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胸とカレーと血

 「ただいまー」


 廃工場での実験を終えて帰宅した俺は、まっさきに手を洗ってリビングに入った。

 そこで、俺はとんでもないものを目にした。


 「おい結乃、なんでそんな血塗れなんだ?」

 「えへへ」

 「なにしたんだよ」

 「ちょっと!妹に心配とかないわけ!」

 「いや、お前がそこら辺のチンピラに負けるほど弱くないだろ?」

 「そうだけどさー」


 俺は結乃が血まみれになったところで、特に心配はしない。ここが実家ならまだ変わったが、一般人しかいないこの町では、まず結乃に対する心配は無用だろう。


 「で、なにしたの?」

 「し、翔一……あまり結乃を責めないでやってくれ。全部、私のためなんだ」

 「ほお……」

 「結乃は、私を助けるために、うちのクラスの男子から守ってくれたんだ」

 「ん?うちのクラス?」


 詳しく話を聞くと、付き合うことを迫られた玲羅を助けるために、結乃が大暴れしたらしい。

 よりによって、初手が目つぶし……


 「なんで、後にも害が出そうな攻撃をするのよ」

 「女を襲おうとする男なんて滅べばいいんだよ!そうすれば……」

 「綾乃は死ななかったてか?なんども言うけどな、根本の問題はそこじゃない。あのクソ女が元凶なんだ。あいつをなんとかしなかったら、どのみち綾乃の命はなかったよ」

 「でも……」

 「それに綾乃のことは、俺と美織に任せろ」

 「……うん」


 結乃がどれだけ綾乃のことが好きだったか。それは近くにいた俺と美織も知っている。

 それに、彼女の葬式は行われなかった。だから、俺たちはお別れすらできていない。それが原因で、結乃も引きずったままなのだろう。


 「それで?警察のお世話になるつもりか?」

 「そこは大丈夫。おじいちゃんに根回ししてもらったから」

 「はあ……ジジイに助け求めたの?」

 「いいじゃん、別にお兄ちゃんが頼んだわけじゃないんだから」

 「まあいいか」

 「おじいちゃん?ジジイ?誰のことだ?もしかして……」

 「椎名昭三、俺たちの祖父で、椎名家の当主だ。まあ、俺はジジイと縁切ってるから、結乃みたいに助は求められないけどな」


 そう言うと、玲羅は少しだけ悲しそうな顔をした。

 家族と絶縁状態。彼女にとって、異常ともいえる状況だ。


 祖父母と仲のいい彼女ならなおさらだ。


 原作において、彼女は祖父母と仲がいい設定だ。だが、母方の祖父母はすでに亡くなっており、父親の方の祖父母だ。

 玲羅パパも祖父母には頭が上がらず、かわいい孫のためになんでもしてあげちゃうごく一般の幸せな関係だ。


 「玲羅が気にする必要はない。これが家のしがらみってやつだ」

 「そうそう、義姉さんは義姉さんのおじいちゃんおばあちゃんがいるわけでしょ?大事にしなよ」

 「そう、だな。―――そうだ!夏休み、私の両親たちとともに、父さんの実家に帰省しないか?私の恋人だと紹介すれば、きっと喜んでくれる!まあ、さすがに結婚すると言ったら度肝を抜きそうだが……」

 「あはは、考えとくよ」


 正直に言うと、行ってみたい。普通の祖父母との関係を知りたいし、玲羅の血縁関係者と仲良くなっておきたい。

 だが、家族団らんともいえる場所に俺たちが行っていいものだろうか?非常に悩むところである。


 「そうだ、もう風呂に入ってこい。俺も晩飯の準備始めちゃうから。早く入らないと、冷めたの食べる羽目になるぞ」

 「はーい。義姉さん、一緒に入ろ!」

 「ああ、じゃあ結乃と一緒に入ってくる」

 「行ってらっしゃい」


 今日のメニューはカレーだ。本当は朝とかに野菜とかは済ませておきたかったが、思いついたのが今日の昼だ。仕方がない。その代わりに、玲羅と結乃は上がってくるのが遅い。

 その間に、ほとんど終わるだろう。


 そう考えながら、俺はまな板を叩いて野菜を打ち上げて、全部を食べやすい大きさに切り落とした。


 鍋の底に肉を引いて焼き始める。肉の油を使うので、鍋そのものに油を引く必要はない。その後は野菜を入れて、いい感じのところで水を入れた。ここまで30分以内にできたので、あとは煮込むだけで大丈夫。あ、もちろんルーは後で入れるよ。


