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もっと積極的に

 しばらくして俺が席に戻ると、いくつかの料理が届いていた。


 「先にいくつか頼んでおいたから。後は好きに食べなさい。私の奢りよ」

 「美織、ご両親が稼いだお金じゃないのか?」

 「はあ?玲羅、これは私のポケットマネーよ。そこいらのぼんくらと一緒にしないで。私は自分で使う金くらい自分で稼ぐわ」

 「し、しっかりしてるな……」


 なんか、名前呼びしあって、仲良くなってる。

 美織は持ち前の情報収集能力で、玲羅のことを調べているからまだしも、こんなに早く玲羅が名前呼びするくらい打ち解けるのか?


 「ずいぶん仲良くなったな」

 「まあ、あなたの恥ずかしい過去をすべて教えてあげるって言ったら一発だったわ」

 「絶対やめろよ」

 「私は知りたいぞ?」

 「勘弁してくれよ……」


 過去暴露は恥ずかしいぞ。さすがの俺でも来るものがある。


 そう思いつつも、俺は玲羅の隣に座る。すると、玲羅は突然俺の制服の裾を掴んでなにかを主張してくる。

 え?なに?


 「翔一、私がお前を幸せにする……」

 「なに急に……んむ!?」


 質問しようとするも、すぐに俺の唇が塞がれてなにも言えなくなる。そのままいつも通り、玲羅は舌をねじ込んでくるのだが、いつもより明らかに激しい。

 いつものように舌を口腔内で這わせるだけでなく、俺の舌を吸ってくる。ち、ちょっと待った!


 耐えきれなくなった俺は玲羅の頭を両手で持ち、無理やり引きはがす。


 「ぷはっ、美織!なに吹き込んだ!」

 「失礼ね。私はキスの仕方を教えただけよ」

 「なんでAV仕込みのキスなんだよ!驚いただろうが!」

 「し、翔一はこういうの嫌か?」

 「嫌じゃないです」


 あ、俺の玲羅全肯定センサーが無意識に……

 俺の了承を得たと思った玲羅は、今度は俺のことを押し倒して、玲羅が乗っかるような形で、キスを再開した。


 すごい、ものすごい勢いで蹂躙されてく……

 本当にやらかしてくれたな、美織。


 「んぅ……じゅるる……れろ……くちゅ……しょういちぃ……」


 クソ!なんかエロい!そりゃ、AV仕込みだからな!

 玲羅の求める心は本物だから、なおのこと拒めない!


 こうして俺は玲羅のキスを受け入れ続ける形となってしまった。

 無論、嫌なわけではない。ただ、心の準備ができていなかったのだ。さすがに、玲羅が個室制の部屋とはいえ、こんなに大胆なキスをするとは思わなかった。


 玲羅は俺のそんな心情に気付いているのか、俺の嫌がらない範囲を攻めてくる。たっぷりと20秒した後には、キスを続行しながら俺の手に彼女の手を絡めてきた。


 玲羅と触れる面積が大きくなるたびに、俺の脳が溶かされていく。段々とこのままでいたいという気持ちが強くなっていく。


 「あなたたち、私の前だってこと忘れてない?」

 「……!?ぷはっ、忘れてた。そうだよ、今目の前には美織がいた」

 「今、しれっと忘れてたって言ったわね?」

 「なんのことかな?」


 俺は美織の言葉で我を思い出して、玲羅の唇から俺のを離した。

 離された玲羅は再度唇を奪ってくることはなかったが、俺の頬に手を当てて微笑んできた。


 その微笑みが天使のようにかわいくて、本当に愛おしく感じた。


 「どうだ、美織。お前に、私と翔一の間に入るスキはないだろう?」

 「そうね……今のところはね。でも、さっきも言った通り、あなたが少しでも翔一を不幸にしたら、私が寝取るからね」

 「いや、なんつう話をしてんだよ」


 本当に俺がいない間になにを離してたんだ?俺はてっきりアーカーシャのことについて聞かれてると思ったのに。


 まあいいか。玲羅が知るべきものでもないし、聞いてないのならそれでいいか。


 「お前なんかに寝取られる翔一じゃないんだよ!」

 「わからないわよ?そうねえ、まず翔一に媚薬を飲ませたから、ガラス越しにヤって、あなたの心も壊す。そうすれば、翔一が正気を取り戻しても関係の修復は不可能ね。たとえよりを戻しても完全には戻頼わよ」

