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第一章完結 ちょっとしたIFSS「おめでた」 

 ある日の休日、俺と玲羅は一糸纏わぬ姿で添い寝をしている。

 昨日の夜―――というより、今日の朝方前ほどの時間まで、ハッスルしていたのだ。


 結婚してから三か月。籍を入れてからの一ヶ月は毎日のようにしていたのだが、さすがに体力面の問題が仕事に影響し始めたので、休みの日の前日の時だけにしよう、ということになったのだ。

 その分、お互い求める気持ちが強まり、休日をダラダラ過ごすだけの日に変えてしまうが。


 いつも、俺は玲羅より起きるのが早い。朝ごはんを作ったりするから当然ちゃあ当然だ。

 それに、玲羅は朝が本当に弱い。ひどいときは揺さぶっても起きない。どうするのかって?眠り姫を起こす手段は一つだけだろ?


 そう、俺はキスをして起こす。しかもそういう時は唇に触れるだけの優しいやつではなく、苦しくなるほど熱く激しいものだ。


 それをやると、玲羅は顔を真っ赤にして起きる。


 ただ、今日は休日。残念ながらそんなことは出来ない。

 その代わり、俺もゆっくりできるので、玲羅の頬をさわさわと撫でることができる。


 そうして撫でていると、玲羅が目を覚ましたようだ。


 「んぅ……しょういち?おはよう……」

 「おはよう。いい朝だな」

 「ああ、まだちょっと気だるいけどな」

 「もっともっと!って言ってたのってどっちだっけ?」

 「……それは……翔一との子供が欲しいから……」


 そう思いをこぼす玲羅の顔は真っ赤だ。なにも恥ずかしいことなんてないのに。

 結婚してタガが外れたとはいえ、玲羅は恥ずかしがり屋だ。まだまだ、エッチ系の耐性が薄い。だからかはわからないが、してる時とした後の性格の豹変がすごい。


 「朝ごはん、たべようか?」

 「……うん」


 今日も、俺たちは外にも出ずに家の中でイチャイチャして過ごすことになりそうだ。 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 生理が来ない。


 最近、私の体調が優れず、うっすら吐き気を催したり、前兆はある。もしかして―――


 私の名前は椎名玲羅。椎名翔一の妻で、つい最近まで苗字が天羽だった。

 だが、そんなことはどうでもいい。


 生理予定日が来ているのに、全然来た気配がない。もうかれこれ1週間くらいは遅れてる。


 最近は吐き気を催すこともあり、翔一に体調を心配されていた。

 気になった私は、今病院にいる。産婦人科だ。


 少しの検査の後、先生から告げられたのは、半分くらいわかっていたこと。そしてわかっていてもうれしさは変わらない言葉だった。


 「妊娠3週間程度ですかね。おめでたです」

 「お、おめでた……妊娠……」

 「そうです。妊娠されてます」


 私のお腹の中に翔一との赤ちゃん……

 そう思うと、自分の中にあった感情がとめどなくあふれてきた。


 中学の時に私を救ってくれてから、私を愛し続けてくれた翔一。結婚までして、私を幸せにしてくれるその温かい手。

 そんな人との間に赤ちゃんができた。女の子かな?男の子かな?元気に生まれてきてくれるかな?


 「うっ……翔一……やった、やったよ……赤ちゃん、できたよ……」

 「お母さん、落ち着いてくださいねー」

 「うっ……うっ」


 まさか、赤ちゃんがお腹に宿っただけで泣くだなんて……

 結婚式の時の私に言ってやらないとな。これから、同じくらい泣くことが何回もあるぞ、って。


 私は、検査を終え、病院を出るとすぐにスマホをつけて翔一に電話をつないだ。相変わらずワンコールで出てくれる。


 「もしもし、翔一か?」

 『どうしたー?』

 「その、話があるから……これから家に帰る。時間は大丈夫か?」

 『全然いいけどどうした?』

 「帰ってからのお楽しみだ」


 そう言って私は電話を切った。

 喜んでくれるかな?それとも、もうすでに勘づいていて、やっぱりかみたいな感じになるだろうか?


