第38話 ベッドの下が好きなのか?
そんな情けない叫びを上げながら、白鳥さんがベッドの下から這い出してきた。
前も柴咲さんの家のベッドの下に隠れていたが、ひょっとして好きなのだろうか?
手を差し伸べ起きるのを手伝い、ついでに体についた埃を払ってやる。
「あ、ありがとうございます」
「いや、それにしても、そんなに汚れていないところを見ると、ベッドの下もキレイに掃除しているんだな」
「はい。その、よく忍び込むので……」
「……やはりベッドの下が好きなのか?」
「違います! 日常で全身を隠すのに適した場所がベッドなだけです!」
成程。言われてみれば、普通の部屋で全身を隠せる場所などベッドの下くらいしかない。
あとは、あればクローゼットくらいか?
とりあえず、今後白鳥さんが消えた場合はそういう場所を探してみよう。
「それで、何の話だったか。白鳥さん愛してる、俺の子を産んでくれ、だったか?」
「違いますよ! 子を産んでくれとまでは言われてません!」
「そうか。でもまあ、似たようなものだろう。子孫を残す云々の話していた気がするし」
「そ、そうですが~」
白鳥さんは困り顔だが、目はグルグルしていない。
ベッドの下で少しは落ち着けたのだろう。
「改めて問おう。白鳥さんは、俺とどうなりたい? 別に忍者として生きたいというのであれば、そうすればいい。ただ、それはそれとして、俺とどうなりたいか聞きたい」
「そ、それは……」
長い沈黙が続く。
白鳥さんの本心は先程聞いているが、改めて言葉にするのは悩ましいのだと思う。
それが理解できるから、俺は黙って彼女が口を開くのを待った。
そして5分程の沈黙の後、白鳥さんがついに口を開く。
「主様と、一緒にいたいです。こ、恋人として……」
「わかった。宜しく、白鳥さん」
そう応え、白鳥さんを抱き寄せる。
白鳥さんはなされるがままで、抵抗せずすっぽりと俺の胸に収まった。
柔らかで、そしてか細く、柔軟剤のような優しい香りが鼻腔をくすぐる。
ぷぅ♪
「~~~!」
暫くそうしていると、またしても可愛らしいオナラの音が響く。
白鳥さんは、恥ずかしそうに顔を俺の胸に埋もれる。
「私、もういやです、こんな体……。折角幸せな気分だったのに、全部台無しです……」
「そんなことない。言っただろう、可愛いと。最高と言わざるを得ないと」
俺は忖度抜きで、こんな白鳥さんのことが堪らなく愛おしいと感じている。
それゆえに、自然と抱きしめる力も強まる。
「はぅ~」
あざとい。だが、それがいい。




