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変態仮面結乃

 椎名結乃―――私の恋人の妹にして、美織に並ぶかなりの変人。というか、翔一もだが、彼の近くにいる人は総じて変なところがある。……なんだ?なんだかお前が言うなとか聞こえてくる……?


 そんなことは置いといて、とにかく変人だ。


 例えば、私の胸を鷲掴みにして感想を言うくらいには変だ。というか、彼女もそれなりに大きいものを持っているのに、なにをうらやむ必要があるのか。

 わ、私としては、生活の邪魔になることも多いから、あると困るのだが―――これを言うと、八重野が怒るからいつも言えないが……


 そして、その問題の結乃が、慣れていると思っていた私ですら度肝を抜かれるようなことをしているのだ。


 私が絡まれているところに現れてくるのはいいのだが、シーツ(?)なのだろうか。それをマントのように羽織り―――女性ものの下着を顔に……って、アレ私の!?


 自分で言いたくないが、たいして色っぽくもないシンプルな薄いピンクの―――ほ、本当に私のではないか?


 とんでもないことに気付いた私はまたまた度肝を抜かれてしまう。

 というか、本当にやめてくれ……


 そんな私の気持ちとは裏腹に私に絡んできた男たちの注目は結乃に集まっていた。まあ、結乃のことを知っても知らなくても、注目するのは当たり前なのだが。


 「誰だてめえ!」

 「私?私はね―――この世に蔓延る悪を駆逐する!太陽の子!」

 「ああ!?なに言ってんだ!」

 「ふっはっは!お前たちは、今から私に倒されるんだよ―――とうっ!」


 スタッと彼女は私の目の前に降り立ち、そのまま男たちと対峙する。

 正直、翔一があれだ。結乃を心配する要素はどこにも―――


 「やあっ!」

 「うごあ!?」

 「とおっ!」

 「ぎぴゃ!?」


 心配する要素は―――


 「でりゃああああ!」

 「ぎゃあああ!」


 そんな心配は……


 「死ねええええ!」

 「ま、待ってくれ!さすがにやり過ぎじゃ……」

 「悪に裁きを下すのに、やり過ぎなんてないんだよ!」

 「お、おま、本当に結乃か!?」

 「とうっ!」


 結乃らしき人物は、そのまま私の声を聴くことなく男たちをばったばったと殴り飛ばしていく。一撃を受けたものは漏れなく血反吐を吐きそうなほどボロボロになり地面に横たわっている。

 まるで、武装を使った時の翔一みたいだ。


 無差別に襲うというわけじゃないが、一般人に対しての情け容赦というものを一切感じられない。


 そうして、ほぼすべての男をダウンさせて、結乃は消えていった。


 「な、なんだったんだ……?」


 そう不思議に思いながら家に帰ると、脱衣場に私のパンツが洗濯籠に放り込まれていた。

 さっきのだ。ということはやっぱり……


 「結乃……」

 「なに、義姉さん」

 「お前、さっきなにをした?」

 「うーん……覚えてない」

 「ほ、本当か?」

 「うん、お兄ちゃんからなにか電話が来たけど、それ以降はなんにも覚えてない」

 「そうか……ならいいんだ。でも、あんまり人の下着を持ち出さないでくれよ」

 「……?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「はあ……」

 「どうしたんだ?」

 「あ、いえ、なんでもありません」


 ボーっとしていると、高校の会長に心配されてしまった。

 まあ、玲羅が無事かとかいろいろ気になることもある。それに、結乃のほうも大丈夫か気になる。


 まあ俺が心配しているのは、結乃自身というよりも彼女を相手取る奴らの心配だ。


 結乃は絶対に一般人程度には負けない。

 それはわかってるし、大丈夫だろう。だが、あいつは俺の家族―――どうしてもショックなことを体が拒絶してしまう節がある。


 それが、俺の武装状態の暴走のように。


 結乃は好んで拳を振るわない。というより、覚えていない。

 おそらく彼女は、俺が電話してからの記憶はないだろう。そんなあいつに頼らなくてはならない兄を許してくれ。


 あいつは、家族を傷つけられることを極端に嫌う。別に家族じゃなくとも、それに近い誰か―――今なら、玲羅や美織。昔なら、綾乃も入っていた。


 その者たちを傷つけられたとき、彼女は容赦なくボコボコにする。きわめて理性的に見えることが多いが、恐ろしいほどに彼女は暴力的になる。そして、その記憶はすべて消えて、戦闘状態から元に戻るとなにごともなかったかのような生活に戻っていく。


 ある意味で二重人格のようなものだ。


 このことはたぶん、帰ったら玲羅に聞かれるだろう。隠す気もないし良いのだが、それで結乃に対して態度が変わるというのも―――いや、玲羅に限ってそれはないか。


 とりあえず聞かれたら、結乃がいないところで言おう。


 「椎名ー!こっちも頼めるかー!」

 「あー、はーい。今行きます!」


 とりあえず、結乃と玲羅は助かったことにして、今は生徒会とボランティアたちと一緒に体育祭の準備をしている。

 いよいよ2週間後に迫ったそれは、学校行事の大事なイベントの一つだ。


 行事の内容はみんなが知っているように、クラス対抗で点を競うものだ。

 ただ、1年生は体育の能力が未知数というわけで、クラスごとである程度の差が生まれてしまう。2年から上は、1年の体育の記録を参照してクラス編成が行われるので、体育祭は実質平等なものになる。


 そして、得点は各学年のクラスごと―――つまり、1組の点は、1から3年の点数が表示され、1組の優勝の場合は、1から3年の1組が優勝クラスとして表彰される。


 これも、クラス格差をなくすための措置ともいえるだろう。


 ―――待てよ?

 運動能力基準で割り振られるってことは、俺、来年玲羅と同じクラスに慣れないの確定じゃね?―――だっる。


 「お、おい!椎名!?なんで、座るんだ!」

 「会長、ちょっと絶望してるんで……」

 「なにを言っているんだ!早く手伝え!」

 「だるーい……」

 「なにしてるのよ翔一―――こっちのパソコンもやるのよ!このままだと、玲羅ががっかりするわよ」

 「わかった。なにをすればいい?」

 「ぶっ飛ばしたくなるわね。なにこの現金な男……」


 美織がよくわからないことを言うが(すっとぼけ)、俺には関係ない。

 あとのモチベーションはすべて玲羅の笑顔にかかっている。もう未来ばかり見てないで、しっかり今の玲羅とも向き合わないとな。これ以上進展できませんは、彼女にとっても俺にとってもよくないことだろうし。

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