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麗しき夜空の会

 学校に着くと、その異様な雰囲気に、俺たちは足を止めた。


 「なにかしら?」

 「さあ?まあ、明らかに普通じゃねえよな」


 学校の敷地の周りには、多くの保護者と思われる大人たちが敷地内にたむろしていた。

 しかも、警察もやってきていて、普段は見ないような巨大な車両が来ている。


 俺たちはその異様な光景に、なにかあったことを察するも、調べるよりも前に俺が玲羅の両親を見つけた。


 「早苗さん」

 「え!?翔一君!?学校に行ってるんじゃ……」

 「いや、ちょっと野暮用で。今なにが?」

 「ニュース見てないの?」

 「ニュースは、ちょっと見てないですけど」

 「翔一、その人は?」


 俺が早苗さんに状況を聞こうとしていると、少し周りを見ていた美織が話しかけてきた。

 話しかけてきた美織を見て、早苗さんの隣にいた善利さんがなにやら騒ぎ始めた。


 「お、お前、この非常事態に浮気していたのか!」

 「はあ?」

 「お、お前最低だな!」

 「善利さんは黙ってください!」

 「だ、だが早苗……」

 「翔一君、その子は?」

 「こいつは条華院美織、俺の幼馴染ですよ。あと、こいつに下手なこと言うと、消されますよ」

 「ちょっと翔一、私はそんなこと一般人にやらないわよ」

 「一般人じゃなきゃやるのね……」


 そう物騒な話をしてから、早苗さんは状況を話し始めた。

 要約すると、学校が何者かに占拠されたらしい。


 「今朝、速報が入ってね。希静高校がなにかの集団に占拠されたらしいのよ。私は、翔一君がいれば娘の命は大丈夫だと思ったんだけど、善利さんが行くって聞かなくて……それで来てみたら、翔一君がここにいるし、不安で倒れそうだわ」

 「まさか、こんなことになるなんて思ってなかったから、すいません玲羅と離れちゃって」

 「別にいいのよ……ただ、玲羅が正義感でなにかしないと良いのだけれど……」


 確かに……

 玲羅は優しいし、正義感もある。だれかを守るために自分を犠牲にしかねない。


 なんとしてでもそれまでに何とかしないと


 それに相手の目的はなんだ。金銭が目的なら、わざわざ高校を占拠するか?

 そこら辺の心理がわからないから、何とも言えないけど、なにか違う理由がある気がする……


 「美織、なにかわかった?」

 「はあ!?なんでよ!明らかに『麗しき夜空の会』が関与しているのは明らかでしょ!だったらなんで!―――ちっ、もういいわ。勝手に言ってろ、このゴミが!」

 「どうした?」

 「翔一、この件に条華院家と椎名家は手を出さないことを決めたわ」

 「は?そもそもなんで関与する必要が?」

 「今回の件の首謀者、『麗しき夜空の会』の可能性が非常に高いわ」

 「……詳しく」

 「……?翔一君、麗しき夜空の会って?」

 「詳しく触れないほうがいい。ああ、でも水面下で動いてる反政府組織とでも思ってください」


 麗しき夜空の会。奴らにはいい印象がない。

 別に綾乃に関与している組織ではない。だが、この場合この組織と関与しそうな男がいる。


 俺と美織は急いで家に戻っていった。


 「翔一君、玲羅はだいじょ―――あれ?いない?」


 俺たちが去るのは一瞬。

 一度目を離せば、俺たちを捉えることは不可能。


 早苗さんは、俺たちの姿をすっかり見失っていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 少し時間は遡って


 朝登校すると、私は一人で登校したということもあり、クラスの中の人たちがひそひそと話し始めた。

 そんなにも翔一と登校しないのが変か?


 確かに、ここ最近は翔一と手をつないで登校するばかりだった。だからと言って、毎日できるわけじゃないだろう?翔一にだって、人付き合いも用事もある。


 たとえ美織がほかの人よりも魅力的な見た目をしていても、あの二人は恋人というよりも相棒というのが似合う関係性だ。なにも心配することはない。

 だが、美織が翔一に抱いている感情があるから、ちょっと胸がざわつくが……


 それでも、私は翔一を信じている。そして、翔一も信用をあだで返すような人間じゃない。だからこそ、私が心から愛せる人なんだ。


 だが、始業ギリギリになっても翔一たちが登校してこない。


 そこで話しかけてくる輩が出てきた。


 「あれえ?彼氏は?」

 「野暮用だ。翔一にだって予定はあるんだ」

 「へえ?条華院がいないみたいだけど?あいつ、たしか椎名のこと名前で呼んでたわよね?もしかして―――」

 「翔一と美織は幼馴染なんだよ」

 「へえ、あのビッチ体形の女が幼馴染なんだ。あなた、彼氏君を満足させられるのかしら?」

 「どういう意味だ?」

 「そのままの意味よ。どうせ、あなたに用があるとか言って、先に行かせてから2人でヤってるんでしょう?」

 「翔一たちをそんな低俗な思想で片づけないでくれるか?2人は、誰よりもそれで辛い思いをしている。発作を起こすくらいにだ。お前たちみたいな脳内ド底辺が想像できるような範疇で収まる人たちじゃないんだよ」


 そう言うと、ちょうど始業のチャイムが鳴り、絡んできた女たちもろとも席に戻っていった。


 「はーい、じゃあHR始めるぞ。って、椎名と条華院は?特に連絡もないし、遅刻か……」


 担任が出席確認を取り、1限の準備をするために職員室に戻ろうとした問ころで異変が起きた。

 教室を出る寸前で担任の動きが止まったのだ。


 ほかの生徒はこのおかしなことに気付いていない。


 私は、注意深くその方向を見ていると、突然担任が後ずさりして教室に戻ってきた。

 その額には銃口がつきつけられていた。


 すると、後ろの扉も開き、武装した男が教室内に入ってきて発砲した。


 「全員動くな!」

 「「「きゃあああああああ!」」」

 「動くな!」


 二度目の発砲で全員の動きが止まった。


 「全員、抵抗するな。とりあえず、持っているスマホとか全部こっちに渡せ」


 その一言に教室にいる生徒たちは従っていく。

 誰一人として抵抗するような輩はいない。


 抵抗すれば、奴らが持っている武器で殺されるのは明白だから。


 その後、私たちは教室の窓側に全員が追いやられた。


 「こちらB班。制圧を完了した」

 『了解、次の指示まで待て』


 ここを占領したものたちは、トランシーバーでどこかに連絡して、無造作に置かれた机の上に座った。


 教室内は、とてつもない恐怖に駆られていた。


 隣を見ると、気の弱そうな子がプルプルと震えていた。


 私はそっとその子を抱きしめた。この子は女子だから、浮気にならないだろ。だから、許してくれ翔一。


 「……天羽、さん」

 「大丈夫だ。絶対に助かるからな」


 心なしか、少しだけその子の震えが止まった気がした。


 だが、状況は好転しない。もう頼れるのは一人だけだ……

 翔一……

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