 「やめて、俺の前でしれっと薬盛る話とかしないで」


 本当に物騒だな。いや、美織はこういうやつか。まあ、なにかなければなにもしない女だ。それは俺がよく知ってる。


 だがまあ、脳内が思春期男子みたいなことになっているのが玉に瑕だな。


 俺たちはそれからは談笑しながら食事をした。たまに美織が下ネタをぶっこんで来るからから大変だったのは言うまでもない。

 こいつが立派な淑女だったら、結乃も影響を受けずに清純な子に育っていたかもしれないのに……


 玲羅も、こんなクソ(値段が)高い店での肉など、あまり食べる機会がなかったのだろう。「美味しい」と言いながら食べている。


 俺がそんな彼女を微笑ましそうに見ていると、そんな視線に気づいたのか慌てて弁明してくる。


 「こ、これもおいしいが、翔一の料理のほうが美味しいぞ!」

 「いや、別に気にしてないよ。俺が好きなのは美味しい料理を幸せそうな顔で食べてる姿だから。遠慮せずに食べな」

 「いや、翔一のご飯がこれより美味しいのは本当だぞ?」

 「あはは、またまた」

 「むぅ……本当なのに」


 俺の料理が本物より美味しい?ありえないでしょ。

 その道を修行をしてきた人たちより、俺の料理がうまいわけがない。


 だが、俺の言葉が不満だったのか、口をとがらせながらすねる玲羅。

 そんなこともあったが、俺たちは食事を終えて、店を出た。後で調べたが、あの店はやっぱり夜営業だった。美織が金払って無理やり開けさせたのだ。

 なんてことを……


 店を出た俺たちは、それぞれ帰路につくはずなのだが……


 「なんでついてくるんだよ」

 「いいじゃない。私も家がこっちなのよ」

 「嘘つけ、住宅街だぞ、ここ」

 「だから私も引っ越したのよ」

 「まじかこいつ」


 引っ越したって、嫌な予感しかしない。

 もう、俺の癒しは俺の腕にしがみついて、よっかかってる最高のヒロインだけだ。


 「むふふ……」

 「可愛いなあ」


 ほっぺをツンツンしてやると、これまた嬉しそうに体をよじらせる。

 愛らしいな。


 俺たちは、自宅に到着して玄関を通っていった。だが、ここは俺の家。なぜ美織が付いてくる。


 「お帰り、おにいちゃ―――みお姉!?」

 「よっ、久しぶりだね、結乃」

 「お兄ちゃん!?」

 「なんかついてきた」

 「いいじゃない。私だって、結乃ちゃんに会いたいわよ」


 そう言って、結乃の後ろに回って、いきなり結乃の胸を揉み始める美織。やると思ったよ。


 「うひゃあ!?」

 「ふむふむ、これはまた少し大きくなったね?」

 「は、はい、カップ数が一つ上がりました……」

 「てことは、Dね?このこの!ドスケベボディにはこうだ!」

 「あぁ……ひゃん!」

 「美織、もうやめろ。これ以上、結乃に下ネタを教えるな。というか、妹の胸を揉みしだくな!」

 「えー、いいじゃない。揉める胸があるなら揉むわよ」

 「お前、下手したらセクハラだからな。てか、家帰れよ」

 「あ、言ってなかったかしら?私の家、隣だから」






 「「「え?」」」

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