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まさかの中止

 参拝を終えた俺たちは次の目的地―――というより、長時間歩かされたもんだから時刻は、お昼時を示していた。


 「お腹減ったー」

 「そうだな、腹は減ったな」

 「そう、だよね。うん、バスに乗って少し歩けばお昼ご飯食べる場所があるから」

 「「あ、そこはバズなんだ」」


 そうして、俺たちはバスに乗った。

 目的地は、バスに揺られること20分程度で着く。長いな


 途中、目の前のおじいさんに席を譲ったり、音漏れがうるさい明らかなDQNがいたりとイベントが色々発生したが、そんな語ることもないのでスルーだ。


 そうして目的地に着いた俺たちは、八重に案内されるままに食事をする場所まで歩いていた。


 と、そこで俺の持っていた携帯が鳴った。

 携帯といっても、俺のではなく学校側で支給されているガラケーだ。緊急時の連絡手段として渡されている。自分の携帯番号を学校側に教えればいいと思うだろうが、案外中学生で自分の携帯を持っていないことが多い。だから、一律で貸し出しという形になった。


 まあ、その携帯が鳴ったら、学校からの連絡だと一発で分かるのでいいのだが。


 それにしてもなんの連絡だろうか?


 「はい、もしもし?―――あ、はい。わかりました。班員にはそう伝えておきます。失礼します」

 「どうしたん?」

 「ああ、とりあえず飯食おう。その時に話すわ」

 「「「……?」」」」


 連絡されたことは緊急事態を知らせるものだったが、飯を後回しにするほどの内容でもなかったので、目の前の昼飯を食うことにした。


 八重がチョイスしたのはちょっと珍しいラーメン屋だった。

 この店、なぜか個室がある。俺が学校の連絡をするといった矢先にこの店。ちょっと都合がよすぎる……。まあ、元々予定を組んでいたんだろうし、無関係だろうけど。


 「八重っち、なんでここを選んだの?」

 「いや、ラーメン食べたいし、椎名さんと天羽さんのイチャイチャもみたかったから……」

 「ナイスアイデアじゃん!八重っち、もしかして天才?」

 「早く注文決めてくれよ」


 全員が頼んだラーメンは醬油ラーメン。この店の看板だ。そして一杯1200円、高い!二郎なら700で二倍食える!


 そうしてテーブルに運ばれてきたラーメンはすごかった。まず、料理を入れている皿。なんだ、この高そうな真っ黒な皿は。

 そして、目を引くのは醬油ラーメンを頼んだはずなのに、なぜこんなに味噌っぽい色のスープなんだろうか?もはや、意味が分からない。味、醤油じゃん、キモッ


 俺が不思議そうに食べていると、玲羅に小声で話しかけられる。


 「翔一、これはどうなってるんだ?」

 「いや、俺もわからん。なにがどうなってこんな色になってるのやら……本当に味噌入ってねえの?」

 「本当に不思議だ……」


 食べるのもそこそこに、全員がだいたい半分くらい食べたたところで、俺はいいだろうと考え、先ほどの先生たちの連絡を班員に伝える。


 「これからホテルに帰るぞ」

 「「「え?」」」

 「さっきの連絡は、先生たちがすべての班に一斉にしているものらしいんだけど。なんか、この近くで事件が発生したらしいんだ」

 「「「……」」」


 その場にゴクリという音が響く。誰だ、この雰囲気で水を一気飲みしたバカは。固唾を呑めよ。

 犯人捜しは後にして俺は連絡の詳細を伝える。


 「事件って言っても犯人は捕まってるらしいんだけど、安全のために明日の新幹線の時間までホテルで待機だって。でも、その間は部屋の行き来や温泉の使用、その他諸々の制限が解除されて、明日一日はホテルでおとなしくする。そう言われた」

 「事件って?」

 「それに関しては聞かされてない。でも、こうして学校の修学旅行に影響が出るほどだから、交通事故とかじゃなくて、殺人とかの凶悪犯罪じゃないかな?多分帰れないのは、新幹線の席が取れなかったからだと思う」


 連絡された内容を聞いて、班員たちは残念そうな顔をする。当たり前だ。ここにきて修学旅行が半中止みたいな形になったからだ。

 だが、すぐさま空気を変えたのは奏だった。


 「じゃあ、ボードゲーム買いに行こ!どうせ暇でしょ」

 「ああ、そうだな。こうなった以上はその環境で楽しむしかないな」


 そうして俺たちは昼飯を食べた切った後、集合場所の駅に向かわずに、すぐ近くの大型ショッピングモールKYOTOにて人生ゲームを購入し、集合場所の京都駅に到着した。


 さすがに、昼飯や遊びのための買い出しに時間を使っていたからか来るのは俺たちの班が一番遅かった。


 まあ、なんで人生ゲームを持ってるのかを聞かれたが、夜遊ぶつもりだったので買ってました、とでも言っておいたから大丈夫だろう。


 そのあとは行動班を解散して部屋班のメンバーと合流した俺は、ホテルへと戻って言った。

 部屋に戻ってテレビをつけると、修学旅行を半中止状態にしたであろう事件が報道されていた。


 『犯人として逮捕されたのは猪狩轟容疑者です。犯人は、京都に観光に来ていた女性たちを誘拐し、殺害したとされています。


 ―――事件があったのは京都駅にほど近い一軒家で起きました。薬品などで眠らせた女性たちの頭部をのこぎりなどで解体し、切り落とした頭部のみを氷の中に入れ、保存していたとみられています。犯人の供述から、「頭部は冷凍庫に入れた。体は溶かして川に捨てたと、供述しており、警察は遺体の完全な発見は絶望的だとのことです。犯人の家からは18人の頭部が発見され、警察はほかにも余罪がないか調べています。


 ―――続いてのニュースは……やりました!野球史上初の』


 事件のニュースが終わり、俺はテレビを消した。想定の百倍くらい凶悪な犯罪が起きてる。

 なんじゃそりゃ、生首だけを冷凍して保存していた?サイコパス過ぎるだろ。にしても、なんでここまで被害が出てるのに全然見つからなかったんだ?


 そう思い、俺は犯人の名前を検索してみた。すると、さすがというかなんというか、SNSなどに早速犯人の個人情報が挙げられていた。


 なんでも、中学から高校時代は素行も悪く、周りから暴力団とのつながりも示唆されていて、卒業文集にも、色々な女性を眺めていたいとも書かれていた。

 もともと計画されていた犯行なのか、それとも突発的に何度も繰り返したものだったのか。俺に知る由はない。だが、こんなことが玲羅に起きることがあったら……


 よそう、こんな考えは良くない。今は被害者の祈るのみだ。部外者である俺にはそれしかない。


 それにしても、なぜ今になって見つかったのだろうか?


 どうでもいいか。犯人が捕まったのなら俺が出る幕などない。玲羅のところに行こう。

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