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二日目の始まりは起床から

 「んぅ……」


 眠い……


 私は今なにをしているのだろうか……


 ほとんど頭はさえていないが、目が覚めてしまった。

 しかし、なぜ私は一人で寝ているのだろうか?いつもは翔一に抱きしめてもらいながら寝ているというのに……


 今は何時かわからないが、まだ外は暗いままだ。


 昨日は翔一がクラスの女子たちにちやほやされていたから、すごく……嫉妬してる。

 自分でも面倒くさいと思うが、この気持ちはどうしようもない。


 クラスで孤立しているような状況だった翔一が、みんなに囲まれてちやほやされる。彼女として喜んであげればいいのに、どうしてもできない。


 やはり、彼を独占したいと思う気持ちが心のどこかに潜んでいるのだ。


 しかし、それで翔一を縛ってしまったら、たぶんこの先に私と翔一の関係はなくなる。彼だって男なんだ。たくさんの女子に話しかけられるのは悪い気はしないはず。

 それを自分勝手な理由でやめろなんて、言えるはずがない。


 だから―――せめて寝ているときの隣は誰にも譲りたくない……


 「んぅ……しょういち……どこぉ?―――あ、いた」


 私が周りをきょろきょろとすると、すぐ隣に彼は寝ていた。そうだ。一緒の布団に入れないから、せめて隣がいいと二人で言い合ったんだ。

 そうだ。ふふ、やっぱり私と翔一が考えることは同じだな。


 「むふふ……しょういち……」


 私はそのまま何も考えずに翔一の布団の中に入り彼を抱きしめた。

 そうすると、なぜか悪夢にうなされているように辛そうな顔が幸せそうな顔に変わった。


 そして、無意識なのだろうか。彼は、私を抱き返してくれた。

 ものすごく嬉しいが、起きていないだろうな?まあ、これはこれで……


 「幸せだなあ……」


 そうして私は眠りにつくのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 翌日


 ―――昨日の夜、なにか嫌な夢を見たような気がするが、いつのまにかそんな嫌な感じは消え去っていた。夢の中で、温かいものに包まれて、とてつもない安心感の中、俺は眠りについた。


 そこから夢の記憶なんてものはない。まあ、ぼやっとした感覚程度しか覚えていないのだが。


 しかし、周りが騒がしいな……


 そう思い、目を開けると―――


 「んぅ……」

 「……!?」


 鼻先がくっつくんじゃないかと思う距離に、玲羅の顔があった。

 綺麗な顔立ちをしている彼女は、なんとも無防備な表情をしており、少しだけ頬が緩んでいた。


 もしかして、寝ぼけて俺の布団に入ったな?


 そんなことを考えていると、ここが布団を敷いただけの教室だということを思い出した。


 「いつの間に……」

 「2人って、一緒に寝るような関係だったんだねー」

 「天羽さん、幸せそう……」


 クラスメイト達がいろいろなことを言ってくる。

 しかし、俺はそれを止めるために起き上がることができない。


 「んえへへ……しょういちぃ……」

 「玲羅、起きてくれー」


 現在、俺の恋人にがっちりとホールドされていて、ろくに動くことができないのだ。

 俺は体をよじったりして脱出を試みるが、それもむなしく玲羅は起きてくれない。


 どうしようかと試行錯誤しながら、クラスメイト達の言葉の恥ずかしさに耐えていると、ようやく玲羅が起きた。


 「ん……?あ、しょういちぃ……」

 「おはよう……さ、そろそろ俺を解いて―――ん!?」

 「れろ……」


 彼女が起きたと思えば、すぐにキスをしてきた。

 そうだったな。意識が完全に覚醒していない状態でなんどもキスしてきたよな。そうだったら、条件反射で起きたらしちゃうよな。


 クラスメイトがいるというのに、なにも気づかずに俺にキスをする玲羅は、いつもの家でするような熱いものを求めてくる。


 俺の口腔内を蹂躙するように舌で舐めて、最後に俺のものと絡めてくる。


 みんなはドラマで見るようなそんな熱いものを見せられて驚いていた。

 皆口々に、「あんな熱いの……」「ドラマでしか見たことない……」と言っている。


 そうして、俺がなにかをするわけにもいかず、ただなされるがままにしていると玲羅が怒った。


 「むぅ……どうして返してくれないのだ?いつもは、あんなにしてくれるのに……」

 「ちょっ、場所を……」

 「いつもは、あんなに目が覚めるような熱いちゅーをしてくれるのに。なんでしてくれないんだ!」

 「こ、声が大きい」


 周りを見ると、俺と玲羅の熱いキスを想像した輩が顔を真っ赤にしていた。

 うちって未経験多いの?


 ―――いや、今はそれを気にしてる場合じゃない。


 「ほら、玲羅。今日は朝早いから、髪梳かすよ」

 「むぅ……ちゃんとちゅーしてよ……」

 「はいはい、あとでな」

 「約束だぞ」


 そう言って、俺は彼女に後ろを向かせてカバンの中から櫛を取り出して、上から彼女の髪に通した。

 最初は気持ちよさそうに俺に頭を預けてくれていたが、段々と目が覚めてきたのだろう。


 自分のしでかしたことに気付いてきたみたいだ。


 「玲羅、なにも考えるな」

 「うぅ……寝ぼけてる私が憎い……」


 そう言う彼女の耳は真っ赤だ。

 だが、俺たちの横にはいまだに起きない女がいた。


 「すぅ……」


 布団を蹴って、あられもない姿を披露している女。ここまで寝相が悪く、起きない女なんざこの世に二人といるまい。


 ―――条華院美織。こいつはマジで起きる気配がない。


 つか、なんでこいつのパジャマ前が全部開いてんの?

 美織はブラもつけてねえから、ナマ乳が全開なんだが……


 「翔一、美織を見るな……」

 「ああ……でも、起こさないとだめじゃないか?こいつが、半分責任者だし」

 「そうだな……じゃあ、私が起こすから翔一はあっち向いてるんだ」

 「へいへい」


 玲羅は俺に髪を梳かしてもらって、すぐに美織を起こしに行った。


 「ほら、美織朝だぞ。男子たちが目のやりどころに困るから起きるんだ」

 「んあ?あー、もう朝なのね。あと5時間は寝ていたいわ……」

 「ダメに決まってるだろ!せめて5分だろうが!」

 「じゃあ、5分……」

 「しまった!起きろ!」


 二度寝に入った美織をなんとか起こそうと、玲羅は彼女をぐわんぐわんと揺らすがまったく効果を見込めない。

 代わりに、美織の巨乳がブルンブルン揺れるので、クラスの女生徒たちが嫉妬の目線を向けていた。


 仕方がないので、俺が美織を起こすことにした。


 「くっ……どうすれば……」

 「ちょっと俺に任せて」

 「み、見るな!」

 「別に玲羅以外の胸に興味なんてねえよ」

 「くっ、なんで翔一はナチュラルにそういうことを言えるんだ……」


 俺の言葉に玲羅は頬を染めながら胸を押さえた。

 いや、ここじゃ触んねえぞ?


 「おら、起きろ!」

 「痛い!?」

 「ほら、目覚めた。さっさとやるぞ」


 俺は容赦なく美織の眉間にチョップを入れて起こした。

 これをすると、玲羅以上に朝が不機嫌になる。まあ、それでも起きなかったこいつが悪い。


 というわけで、俺たちの文化祭二日目が始まった。

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