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ガキみたいな高校生共

 希静高校の体育祭の競技は学年によって異なる。

 だが、騎馬戦や綱引きなどの共通の競技も存在するのだが、うちのクラスは今最大の問題に衝突していた。


 先の文化祭の影響でクラスのパワーバランスが崩れた影響で、一部の男子が協力的な姿勢を見せず、団結力が著しく欠けてしまっている。

 というか、自分たちが仕事に来なかったからこうなってるのに、逆ギレもいいところだ。


 そんなガキみたいなやつらがいるせいで、体育祭で一番配点が高い『大縄跳び』が致命的だ。


 この種目は、全体で列になり縄を跳び続けて、連続でとんだ回数を競うものだ。

 つまり、一度縄を回して、誰かが引っかかり縄の回転が止まった時点で点数の加算がなくなる。


 運動ができても、それなりに協力する姿勢を見せないと詰む。俺と美織と玲羅がいれば、玉入れなどの団体競技は負ける気がしないが、どうしても個人じゃどうしようもないことがある。


 本当に―――「ちょっと男子。まじめにやってよ!」状態である。まっ、俺も男子なんだけどね!―――ファ〇ク!


 俺は勝ち負けで言えば、こういう試合みたいなものは勝ちたい。そりゃスポーツやってたし、楽しむことは大事でも、勝ち負けがつくのなら、勝ちたいものだ。

 勝負師を気取る気はないが、こういうことをされると、俺も気分が悪い。今の俺は、クラスの女子の味方だ。


 それは玲羅も同じようで、すぐに感情が顔に出る彼女は、あからさまにイライラしていた。まあ、その気持ちはわかるけどね。でも、玲羅には笑っててほしいよなあ。でも、今笑わすのは違うしなあ……


 「みんな、こいつら抜きで練習しよ!」

 「そうだな。こんな奴ら、どうせ当日も来ないよ!」

 「死ね!」


 誰だ。ストレートな悪口言ったのは―――さすがにやめなさい。


 と、まあ、そういうわけで俺たちはその男子8人程度をハブって体育祭の練習をすることにする。まあ、男子とはいっても、文化祭に来た男子はまじめにやってるし、サボった組も数名だけではあるが、体育祭は真面目にやる気があるのか、ついてきている。


 そして、その場に残された男子たちはというと―――


 「はっ、お前らみたいな奴らとはこっちから願い下げだってんだ!」

 「ふんっ!」

 「なんなんあいつら?まじでキモいんだけど」


 うーん……引き分け。両者、語彙なし。


 本当にこいつら高校生か?もうちょっと口論しようぜ。―――いや、する必要はないけど。


 そんな状況に、ついに玲羅も不満が漏れてしまう。


 「なんなのだ。子供じゃないのだから、いつまで不貞腐れてるつもりなんだ」

 「まあまあ、相手にするだけ馬鹿だよ」

 「むぅ……わかってはいるのだが、あんなムカつく態度をとられては、文化祭の恨みが……」

 「クールダウンだ玲羅。ちょっと落ち着こう」

 「翔一はムカつかないのか?」

 「正直、腹立つよ。でも、今は楽しんでやってるやつもいる。水を差すようなことを言うのは、できるだけ少ない方がいい」

 「そ、そうだな……自分で言ったことが恥ずかしく思えてきたな」

 「それに玲羅は、もっときれいな言葉を使った方がいい。玲羅に、死ねとかカスとか、そういう汚い言葉は似合わない」


 そう言うと、玲羅はあからさまに頬を赤らめて俯いてしまった。

 やっぱり、彼女にはこういった表情が向いている。


 可愛い彼女こそ、本当の玲羅だ。


 みんなには、クールだとかカッコいいとか―――最近では情熱的とも言われているが、結局彼女の素は可愛いの一言に尽きる。

 こんな恋人がいて、俺は本当に幸せだ。


 それから俺たちは練習を重ねていき、体育の授業の練習時間内だけで、大縄跳びの記録を50回まで伸ばすことができた。ここまでくると、あとは体力勝負みたいなところ。あまり、無理をさせるのも酷というものだ。


 そんな感じで、着々と体育祭への準備が進んでいき、生徒会の休みがなくなってきたころ。


 「椎名君、助けて!」

 「ああいいよ」

 「こっちも頼む!」

 「あいよ!」

 「こっちもー」

 「その次はこっちも!」

 「だーっ!美織もやれ!」


 クラスの一人に頼まれて、俺と美織が機材制作や大会中使用の電子機器類の調整を行っていた。

 どこからか、俺たちがパソコンを使えるだとかいううわさが流れて、こんなことになっている。

 ―――使えるけどさ。俺、言ったことないはずなんだけど……


 しかも、俺は基本的にゲームでしか使わんぞ?


 と、そんなこんなで忙しい時間を過ごしていると、作業場から少し離れたところに玲羅を見つけた。


 「会長、ちょっと休憩もらいます」

 「ああ、わかった」


 会長に許可をもらって、俺は玲羅のほうにかけていく。


 「忙しそうだな」

 「まあな。悪いな、最近一緒に帰れなくて」

 「かまわないさ。その代わりに、この後しっかり構ってくれれば―――今日も帰った方がいいか?」

 「そうだな。夜も遅くなりそうだし、結乃を一人にするのも、なんだか家が倒壊しそうだからさ」

 「ふふっ、結乃もそこまでお転婆じゃないさ―――じゃあ、またあとで」

 「ああ、あとでな」


 何気ない会話をしてから、玲羅は帰宅していく。

 そして、俺は結乃に電話をしてあることを頼んだ。


 なんだか、今日は嫌な予感がする。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 最近、翔一が忙しそうにしている。


 体育祭の準備ということで、特別戦力の形で生徒会に協力している彼だが、そのおかげで私と帰る機会が少なくなり、少しだけ満たされない。

 その代わりに夜のスキンシップは少しだけ多くなったし、悪いことばかりではないが、彼と一緒に歩くことに慣れたこの道を一人で歩くと、何とも考えることがある。


 寂しがりながら歩いていると、不意に周りに男たちが群がってくる。


 数はおよそ10数名程度だろうか?まあ、穏やかではないのは確かだ。


 「天羽玲羅だな?」

 「そうだが?―――お前たちは?」

 「知る必要はない。お前を捕まえるのは、椎名をボコるためだからな」

 「翔一を?―――無理だな。私を捕まえたところで、あいつはそんなレベルのやつじゃない。皆殺しにあうだけだ」

 「うるせえぞ!」


 パァン!


 少し煽ると、男に私はしばかれた。

 私はこんなだが、これでも女子高生だぞ?顔に傷をつけるような行為……


 「おい、攫うぞ!」

 「誰が誰を攫う、って?」

 「「「!?」」」


 私が男たちにつかまれた瞬間、どこからか声がしてきて、その方向を見ると、民家の上に立つ―――女性もののパンツを頭にかぶった少女が……いや、顔を隠しているつもりだろうが、私は気づいてしまった。

















 結乃―――お前、なにをやっている?

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