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第七章完結 ちょっとしたIFSS 俺たち夫婦の

 「うへへ、しょういちぃ……」


 仕事終わり、玲羅はへべれけに酔っぱらっていた。仕事中はがちがちの仕事人間で、周りが緊張を感じるほどに張っている彼女だが、飲み会の席ではいつもこうなる。


 必ずと言っていいほどに俺の隣に座り、終盤につぶれてしまうほどのペースで飲み、一番最初にべろべろに酔っ払う。

 正直な話、玲羅は酒癖が非常に悪い。いや、ただ甘え上戸なだけなのだが。


 結婚して、もう6年たつが彼女の俺へのメロメロ具合はなくなるどころか日に日に激化していっている。

 ただ、子宝に恵まれないのを彼女は気にしているのか、最近は夜の情事も回数も激しさも増してきている。


 俺はそんなに焦らなくても24だから大丈夫だと言っているのだが、それでも俺との子が欲しいみたいで、毎日誘ってくる。

 まあ、俺も子供が欲しいのは否定しないので、彼女の誘いに乗ってばかりなのだが。


 俺たちの良いところと言えば、互いに体力お化けなところだろう。

 少々寝れない程度など、もはや俺たちにとって気にすることではない。むしろ、激しい運動の後で倒れるように眠るため、行為中に眠くなるくらいがちょうどいい。


 ちなみにだが、美織と結乃は去年に結婚した。1年で祝儀を2回持ってかれるのは本当にきつかったが、祝福した。

 だがもう一度言わせてくれ。年に祝儀2回はキツすぎる。


 今は世帯収入は不労所得やらなにやら合わせて、裕福な暮らしができるほどではあるが、まあここ最近の増税の影響で、思いのほか自由にできる金銭はそこまで余裕はない。

 子供のこともあるし、かなりの額を貯金に回しているのもある。それでも、俺たちは幸せにやってるからいいのだが。


 話を戻して、現在ベロベロに酔っぱらっている彼女は、すでに俺の肩に頭を乗せてよっかかってきている。


 さすがに2年も一緒に仕事をしている同僚たちは慣れたようだったが、まだまだ今年入った新人たちは凛々しい天羽玲羅先輩がこんなことになるのは慣れないだろうな。


 「天羽先輩……」

 「どっちだ?」

 「あ、あの……旦那さんのほうです」


 ちなみに、俺も姓が天羽になっている。そのせいで、普段から聞いたことのない苗字である「天羽」が二人いるという珍しい職場になっている。


 そして、俺に話しかけてきたのは、俺が教育担当をしている後輩の子だった。


 初めて参加する飲み会で、普段厳しい妻がこうなっているのがびっくりで新人の仲間内で代表として聞きに来たのだろう。

 現に、遠くに新人の集団がちらほら俺たちのほうを見ている。


 「そ、その……奥さんの天羽先輩は、いつもこんな感じなんですか?」

 「うーん……酒飲まなくても、家ではいつもこんな感じだぞ。まあいつもの仕事姿からじゃ想像できないと思うけどな」


 俺はそう言いながら妻の頭を撫でる。

 目を細めて、あまり周りを見ずに甘えてくるので、後輩がいることに彼女は気づいていない。まあ、酔っている彼女は気づいたからとどうすることもないのだが。


 「そ、そうなんですか……」

 「たぶん、俺がいないと飲みの席には頑として出ないと思うけど、こうなるもんだと思っときな。どうせ、半年先の忘年会もどうせこんな感じになるよ」

 「は、はぁ……」


 なんだか釈然としないという感じで、後輩の子が席に戻っていく。

 後輩の子が過ぎ去ると、玲羅が面白くないとばかりに不満の声を上げる。


 「むぅ……翔一、楽しそうに話してた……」

 「そんなことないよ」

 「話してたもん。いいよね、新人の子、可愛くて愛嬌があって」

 「それ以上に玲羅は可愛いくて、カッコいいよ」

 「むふふ……翔一―――しゅきぃ」


 言いながら彼女は頭を俺の胸板に移し、ずりずりとこすりつける。


 「あはは、くすぐったいくすぐったい」

 「うりうりー!」


 もはや、うちの会社では玲羅の甘えん坊ムーブは飲み会の名物となった。

 会社の彼女の毅然とした態度で、それをおちょくったり馬鹿にしたりする人はいないが、陰ではいろいろと話のネタにされている。まあ、普段は飲み会に参加しない人も、俺たち見たさに、俺らがいるだけでくる奴らがいるのが何よりの証拠だろう。


 そのあとは、豪快女部長などに絡まれたりなど飲み会ならではの絡みなどあったりしたが、最後まで特にこれといった問題は起きなかった。まあ、本当は玲羅に過剰に触ろうとする後輩がいたが、周りの同僚たちが阻止するという話はあったが、気にすることでもない。


