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メダルゲーム

 あれからしばらくして、2人の水着が決まった。

 玲羅のは、少しフリルなどがついたかわいらしい水着。奏はというと、少しばかりほかの水着より露出が多いものだ。


 さすがに人前でつけられないかと思ったが、上着とかを羽織ってなんとかするらしい。

 そりゃそうか。


 結果だけ言うのなら、2人ともよく似合っていた。


 さすがというか、美人というか。玲羅もそうだが、奏も中身おっさんだが、見てくれ美人。美織タイプの人間だ。よく、蔵敷も正気でいられるよな。


 と、まあ、水着の購入も終わり―――え?男性陣の?去年のでいいだろ?

 ―――昼食までにはまだ時間がある。


 というわけで、俺たちは今、ショッピングモールに併設されているゲームセンターに来ている。


 「で、来たはいいけど、なにするんだ?」

 「翔一、俺とゲームで勝負だ」

 「は?」


 俺とゲームで?バカ言え。俺に勝とうなんざ2万年早えよ。


 とは言わずに、あまりの突然の提案に素でぽかんとしてしまった。決められるところだったのに


 「俺が勝ったら、俺とお前は親友だ!」

 「そんな安い友情でいいのか?……俺が勝ったら?」

 「……お前の昼飯を奢る!」

 「じゃあ、勝ったら2000円するところ行こうかな」

 「……1000円まで負担する!」

 「なら奢るとか言うなよ」


 とまあ、こんな感じで、俺と蔵敷との勝負が始まった。


 「なにで勝負するんだ?マ〇カーか?」

 「それは俺に勝ち目がない。なら、あれしかないだろ!」


 女性陣を完全に置き去りにしている蔵敷が指さしたのは、データカードダスなどの筐体が置いてある場所の、さらに奥にある場所。


 いわゆる、メダルゲームを指さした。


 「元金はメダル100枚からスタート!1時間後にここに戻ってきて何枚増えたか競争だ!」

 「別にいいけど、2人はどうする?」

 「私たちは……」

 「私は翔一と一緒にいる」

 「じゃあ、私は蔵敷君とー」


 そう言って、女子二人はそれぞれの男についていく形となった。


 蔵敷サイド


 「蔵敷君はなにをするの?」

 「じゃあ、俺はあれだな」

 「よくやってるの?」

 「ああ、だからこの勝負は俺に分がある。あいつはあんまりゲーセンに来ないらしいからな」

 「本気で勝ちに行ってるんだね」

 「ああ、今度こそ勝ってみせる!」


 椎名サイド


 「翔一はどうするんだ?」

 「あー、早くスタートしたい気分だけど、多分台選びが重要かなあ」

 「どうしてだ?」

 「単純だよ。運ゲーなんてものはソシャゲのガチャだけだ。こういうのは台を選ぶ時点で勝負が始まってんだ。その台に慣れているからと、それを選ぶのは愚の骨頂だ―――あ、あれにしよう」

 「その心は?」

 「横穴が埋まってる。もしかしたら、この横の穴にメダルが入らずに相当数が落ちてくるかもしれない。外れならすぐに台を変える」

 「私は、翔一が将来パチンコで沼らないか心配になってきたよ」

 「なんだ?俺との新婚生活を想像してくれたのか?」

 「ち、ちが……」


 2人とも白熱した試合。そう、今まであらゆる勝負―――ボクシング、バッティングセンター、スマ〇ラ

数々のゲームで負け続けた蔵敷と、あらゆる勝負で勝ち続けた翔一とでは熱がこもるのは当然。

 この勝負、一世一代をかけたゲームとなるだろう。


 1時間後


 「結構稼げたね、蔵敷君」

 「ああ、いつもより多めに儲けられたから、今日は勝ったかもしれないな」

 「ふふ―――にしても、椎名君たち遅いね?」

 「そうだな……」

 「来なくてもいいんだけどね。今は今だけなら、私たちは2人だけだから……」

 「ち、ちょっ、他の人がいるから……」

 「大丈夫だよ―――みんな、ゲームに集中して誰も気づいてないよ。ほら、メダルの籠抱えた状態じゃ、抵抗もできないでしょ」

 「ま、待ってくれ……」


 そうして、奏の唇が蔵敷のにぶつかりそうになった瞬間、空気をぶち壊す者が現れた。


 「なにやってるんだ?一応、ここは普通の人も通るんだぞ?」


 突然現れた玲羅に、2人ともタジタジだ。いつも攻めている奏もさすがに恥ずかしいのだろう。平静を装っているが、とても恥ずかしそうにしている。


 「そ、それはそうと、翔一は?」

 「ああ、その翔一なんだがな……」

 「「……?」」


 一言だけ言うと、玲羅はついてこいとばかりに2人を誘導し始めた。

 2人は、玲羅の困った表情を見て不思議に思ったが、ついていくと奏はその表情に納得し、蔵敷は膝から崩れ落ちた。


 玲羅たちが着た場所から見えたのは―――


 ジャラジャラジャラジャラと、けたましく音を鳴らせながら、機械から延々とメダルを放出し続ける俺の姿がそこにあった。


 ただその様相は歴戦のパチンカスを思わせるものであった。

 台の取っ手のところに頬杖をついて、ただただ画面を注視し続けている。それでいながらも、メダルを入れる手が止まらない。メダルの出口にメダルが溜まり切ったと見るや否や、すぐさま籠に移し自分の隣にあるタワーに移して席に戻る。


 タワーなんか、とんでもない高さだ。ざっと見ただけでも、奏と同じくらいの高さの物が3本。凄まじいの一言に尽きる。


 あまりの異様な光景に、少し人だかりもできていて、一つまた一つと籠が増えていくたびに歓声が上がっている。


 「な、な、な……」

 「残念だったね、蔵敷君」

 「負けた……完膚なきまでに……」

 「だ、大丈夫だよ。私の好きな人はこのくらいでへこたれる人じゃないよ!」

 「そ、そうだな……俺はこの程度じゃ……」

 「え?私の好きを受け入れてくれるの?」

 「違うっ!」

 「えー、別にいいじゃん。減るもんじゃないし。蔵敷君は、私と付き合うの嫌?」

 「俺は、そういうんじゃ……」


 なにやら蔵敷と奏の間でなにかあったみたいだが、俺には今は気にしているような状況ではない。

 俺が楽しくなってじゃんじゃかメダルを放出し続けていると、ゲーセンの定員がやってきた。


 「お客様、これ以上は……」

 「あ、わかりました。すいません、楽しくなっちゃって……」

 「あ、あの、ありがとうございます……」


 さすがに定員に迷惑をかけるわけにはいかないので、俺は声をかけられた瞬間に、台から撤退し、メダルを預け入れできるところに入れた。


 結果は面倒だから預け入れの証明書でも見せればいいか。


 そう思い、膝から崩れ落ちている蔵敷にとどめとばかりにそれを見せてやると、完全にノックアウトだったのか完全に言葉を失ってしまった。


 「昼飯ゲットー」

 「し、椎名君、蔵敷君にとどめを刺さないで!もうライフはゼロなんだよ!」

1週間で腹筋10万回とかわけのわからないようなことをする脳死なろう系みたいに数字のツッコミをされたくないので、詳しい数字は入れないようにします。ご了承ください

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