第47話 詩緒ちゃんはズルい!
人差し指を立てて説教する姿は、いわゆる世話焼きな委員長キャラのようであった。
ここに来てさらに属性を増やすとは、白鳥さん……、おそろしい子!
「それで主様、お酒はありますか?」
「? ビールとチューハイならあるが」
「では、詩緒ちゃんに飲ませましょう」
「……何故だ?」
「そ、そうだよ静香ちゃん、いきなりどうしたの?」
「どうしたのって、決まってます。詩緒ちゃんを、酔わせるんです!」
白鳥さんは、拳を握って力強くそう言った。
「酔わせて、どうする?」
「酔ってベロンベロンになった詩緒ちゃんから、本音を聞き出します!」
「……それはもしかして、自分が曝した痴態を柴咲さんにも曝させるためか?」
「だ、だって、私だけあんな姿見られるなんて不公平ですよ!」
さっきまでの世話焼き委員長から、今度は子どもに変わっている。
ころころキャラが変わるのは見ていて新鮮だが、実際は単純に情緒不安定なのかもしれない。
「静香ちゃん、私、ビールやチューハイくらいじゃ酔わないよ……」
確かに、飲み会でも柴咲さんが酔っているのは全く見たことがない。
対して白鳥さんはかなり酔いやすいタイプで、柴咲さんに介抱されているのをよく見る。
「それに、酔わなくても、私はちゃんと本音で話すよ」
柴咲さんが、少し真剣な表情に切り替えて言う。
「じゃあ、主様のことがしゅきですか!?」
そして白鳥さん、なんか酔ってません?
「しゅ、しゅき……?」
「だいしゅきなんですか!?」
「だい……、ああ、そういう意味……。えっと、うん、好きだよ」
おお、はっきりと言われるとやはり少し照れるな。
思わず顔がにやけそうになる。
しかし、白鳥さんは逆に泣きそうな顔になっていた。
「やっぱり、詩緒ちゃんはズルい! なんで、そんなに堂々と言えちゃうの……」
「そ、そんなことを言われても、性格の問題じゃないかな……」
白鳥さんはシュンとしているが、そんなに凹まなくてもいいと俺は思う。
「サバサバしていて友達思いな柴咲さんも、友達のためなら自分を殺せる白鳥さんも、どっちも魅力的だと思うぞ」
「「~~~!」」
「そんな二人だから、俺は好きになった。そこに優劣はない」
「……でも、それじゃあ、どうするつもりなんですか?」
このまま二人と付き合うのも悪くはない。
実際そうしている男女も少数だが存在している。
愛の形は人それぞれなのだ。
しかし、それでは真に二人と結ばれたとは言えないだろう。
「俺は……、忍者になろうと思う」




