第43話 眼福だった
そうは言うが、柴咲さんはかなりの武闘派なので、迂闊なことを言うといつでも正拳突きが飛んでくる。
身の危険を感じずにはいられなかった。
……そういえば、魔王城で正拳突きというと某有名RPGを思い出すな。
結構外していたし、俺もなんとか避けられるかもしれない。
「……また何かくだらないこと考えてるでしょ」
「いや、正拳突きがボス戦のカギだったことを思い出していただけだ」
「だからやりませんてば!」
そう言いながらも拳に力が入っている。油断はできない。
「ちなみに、白鳥さんなら敵に対してどんな攻撃を行うんだ?」
「私ですか? 私なら手裏剣とか苦無とか火薬ですね」
「ほぅ? もしかして、今も持っているのか?」
「手裏剣や火薬は携帯していませんが、苦無ならあります」
まあ、そうだろうな。
流石に現代社会で手裏剣や火薬を持ち歩くのは危なすぎる。
いや、苦無だって危ないんだが、アレは多目的ナイフのようなものだからな。
「見せてもらえたりするか?」
「はい、大丈夫ですよ」
そう言って白鳥さんは、スカートをたくし上げ、その素晴らしい脚線美を披露する。
「おお!」
「ちょっと静香ちゃん!? 何やってるの!?」
「何って、苦無を見せようと……」
白鳥さんは下着が見えるのも構わず、太ももに巻き付けられたバンドから苦無を引き抜く。
それが大変色っぽく、否応なしに興奮してしまった。
「黒か……、素晴らしい」
「はっ!?」
俺が思わず呟いたことで、白鳥さんもようやく自分が何をしでかしたか気づいたらしい。
「もう! 静香ちゃん! そういう迂闊さが身の危険を招くっていつも言ってるでしょ!」
「ごめんなさい、詩緒ちゃん! 主様も、お見苦しいものをお見せして大変申し訳なく……」
「いや、眼福だった。苦無はてっきり太ももの外側に付けるものだと思ったが、内ももなんだな」
「あ、はい、そうなんです。外側に付けると、持ち物検査でバレちゃうので」
世知辛いな。アニメや漫画だと、スカートをたくし上げてカッコよく取り出すというのに。
「しかし、それだと咄嗟に取り出せなくないか?」
「咄嗟に取り出すことがないので……」
それもそうか。
任務中や戦闘が予測される状況ならともかく、日常生活で咄嗟に使う機会などほぼない。
というか、咄嗟じゃなくても使う機会はない気がするが。
「ふむ、意外と小さいな」
「小苦無ですので」
携帯には便利そうだが、多目的に使う強度はない気がする。
暗殺や、投げるのには向いていそうだ。