 伝えるのが楽しみだ。


 それから一時間ほどして、翔一が帰ってきた。会社に行っていたからスーツ姿だ。その恰好もさわやかでカッコいい。

 ―――いかんいかん。今日は私の妊娠を伝えなきゃいけないのか。


 「ただいま、どしたん?」

 「そう……だな。翔一、その単刀直入に言うと……」

 「……?」

 「妊娠……したんだ」

 「そうなんだ―――は!?」

 「赤ちゃんができたんだ」


 翔一は私の報告に驚いていた。かと思ったら、今度は涙を流し始めた。

 え?ち、ちょっと待って……。泣くだなんて思ってなかった。


 私が動揺しているのが、そんなにわかりやすかったのか、翔一は涙を流しながら私の手を握る。


 「ご、ごめん……うれしくて」

 「し、翔一……」

 「そうか、俺にも家族(子供)が」

 「ああ、ここにいるぞ」


 涙を流している翔一の手を取って、私のお腹に当ててやる。

 だが、まだ妊娠したばかりだから鼓動とかは感じられないだろう。だが、翔一はなにかを感じ取ったのか、涙目から穏やかな表情になり、私のお腹を撫でてくれる。すごく気持ちいい。


 前から思っていたが、翔一は手つきがえっちだ。まあ、それは学生の頃からあんまり変わってないけど。


 「どんな子が生まれてくるのかな?」

 「俺と玲羅の子供だ。きっと頭がいいよ」

 「愛も重いだろうな」

 「はは、そうだな。もしかしたらそれのせいで将来苦労するかもな」

 「そうだな……でも、元気に生まれてきてくれればいいさ」

 「ああ、あとは俺たちが元気に育ててやるからな」


 その日から私と翔一との間には、赤ちゃんという愛の結晶ができた。私たちにとっての初めての子供だ。


 それから数か月後


 私の妊娠が発覚してから大体5か月ほど過ぎた。


 あれから経過は順調で、このままだと予定日通りに生まれてきそうだ。

 私の両親にも妊娠したことを伝えた。報告の時、初孫ということもあって父さんは号泣してたし、母さんもおめでとうと言ってくれた。


 そして、私と翔一はお墓の前にいる。


 お義父さんとお義母さんに報告しに来たのだ。

 私は翔一の両親にはあったことはない。だが、翔一を育ててくれた人たちだ。とても優しくて暖かい人たちだったに違いない。


 墓標の前に立った私たちは手を合わせて目を瞑る。


 お義父さん、お義母さん。私はあなたたちの息子の翔一との子供を妊娠しました。あなたたちにとっての孫です。

 もうあと半年くらいしたら産まれてくると思います。だから、天国から見守ってください。絶対に翔一を幸せにしますから。


 そう義両親に伝えた私は目を開けた。隣ではまだ翔一が義両親と会話をしている。


 それから数分経って、翔一が目を開けた。


 「翔一はなにを伝えたんだ?」

 「ああ、あんたたちの初孫だ。なんか祝福してやれよ、って言ってやった」

 「そうか……」

 「あと、玲羅を幸せにするから、そこも見守ってくれ。ってな」

 「ふふ、もう幸せでいっぱいだよ」

 「じゃあ、もっと幸せにしないとな」

 「幸せすぎてどうにかなっちゃうよ」


 これ以上翔一に幸せにされたら壊れちゃう。私の中の翔一に対する思いの自制心が完全に壊れてしまう。そうなったらどうなるか……

 想像するだけでも恐ろしいな。でも、なんだかんだ翔一は受け入れてくれそうだ。


 「帰ろうか玲羅」

 「ああ」

 「そろそろ俺も休みを取ろうかな?」

 「いや、別にいいぞ?」

 「いいんだよ。これから苦労することもあるんだし、それに家事は得意だから」

 「じ、じゃあ頼めるか?私だけじゃ不安で……」

 「任せてくださいお姫様」

 「ひ、姫!?」


 こうして私たちは寄り添いあいながら、帰路についた。


 お墓参りから数か月後、出産予定日より予定が早まったが、私と翔一はもちろん。両親や翔一の妹夫婦にまで駆け付けた病院で、元気で可愛い女の子を出産した。


 私たちの家庭はこれから一人増えていく。

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