 その昔―――と言っても、入社したての頃だが、その時も酔っ払ってこうなった彼女に手を出そうとした上司がいた。その相手を、彼女は容赦なく殴り飛ばしたのだ。

 酔っていても俺以外に触られたくないとばかりに。もう、信じられないくらいにボコボコにした。たぶん、俺が止めに入らなかったら死んでいたと思う。まあ、あとで酔ってるのをいいことにおっぱい触れたって聞いたときは、その上司の人生を終わらせたが、それは別の話だ。


 そのあとくらいからだろうか。彼女は、飲み会の時に頑として俺の隣以外には座らないし、呼ばれても動かない。そんなところも愛らしくていいのだが、最初はそれをよく思わない人物だっていた。だがまあ、名物になっていくにつれて、見ている方が面白いとなっていき、今よく思わないのは、彼女の抜群のスタイルに魅了されたなにも知らない新人くらいのものだ。


 同僚がその後輩を止めたのは、俺らの邪魔をさせないのもあっただろうが、彼の命を守るための処置でもあったのだろう。


 飲み会が終わると、二次会に行く者たち。各々帰る者たち。様々に分かれる。

 かくいう俺たちも、これからは夫婦の時間とばかりに帰宅を選ぶ。そう考え、俺たちは駅に向かう。


 しかし、その途中―――


 「翔一、今日はホテルに行こう」

 「いや、でも終電が……」

 「帰るのは明日でいいじゃないか―――それよりも、今はお前の体温を……」

 「まだ意識が朦朧としてるのか?」

 「水のんだから、さっきよりはマシだし、全然動ける。明日は休みだし、その―――」

 「その?」

 「―――立てなくなるくらいに、めちゃくちゃにしてほしい……家だと、その……シーツとか大変なことになっちゃうから……」

 「―――わかったよ。でも、あんまり子供のことばっかり気にするなよ。ナイーブになってると授かるものも授けられなくなっちゃうから」

 「……わかってる」


 そう言いながら俺たちはホテル街へと姿を消していった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌日、俺たちが帰宅すると、隣の部屋に住んでいる美織が散歩から帰ってくるところだった。


 「あ、おはよ。今帰り?」

 「おはよう。まあな―――お前は身重なんだから、あんま無理すんなよ」

 「大丈夫よ。これくらい」


 そう言って胸を張る彼女のお腹は大きく膨らんでいた。太ったのではない。彼女は俺たちよりも早く子を授かったのだ。

 もうそろそろ産まれるのではないのだろうか?


 「そういうあなたたちは朝帰り―――いつまでも仲いいわね」

 「なんか悪いか?お前もサマと大分仲いいだろ?」

 「私のところは全然よ。あいつ、自分で処理しきれないとか言って、あたしに頼んできたのよ」

 「なにを?飯をか?」

 「違うわよ。性欲よ―――私も身重だし、そういうことできないから手でやってあげるのよ」

 「対応するんだ……」


 ここまでの話だと、彼女の夫が自分で欲求も処理できないやつだとバカにしそうになるが、俺も玲羅もそうは思わない。どちらかと言えば、美織を責めるべきだと思ってる。なぜかって?


 「だからね、私もただでやってはあげないわよ?この私を妊娠までさせておいて、あんなことをさせるんだもの。お仕置きが必要よ」

 「はいはい……」

 「だから、限界寸前まで虐めたら、そこからゆっくりゆっくり焦らしてあげるのよ。そうしたら、あいつすっごい情けない声上げるのよ。だから、欲しいの?って聞いてあいつが物欲しそうな返事をした瞬間に、一気に激しくしてやんの。その時の情けない声と言ったら―――ああ……思い出しただけで」


 な?要は、こいつの夫は性癖を思いっきり歪められたんだよ。

 正直、サマのほうが不憫でならない。


 「なあ翔一……なんで私たちの周りはこんな女ばかり……」

 「玲羅、俺からしたらお前も大概だよ」

 「な!?そ、そんなことはないだろ!私、こんなに翔一を虐めたいなんて……」

 「でも、毎晩ベッドに入るたびに服脱いで俺に跨るだろ?」

 「うぅ……それを言われると、弱い……」


 ちなみに、結乃は俺たちの住んでいる部屋を挟んで隣の部屋に住んでいる。

 ん?どこに住んでるかって?そりゃ、タワマンだよ。大学で色々あってな。アホみたいにあった金を使って、俺たち3夫婦は去年にタワマンを一室ずつ購入した。最近できたばかりということであほみたいに高かった。


 だがまあ、こうして若いながら充実した生活を送れているのだからいいだろう。子供のための貯蓄もあとは学費分くらいなもの。


 そして、このやり取りの2週間後、玲羅の妊娠が発覚するのだった。

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