表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/222

運命

 玲羅とイチャイチャしながら過ごす休日というものは、過ぎるのが早く、あっという間に週明けの月曜日を迎えてしまった。


 別に月曜が来てほしくないという意味ではなく、ただ学校に行くのが憂鬱だったのだ。

 記憶にはないが、金剛があれだけの大けがを負うほど、俺は大暴れしたんだ。どんな目で見られるか……


 退学、停学とかは気にする必要はないと思う。奴の父親が本当に国会議員なのだとしたら、俺に手を出すことがなにを意味するかくらいは分かるはずだ。もしかしたら、金剛の入院期間が延びることになるかもしれないな。


 「ふあ……おはよ、翔一」

 「ああ、おはよう」

 「ん、いつもの」

 「はいはい……ちゅ」


 朝から色々考えていた俺は、それをかき消すかのようにキスをした。


 それから、玲羅の着替えを待つために、俺は先に食卓についた。久しぶりに、家族そろって朝を過ごせる。

 結乃が、玲羅のことを義姉さんと呼ぶのは、少し驚いた。れい姉とかそんな感じだと思ってたからだ。でも、そっちはそっちで悪くない。


 しばらくすると、玲羅が下りてきた。

 彼女は、学校の制服に身を包んでいた。最初、玲羅が志望していた学校である帝聖は、セーラ服が制服だったが、希静はブレザーだ。


 セーラー服姿も見てみたいが、ブレザーもそれはそれでいい。そもそも、玲羅はプロポーションが良いから、似合わない服なんてないと思うけどな。―――さすがに幼稚園服とかは……意外といけるか?


 ピッチピチでパッツパツにキッツキツの服を着る。玲羅の豊満なボディが……おっとこれ以上は、よくないようだ。

 だが、帽子をつけて小さい鞄を背負って「お兄ちゃん」とか言ってきたら……ダメだ。犯罪路線に足を踏み入れてしまう。さすがにその性癖はアウトだぞ椎名翔一。しっかりしろ。


 「なにを考えてるんだ?」

 「いや、玲羅にはどんな服も似合うな―、って」

 「もう……翔一はお世辞がうまいんだから」

 「いや、多分本当に似合うよ。俺の部屋にあるメイド服着てみる?」

 「なんでそんなものがあるんだ?」

 「……俺に質問するな」

 「なあ、本当になんで持ってるんだ!?」


 そう言って、騒がし玲羅を華麗にスルーして、結乃が来るのを待つ。そんなことをしていると、俺の妹は厄介なことをするのだ。


 「お兄ちゃん、恋人に着させて奉仕させるんだー!って言って、通販で買ってたよ」

 「ちょ、なんで知ってるの!?」

 「ふふん、お兄ちゃんのことはなんでも知ってるのだ!」

 「し、翔一……奉仕って……」

 「そういう意味じゃないぞ!その時は、呼んでる小説がメイドとの恋愛ものだったから!それだけだから!」

 「わ、私はしてもいいぞ……?」

 「ふえ?」


 マジ……?

 玲羅の言葉で、俺は一瞬でフリーズした。良いって、そういうこと?


 俺の驚きをよそに、結乃は空気をぶち壊してくる。


 「お兄ちゃん、義姉さん、おはよう!」

 「ああ、おはよう」

 「ふふ、結乃は今日も元気だな」

 「ふはは!私はいつだって、元気ハツラツ!朝からでも相手してあげるのよ!」

 「「なにを?」」

 「ナニに決まってるでしょ!綺麗な歌声聞かせてあげる!」

 「もうしゃべんな」


 ダメだ。こいつは元気になったかと思えば、下ネタしか言わねえ。

 いや、いいんだけどさ。こいつに彼氏ができるか本当に不安なんだけど。


 そんな不安をよそに、2人は席に着いたので、俺たちは朝ごはんを食べ始めた。


 「「「いただきます」」」

 「んー!翔一、おいしいぞ」

 「やっぱりお兄ちゃんのご飯の味知っちゃうと、他の人じゃ満足できないなあ。寝取られならぬ舌取られだね」

 「ごめん意味わかんねえ」


 相変わらず結乃にはついていけないが、幸せそうな表情でご飯をほおばる玲羅を見るのは、すごく心地が良かった。


 朝ごはんを食べた後は、各々が登校の準備をし、少し学校が遠い俺たちが先に家を出る。結乃が、いつも遅めに出て家の鍵を閉めているのだ。


 「じゃあいってくる。戸締りを忘れるなよ」

 「もー、私も子供じゃないんだからさあ」

 「お前、去年なんかい窓のカギを閉め忘れた?」

 「う……」

 「前科持ちは疑われるの。まあ、最近は気を付けてるみたいだしいいけど」

 「じゃあ、言わなくていいじゃん!」

 「それでもだよ。それのせいで大事な妹が傷ついたとか言われたら、悔しくて仕方がない」

 「……もう、なんでそうイケメンみたいな発言するの……」

 「結乃、違うぞ。翔一は、イケメンみたいじゃなくて、イケメンだ」

 「そうだね。義姉さんの言う通り!その妹の私も、美少女なのだ!」


 妹の一言はいつも余計。

 でも、悪い気はしないな。2人にイケメンと言ってもらえて喜ばない男がいるはずがない。


 そうして、俺たちは家を出た。

 登校中は、2人で手をつないで登校しているが、今日はいつもよりもお互いの左手が気になっていた。


 薬指にはめられた指輪。しかもおそろいのもの。


 普段から、通りすがりの人が気にしているわけがないのだが、少し自慢したい気分になってしまう。この人が俺の妻だ!一目惚れで結婚できたんだ!ってさ。

 でも、さすがに通りすがりに言うのはまずいので、心の中だけにとどめておく。


 ちなみに、うちの学校はアクセサリー類は大丈夫な学校だ。偏差値が高い分、学校の校則は緩い。というより、できて当たり前という感じなのだろう。

 まあ、だからこそ、玲羅は俺に指輪を渡すことができたし、こうしていつもつけていられる。こうして考えると、希静を選んだ俺をほめたたえてやりたい。


 構内で電車を待つ玲羅は、俺の肩に頭を乗せてきて言った。


 「翔一、今本当に幸せだ。こうして、お前と肩を並べて歩けるのも、私がお前だけを見て生きているのも、結婚しようと言ってそれを受け入れてくれたこと。全部、翔一がくれたものだ。ありがとう」

 「別に気にする必要ないし、なんなら玲羅は俺の心をずっと前に救ってくれてたんだよ。転校したばっかで、半分壊れてたのをつなぎとめていたのは、一目惚れした玲羅の姿だったんだよ」

 「……そうか。お互いがお互いを救っているんだな」

 「そうだな」

 「そう考えると、運命だな。翔一が転校して来なければ、私は救われなかったし、翔一も心が持っていなかった。私たちは運命で結ばれてるんだ。きっとそうに違いない」

 「ああ、俺たちは運命で結ばれているんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