 その後は、明日の準備と付け合わせのサラダを作っていたら、玲羅たちが上がってきた。


 「ふぃー、あ、今日はカレー?」

 「すごいな、この短時間でそこまでできるのか……」

 「玲羅もこれくらいできるでしょ?」

 「いや、料理は得意なほうだと思っていたが、翔一の隣にいると中々自信を失うよ」

 「えー、私は義姉さんの料理も食べてみたいなー」


 俺も俺も。

 そういえば、俺は玲羅の手料理を食べた記憶がない。


 彼女は、この家では洗濯物を取り込むくらいしか、仕事が与えられていない。俺と結乃で全部回せるからだ。だからとは言えないかもしれないが、玲羅はここ最近料理を作っていない。

 そう思うと、本当に食べてきたくなってきたな。

 そうだ。


 「今から鍋の中見捨てて、玲羅が作る?」

 「な、なんという無駄な手間を……わ、私が明日の夜ご飯を作るのはどうだろうか?」

 「いいねそれ!私はさんせーい」

 「待って、明日って結乃の当番……またさぼろうとしてないか?」

 「なんのことかなあ?それよりお兄ちゃん、お風呂に入ってきたら?」

 「露骨に話を……まあいいか。玲羅、鍋見ててもらえる?」

 「ああ、責任もって見ていよう」

 「そんな仰々しくなくていいぞ」


 そう言って、俺は風呂に入っていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翔一がお風呂に入った後、私は結乃とともにルーが入る前のカレーなべを見ていた。

 よくよく見てみると、三人分とは思えないくらい大きなべだが、普段からこの家で生活していると、結乃がものすごく食べる。もう、フードファイターなのではないかと思ってしまうほどに。


 それを考えると、翔一は色々なことを考えるんだなあ、としみじみ思う。


 そうして静かに過ごしていると、結乃が話しかけてきた。


 「義姉さん」

 「む、なんだ?」

 「なんでそんなにおっぱい大きいの?」

 「き、急になんだ!?」

 「いやー気になってさ。私も結構自信あるけど、義姉さんにはかなわないなあ」

 「前もこんな会話しなかったか?」


 なんだろう、既視感が……


 にしても、胸か……

 確かに私は人より大きくはあるが、これを触ったのは翔一だけで……


 そう考えると、私は顔が熱くなっていくのがわかった。


 「どうしたの?」

 「な、なんでもない!」

 「それで、なんでそんなに大きいの?」

 「まあ、母さんも大きいし、遺伝じゃないかな?」

 「遺伝……お母さんの巨乳遺伝子かもしれないけど、もしかしたらお父さんの方の巨乳遺伝子が義姉さんのおっぱいを大きくしたのかも!」

 「父さんの遺伝子……ぷっ」


 想像して吹いてしまった。

 普段は、私に甘々な父が、真面目な顔をして腕組みをして自身の巨乳を支えてる画を頭の中で作り出してしまった。それが破壊力がすごいのなんのって……


 「き、巨乳の父さん……あははは!」

 「ぶふっ、義姉さん、なに想像してるの!あはははははは!」


 私たちは、ひとしきり笑ってお互いに楽しんでいたのだが、大変なことに気付いてしまった。


 「あ、ね、義姉さん、鍋!吹きこぼれてる!」

 「わ、わああああ!まずい!まずい!」


 風呂場にて


 「うるっせ……なにしてんだ?」

ブックマーク数184に対して星の評価者数が25……

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それとも、私の作品は評価にすら値しないというのでしょうか。悲しいですね~

冗談です。評価はしてくださるとうれしいですが、なによりも作品を読んでくださってるのが一番お励みになります。これからもよろしくお願いします。

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