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色々めちゃくちゃな玉入れ

 女子リレーはぶっちぎりの1位だった。

 先頭に美織、アンカーに玲羅を備えた我が組は、なぜか全体的に女子の身体能力が高い。


 そのおかげで、一切の危なげもなくぶっちぎりのぶっちぎりでゴールテープを玲羅が切った。まあ、女子は男子と違ってフルメンバーだ。体力的にも、男子より有利な面が多い。

 というか、うちのクラスは男子が半分以下というハンデがデカすぎる。


 まじでムショにシバキに行きたい。


 そうして迎える第2種目。―――玉入れだ。

 うん。玉入れ。これは俺の記憶だが、中学ではそんな競技はなかった。そりゃそうだろう。だって小学生以降、その競技を体育祭という言葉の中で効くことは絶対になかった。


 朝からリレーの後にやらせるのが、玉入れ……

 薬物で退学者は出すわ。女子に無視されて不貞腐れて登校しなくなるやつらはいるわ。玉入れやるわ。うちの学校、本当に偏差値高いんか?不安になってくる。


 と、言いつつも、今年の3年の模試は全国上位が何人もいるらしい。―――うん……偏差値高い学校だな。―――もうわからん。


 「翔一、頑張るわよ」

 「頑張ろうな、翔一」

 「みんな頑張るよー!」

 「「「おー!」」」


 みんな張り切っているようだが、そこまでか?


 「クラス競技は配点が高い!1位取るぞー!」

 「「「おー!」」」


 なにやらクラス全体で行う競技は配点が多いようだ。

 ならば俺も優勝目指して……


 「2組、ファイトおおおおお―!」

 「「「うおおおおおおおお!」」」


 いつまで叫んでんだ!うるさい!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 『1年生玉入れがもうすぐ始まります。1年生は全員入場門前に集合して、準備してください』


 そのアナウンスが入るが、すでにほとんどの1年は入場門前に集まっている。なかなかのうるささを保つその場所では、クラスごとに並べられた生徒たちがその中で思い思いに過ごしていた。


 今回の玉入れも2回戦で勝負が決まる。クラスウ数が多いのは、こういうところがネックだ。まあ、1分間玉を入れ続けるのを、全体で3回するだけ。そこまで時間を食うわけじゃない。むしろ、練習の段階で中学生張りに入場と退場の練習をして、訓練されたここの生徒の移動速度は半端じゃない。


 一瞬でも出遅れたら、後続の生徒に地面にならされるのかの如く踏まれる。みな、そうなりたくないから必死に前に進む。


 さて、1戦目―――俺たちの1回戦の相手は、3組、6組、8組だ。特段特筆することはないが、しいて言うなら各クラス、足を引っ張るレベルのクソデブがいる。実際リレーで足を引っ張っていたし、そういうことだ。


 「位置について!―――よーい……!」


 パンッ!


 「「「「うおおおおおおおお!」」」」


 号砲とともに、参加している全員が雄たけびを上げながら玉を投げ始める。

 本当に、共学の学校か?ノリが男子校のそれだぞ。


 対して俺は、あんまり玉に力を込めないように投げていた。一応全中のピッチャーだったからな。本気でやれば、それなりの威力とコントロールがいく。まあ、そういうことだ。強すぎるから―――


 「おい、椎名!まじめにやれ!」

 「そうだそうだ!」

 「いや、だいぶ真面目にやってるよ?」

 「嘘つけ!なんで一つずつゆっくり投げてんだよ!」


 ていうか、俺に構う暇があるなら自分たちが投げろよ。


 「本気で投げろー!」

 「椎名君、やっちゃえー!」


 そうやって催促される俺に、玲羅だけは心配そうに声をかけてくれる。


 「む、無理はしなくていいんだぞ?」

 「大丈夫。あいつらが本気でやれって言ったんだから、めちゃくちゃ本気で投げてやるよ」

 「不安なんだが……」

 「心配すんな。こっからの競技で巻き返せばいいんだよ」

 「ちょっ、なにをするつもりだ!」


 俺は玲羅の制止の声を聴かずに、思いっきり振りかぶって玉入れの玉を投げた。

 放たれたそれは、一般人の力をはるかに凌駕したスピードで飛んでいき玉入れの網に直撃する。だが、それで勢いが死ぬことはなく、玉はその勢いのまま進もうとし、網目の穴を無理やりこじ開けて入っていった。


 一見するとすさまじいほどの凄業だが、一つだけ致命的な欠点があった。


 それは玉が網を貫通する瞬間、玉が思いっきり網を持ち上げるのだ。

 俺の投げた球だけは生き残るが、ほかの玉はというと―――


 「わー!?全部落ちた!?」

 「な、なにが起こったの!?」


 60個くらい入っていただろうか。その玉が俺の入れた一個を残して、無残に地面に落ちていった。

 あいにくなにが起こったのかクラスの人は理解できておらず、唖然としていたがすぐに正気に戻り、なんとかまた玉入れを再開した。


 俺はというと―――


 「なにを、なにをしてるんだ!」

 「ゆ、ゆらすな……揺らさないで……」

 「挑発されたからってあんなことする奴がいるか!」

 「いやあ……意外と綺麗に飛んでったね」

 「本当になにをしてるんだあ……」

 「大丈夫だよ。まだまだ、ここから巻き返しはできるよ」

 「くっ、彼氏じゃなかったら殴ってた……」

 「ふっ、玲羅は優しいからこんなことで人のことを殴らないのは知ってるよ」

 「うるさい……」


 ピー!


 そんなやり取りをしていると、玉入れの時間が終わった。

 まあ、見ての通りではあるが、ほかのクラスに比べてうちのは絶望的だ。


 『各クラスの集計が終わりました。それでは順位の発表をします―――4位、17個、2組。3位、37個、8組。2位、88個、3組。そして第1位、89個、6組です』


 いや、どのみち勝てなかったな。え、なに?89個って……制限時間って1分だよね?え、不正?


 そう考えるが、とくにそれをやった様子もない。というか、俺の派手なやらかしがかすんじゃったよ。たぶんどのみち決勝行けなかったから―――あらま。


 「これはどのみち決勝行けなかったなあ」

 「くっ、これが翔一のせいだったら怒れたが……」

 「へへー、残念でしたー」

 「なんで翔一はそんなに元気なんだ……」


 玉入れを終えた俺たちは、決勝がないのでここからまたクラス競技が車で暇だ。それまでにいくつかの個人競技があるが、俺と玲羅、そして美織は選抜リレーがあるため、原則出ることはできない。ただ、人数がいないので補欠要因としては入っているので、もしかするとがあるのが非常に怖い。


 俺たちの体育祭。まだまだこれからだ。

 お弁当イベントもあるしな

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