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ぶらぶら文化祭

 その後、明津はもう数枚ほど写真を撮っていき、その場を去っていった。

 玲羅はというと、写真で自分のデレを激写されてしまったことを大いに恥ずかしがっていた。


 「くぅぅ……もう少し周りを見るんだった!」

 「まあまあ、落ち着いて―――」

 「落ち着いてられるか!」


 そう言いながら、俺の胸の中で叫ぶ彼女。

 まだまだ恥ずかしさが抜けずに、誰にも顔を見られたくないようだ。


 きゅるる


 「はは、おなかすいてんだから、とりあえずこれを食べなよ」

 「くっ……私の腹の虫が憎い」

 「そう言わずに―――はい、あーん」

 「こ、これを毎回するのか?」

 「え?」

 「なんで、翔一が疑問形に変わるんだ!」


 言いながら抗議をする彼女だが、まったく俺から離れようとするつもりはないようで、ピッタリと俺と体がくっついている。

 こんな状態だと、彼女を抱きしめながら頭を撫でたい願望がこみ上げてくる。


 最近は、彼女の頭に触れると、なんだかよくわからないふわふわした気持ちになるのが分かった。

 まあ、好きだからなんだろうけど。


 これを玲羅が求めていることだと思うと、なおさらしたくなる。


 というわけで、俺は彼女の頭をゆっくりと撫でてみる。


 すると、真っ赤になっていた彼女の頬は徐々に朱色かな?と思う程度には落ち着いていき、いつの間にか彼女の表情もリラックスしたものになっていた。


 「玲羅って本当に撫でられるの好きだね」

 「悪いか?―――だが、翔一は女を沼らせてダメにする男だな」

 「また急に……」

 「家事ができて、頭もいい。その上にすごく甘い―――逆にダメにならない要素がないだろ。というか、この流れだと翔一って育児もできちゃうだろ」

 「い、いや……やったことないからわかんないけど。そこは二人で協力してやっていこうということで―――」

 「そうだな。このままだと、私は洗濯物を取り込むだけの存在になってしまう」

 「いいや、玲羅は俺の癒しの存在だよ」


 そう言って、俺は彼女をぎゅっと抱きしめた。

 俺の言葉に嘘はない。実際彼女を抱きしめているだけで、幸せな気分になれる。


 その後は、たこ焼きがなくなり、もう一度校内を見て回ろうということになった。


 うちの学校では焼きそば屋やメイドカフェなど王道のものがたくさんあった。

 うちみたいな変化球のようなクラスはそこまで多くない。


 そして、また一つ王道の出し物を発見した。


 「よし、お化け屋敷逝こう」

 「いこうがなんかおかしくないか?―――って、待て!私は行くとは言ってないぞ!」

 「ん?まさか、怖いのか?」

 「そ、そんなわけないだろ!」

 「じゃあ、問題ないじゃん―――あ、二人で」

 「翔一……なんでこういう時は強引なんだ?」


 そう文句をいう彼女だが、なんだかんだ離れたくないのか俺の腕にがっしりとしがみつきながらお化け屋敷の教室に入っていった。


 原作の設定で玲羅は怖いものが苦手とある。まあ、子供だましでもそれなりには可愛い姿を見せてくれるだろう。


 「翔一は私の好きなことを察してくれて―――というか、知っているのではないかと思うくらいの時があるな。良くも悪くも私を知り尽くしてる感じだ」

 「はは、そんなわけ―――」

 「だが、苦手なこともすぐに気付くからそこはちょっと―――」

 「嫌いか?」

 「そ、そうじゃない……ただ、手加減してほしいんだ。本当に私、こういうのが―――」

 「グアアアア!」

 「ひやあああああああああ!」


 いろいろと長々と話していた玲羅だったが、お化けが脅かしに来て声を出された瞬間、彼女は俺に飛びついてきた。

 しがみついたとか生易しいものではない。


 絶叫しながら、自身の腕と足を俺の体に回してがっしりくっついてきた。そんなことをするもんだから、彼女の体は俺にくっついているだけで、完全に地面から浮いてしまっている。


 「ひゃわわ……」

 「ビビりすぎでしょ……」


 原作でこんな怖がってる描写あったか?―――いや、まずまず玲羅イベントの中にこういうところに行くことがなかったな。公式設定であっただけで、作中に使われてるところを知らない。


 逆に、もう一人のヒロインの八重野は怖いものが大好きなキャラだったな。

 自分で廃ビルに突っ込んで周りを心配させるような、ある種の変人ヒロインだった。


 俺はそんなことを考えながら、玲羅を抱えて歩く。


 抱える際に手を下にやらなければならないのだが、先日に何度もぺしぺしした彼女のお尻に手が当たってしまい、思考を途切れさせるしかなかった。

 玲羅も玲羅で怖くて、自分のお尻に手が来ていることに気付いていないし、これは生き地獄だ。


 と、そんな風に気を抜いていると、下からぬっと手が飛び出してきた。


 「おわっ!?」


 完全に油断していた俺は、その手を避けるように足をあげて、思いっきり踏みつける。

 さすがに切断はされなかったものの、痛かったのか悲鳴とうめき声が聞こえてきた。


 「ぐえ……つぅぅぅぅ……!」

 「ひぇ……な、なんの声だ!?」

 「あ、今のはビビるところじゃない」

 「な、なにを言ってるんだ……」


 言いながら玲羅は俺に体を密着させてプルプルと震える。

 やめてくれ……あんまり揺れられると、その、お尻の肉感が……


 そのままある意味キツイ状態を切り抜けて外に到着した。


 その瞬間、彼女は俺の体から降りて、間髪入れずに俺に抱き着いてくる。


 もういっぱいいっぱいだった俺に訪れたその瞬間に、申し訳ないが困惑が勝ってしまった。


 「れ、玲羅……?」

 「すまない。ちょっとだけこの状態で頼む」

 「まあ、良いけど……」

 「翔一のせいだ……翔一がお化け屋敷に入るから」

 「嫌いになった?」

 「なるわけ、ないだろ!このくらいで嫌いになるほど、私の愛は軽くないぞ」

 「ふふ、知ってる。でもさ、場所は選ぼうぜ。もう、結構な人に見られてるわけよ。さすがの俺も恥ずかしいぜ」

 「じゃあ、場所を移そう……」


 そう言うと、彼女は俺を抱きしめた状態のまま移動を始める。

 後ろから押される形で、俺がたどり着いたのは―――俺たちがさっきまで地獄を見ていた教室だった。


 「ここなら、私たちの関係を見ても不思議に思うものはいない」

 「さっきと何が違うのかわかんないけど、まあ玲羅がいいならいいか」

 「っく……こうなるとしずらいな」


 そうは言うが、すでに俺にべったりな彼女はもうデレデレの恋人というものではないのだろうか?

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