える忍びとして……」
「いや、忍者の仕事に護衛はないだろう」
「いいえ、最近の忍者には護衛任務があるんですよ」
「そうなのか。まあそれはそれとして、俺の護衛はいらないので禁止ということで」
「そんなぁ……」
むしろ恋人として、守護るのは俺の役目である。
「さて、柴咲さん、先程は失礼した。いきなり結婚と言われても困るよな。ということで、結婚を前提に付き合ってくれないか?」
「……この人、本気で二股する気満々なんですけど」




