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背中のホック

 朝起きると、珍しく玲羅が起きていた。

 互いに寝そべりながら、見つめ合う。


 「おはよう翔一」

 「ああ、おはよう」


 そんな軽い挨拶をして、俺たちは「ちゅ」と、軽めのキスをした。


 その後は、俺が制服に着替えて、部屋の外に出た。

 なぜか玲羅が、俺の部屋で着替え始めたからだ。なぜだ?


 俺はまだ部屋の中でやることがあるので、部屋の前で待機している。時々、衣擦れ音が聞こえてきて、悩ましいことこの上ないが、気にしたら負けだと思う。まあ、なにと戦ってるのかは知らねえけど。


 そう思ってると、中から俺を呼ぶ声がしてきた。


 「しょういちー」

 「え?なに?」

 「ちょっと入ってきてくれ」

 「ああ、わかった……って、なんだその恰好!?」


 部屋に入って、すぐに目に入ったのは、スカートを身に着けているだけの上半身が脱げている玲羅だった。

 いや、よく見ると、ブラの背中のホックが止められていなかった。


 「翔一、ちょっとブラのホックを止めてくれないか?」

 「えぇ……結乃、呼んでこようか?」

 「い、いや、翔一につけてほしいんだ」

 「またなんでよ」

 「―――聞かないでくれ……」


 そう言って、俯く玲羅。ああ、結乃と話すのが気まずいのかな?2人とも少しばかりよそよそしいもんな。


 玲羅の言葉を聞いた俺は、玲羅の背後に近づき、背中のホックを止めてあげた。


 「ふぅ……ありがとう。にしても、もうこのブラはきついな……」

 「え?大きくなってんの?」

 「ふぇ?あ、いや、今のはなしだ!」

 「無理あるよ。ていうか、サイズが合わないんだったら、買いに行くか?今日の放課後」

 「そ、そんな、恥ずかしいだろ……」

 「いや、誰が金出すんだよ」

 「そ、それくらい自分で出す!」


 うーん、別に気にしなくていいんだけどな。どうせ家族になるんだから、生活用品くらい出しても構わないのだけど。


 ていうか、玲羅の生活費用に玲羅のお母さんからいくらかのお金はもらってるからそれを使えばいいんだけど。


 「まあ、俺は冷蔵庫の中身を補充しなきゃいけないから、下着もついでに買いに行こう」

 「だ、だから、男子と一緒なのは……」

 「俺はサイズの合わないものを玲羅につけてほしくないからな。今日行かないなら、俺が独断で下着売り場に行ってくるぞ。恥ずかしいぞ。俺が一人で下着売り場に入っていくの」

 「い、行く!行くから!」


 というわけで、俺たちの今日の放課後の予定が決まった。


 ―――玲羅の下着を選ぶのだ!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 学校では、俺が野球部の連中に付きまとわれるというトラブルがあったものの、それ以外にこれといった問題はなく、連中を撒いた俺が、玲羅と合流して学校から数駅離れたショッピングモールに向かった。


 「し、翔一は……どんな下着が好みだ?」

 「いや、女子の下着なんかつけてるところは、妹をのぞいたら……いや、めっちゃあったわ。下ネタ魔人の美織がいつも下着で家の中歩いてたわ」

 「美織は、いつもそんなんだな」

 「なんだ、あいつの家にいるとき、そうじゃなかったのか?」

 「美織は、いつも自分の部屋に閉じこもってたから」

 「ああ、たしかにそうかもな」


 ぶっちゃけ、椅子漕ぎをしながら下着姿でパソコンやってる姿が目に浮かぶ。あいつはそういうやつだ。本当に、あいつにいいパートナー見つかるのかな?


 「話は戻すけど、どんな下着がいい?」

 「戻んのかあ……別になんでもいいけどな。玲羅の可愛さって、たかだか下着程度で左右されるほど微妙じゃないし」

 「か、かわ……」

 「全然、俺の可愛いに慣れてくれないな」

 「と、当然だ!言われたら嬉しいが、面と向かって言われると、恥ずかしいんだ」


 そう言って主張する玲羅は、また可愛い。


 「てかな、ダサい下着ならダサい下着で、それはそれで……。って感じになるから、なんでもいいんじゃない?」

 「翔一って、意外と美織に侵されてないか?こう、下ネタ的な方向で……」

 「そう?いや、そんなに性癖ねじ曲がってる?」

 「いや、一般的な男子というのを知らないから何とも言えないが……」

 「そうかそうか、玲羅は一般を知らない生娘か」

 「どうしてそうなる!ていうか、私は翔一以外は知らないのは当たり前じゃないか!彼氏なんて、お前が初めてなんだぞ!」

 「そうかそうか、俺は玲羅の初めてをもらったのか」

 「なんか言い方が卑猥だぞ!」


 俺の言葉に、玲羅はいっぱいツッコミを入れてくれる。いちいちの反応が面白くて、ついやりすぎてしまう。

 嫌われてないかな?いや、ここで不安になっても手遅れか。


 そんな感じで、少しだけ騒がしかったが、モールの中にあるランジェリーショップに入った瞬間、俺たちは静かになった。

 うん、やっぱり店内は女性しかいないね。ほかの客が俺を見る目がやばい。


 そんなことを考えていると、玲羅が質問してきた。


 「翔一は、こういうふりふりがついてるのはどう思う?」

 「うーん……ふりふりって、たしかサイズアップ効果とか、胸を大きく見せる効果があるとか聞いたことあるけど、玲羅に必要か?」

 「そ、そういうことじゃない!―――でも、彼氏に胸のサイズ把握されてるの、ゾクゾクッと来たな」

 「ええ!?」

 「で、どうだと思う?」


 なんか、最近、玲羅が無意識に反撃をしてきているような気がする。

 まあ、全然かまわないのだけれど……


 「うーん、ふりふりのブラを付けた玲羅か……」


 俺はそう口にして、想像してみた。

 服を脱いで、ふりふりのブラをつけて、「その……しないか?」と言ってくる様を。


 ジャンプ漫画の世界なら、余裕で鼻血出せるな。


 「なにを考えているんだ?」

 「いや、来るであろう未来を想像してた」

 「本当か……?ていうか、翔一を誘うなら、もう少しエッチなものをつけるからな」

 「なによ、その宣言は」


 それから、2人で話し合いながら、下着を選んでいった。最終的には、俺が選んだもの3点と玲羅自身で選んだ2点を買った。それだけ買うと、下着とはいえ馬鹿にならない値段がする。


 そういえば、男のパンツは同じ柄纏め売りしてるけど、女性下着でそういうの見たことないな。

 なんかあるのかな?


 ちなみに、買い物袋は俺が持とうとしたのだが、玲羅が頑として譲らなかった。

 なんか、「彼氏に下着を持たれてるのはクルものがあるが、やっぱり恥ずかしさのほうが大きい!」とのことで、俺は彼女の荷物を持ってあげる優しい彼氏になれなかった。


 この後は、今週分の食品を買って帰るのだが―――


 「翔一、なにを買うんだ?」

 「うーん、ウインナーとか、刺身とか買うのもいいな」

 「ふふ、なんだか翔一のほうが奥さんって感じがするな」

 「そうか?まあ、玲羅が笑顔になれるのなら、いくらでも奥さん属性は取り込んでも構わないぞ」

 「はは、愛してるが、壊れるほど愛してるに変わっちゃうだろ」


 ―――会いたくない人物に遭ってしまった。


 「え……なにしてんの?」

 「……っ、八重野」


 物語の勝ちヒロインの登場だ。

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