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二日目 ようやく休憩

 『これから希静高校文化祭の2日目を開始します。―――どこかの阿呆のせいで、人の数を数えるだけでも嫌気がさしますが、頑張っていきましょう』

 「誰が阿呆だ!誰がアナウンスしてやがる!ぶん殴ってやる!」

 「「「落ち着いて!!!」」」


 あまりにもふざけたアナウンスに俺がブチギレると、ほかの生徒たちが総出で取り押さえてくる。正直、このくらいならはじけるのだが、ここまでとまえる彼ら彼女らを押しのけてまでやることではない。というか、俺のあの件(68話&69話)があっても突っ込んでくるのは勇気があるな……


 思いのほか、こいつらは俺に対しての恐怖感が薄れているのだろう。


 それは嬉しいことだし、俺もこいつらと仲良くするのも悪くないと思えている。


 「わかったわかった―――阿呆は美織ってことにしとくよ」

 「なんでよ!」

 「いや……美織ならいいかなって」

 「むかつくわね……ちょっと一回あのアナウンスをした女生徒をシばいてくるわ」

 「「「や、やめてくれ!」」」

 「大丈夫よ。ちょっと叩かれたら悦ぶ女にしてやるだけよ」

 「絶対やめろよ……」


 なんだかとんでもないことを言い始めた美織を横に、段々と目を背けていた現実が迫ってくる。校門から響いている足音が、俺たちのクラスに近づいている。


 みんな、この現実からどうにか目を背けようとするが、そんな甘ったれた現実はなく、中のクラスメイトが指示をするまでもなく席の奪い合いが始まり、すぐさま満席になった。


 「「「「オムライス!」」」」」


 頭が痛くなった。

 というか、救急車を手配して仮病で逃げたい……


 今日の休憩は、11時から15時。とりあえず11時まで耐え抜く!


 その思いは、クラスで一致し、一部のあほ男子を除く全員が一致団結して働き始める。

 俺たちの疲労と引き換えに、どんどんと成績を上げていく売り上げ。当初予定していた、メイドの呼び込みも全部流して、ホールに回ってもらっている。


 キッチンも、俺と鐘梨以外にも、昨日の男子たちに手伝ってもらっているが、火の車だ。早くも男子たちが根をあげ始めた。


 「これ、うちのバイトよりきついんだけど……」

 「我慢しろ!俺らのほうがよっぽどだろ!」

 「でも、俺たちも……」

 「あーもう!男子!グダグダ言わないで!私と椎名さんのほうがきついの!あなたたちは卵割ってボウルに入れての単純作業なんだから文句言うな!私なんか、食材切らなきゃなんないし、椎名さんに関しては焼き加減とかも見ながら神経使うことしてんの!邪魔しないで!」

 「「は、はい……」」


 精神が限界だったのだろう。鐘梨がキャラにもなく叫んで男子たちに喝を入れる。その姿はいつもの根暗な姿からは想像ができないほどの凛々しさがあった。

 普段からそうしてればいいのに……って、元は根暗だからこれくらい追い込まれないと無理なのか。


 そんな鐘梨の怒号も教室内の喧騒にかき消されたのか、どの客もこちらを見ていない。まあ、今は休日の昼間のフードコート並みにうるさいからな。

 誰の声も通らないのは普通だろう。


 それからは、すさまじい足で客を入れ、食わせたら追い出すを繰り返し、文化祭お決まりのナンパが一切起きないというなんとも言えない状態ができたが、そんなことを気にする人はいなかった。


 休憩時間を迎えても、昨日と同じで一切動けなくなり、全員ゾンビのごとく倒れ伏せた。―――体力お化けの俺と玲羅と美織を除いて。


 「み、みんな大丈夫か?」

 「まあ、大丈夫じゃない?みんな、再開を16時に変更するわ。しっかり休みなさい」

 「死ぬかと思った……」

 「翔一がこんなにボロボロになってるところ、見たことないぞ……」

 「そうかしら?結構いつも見る感じじゃない?」

 「もう少し俺を労わって……」


 そう言って、俺はボロボロになりながらも昼食のために校庭に出ている屋台に玲羅と一緒に向かっていった。


 その道中は、玲羅に肩をかりて彼女に寄り添うように歩いていたが、なぜかほかの人の注目がすごかった。そんなに珍しいか?こういうカップルはそこら中とは言わなくても、それなりにいるはずだが……


 「あれ、翔一じゃん」

 「あー、玲羅だ!いつも通りラブラブだね!」

 「……お前らもな」

 「なんか翔一、ボロボロじゃね?」


 屋台の中で出会ったのは、久しぶりに見る顔―――徹とその彼女の奏遥だった。

 こいつらもラブラブみたいで、りんご飴を食べながら手を握っている。


 まあ、この二人になにかケチをつけるつもりはないのだけれど……


 「翔一は、かくかくしかじかで……」

 「ごめん天羽さん、かくかくしかじかじゃ何もわかんないよ……」

 「ダメか……」

 「いや、リアルに言ったらなにもわからないって……」


 その後、玲羅が簡潔に俺の状況を話してくれた。それを聞いて徹は―――


 「ぷ、アハハ!!やっば、面白すぎだろ!」

 「よし、お前の親友やめるわ」

 「ま、待て待て!そりゃ、翔一みたいなイケメンが料理できるんだったら、それなりに話題になるだろ。どうせ、空中切りとかしたんだろ?」

 「……やった」

 「ほらな!注目されないわけないじゃん!」


 そう言って俺の事を笑う徹。よし、こいつとの親友は考え直そう。


 俺はそう決心して徹たちと歩き始める。というより、あいつらがついてくる。


 「なあ、悪かったよ。機嫌直してくれよ」

 「ヤダ」

 「えぇ……天羽さんからもなんか言ってやってよ」

 「いや、これに関しては蔵敷が笑いすぎだと思うのだが」

 「そうだよ、徹君が笑いすぎだよ」

 「やっべ、俺の味方いねえじゃん」


 俺を笑いまくった徹は、その場にいた女子に冷たい扱いを受けていた。まあ、奏は面白がって便乗しているだけだと思うけど。


 しかし、俺もそんな本気で怒ったわけではないので―――というより、今は教室に来ない馬鹿どもに対する怒りが大きい。


 「二人は俺たちのクラスの出しものに来るのか?」

 「いや、俺たちは翔一の友人だし、頼めば家に行った時でも作ってくれるでしょ?」

 「図々しすぎだろ……まあ、作るけどさあ」

 「聞いた感じ死にそうなほど忙しいんでしょ?だったら、俺も遥も行けねえよ」

 「え?私、行きたかったんだけど……」

 「「マジ?」」

 「マジマジ。玲羅はいいかな?」

 「わ、私はかまわないが、ここで食べようとするとお金がかかるぞ?」

 「いくら?」

 「当初は500くらいのつもりでやってたんだが、あまりにも人垣過ぎて混雑緩和のために―――1000円に……」

 「「高っ!」」


 そうして徹と奏は泣く泣くうちに来るのを諦めるのだった。―――賢明な判断だ。

web作家の難読漢字使う風潮なんなん?ガチで蘊蓄とか読めねえよ。

俺が頭悪いのかわかんねえけどさ―――俺の漢検……必要ないからって言って3級からとってねえし

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