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恋人の心の休憩所

 えー、玲羅が正座させられてます。

 もちろん、昨日の件についてです。ついでに俺も―――これは意味が分からない。


 昨日、玲羅が酒を飲んだことは一瞬でバレた。

 表から戻ってきた玲羅の両親が、開封された酒の缶を見たからだ。


 その場には、俺と玲羅と酒を飲めないおばあさんしかいなかったので、本当に一瞬でバレた。しかし、玲羅が怒られるのはわかるが、なぜ俺も?


 「で、言い訳は?」

 「ごめんなさい……つい。翔一に甘えたくて……」

 「はあ、やっぱり私の娘ね。でも、未成年でアルコールはダメよ。本当に女の子は体に負担をかけすぎると妊娠できなくなっちゃうのよ。しかも、できたとしても流産になるかもしれない」

 「……ごめんなさい」

 「翔一君も翔一君よ」

 「―――俺はなにで怒られてるんですか?」

 「なんで、玲羅が飲もうとしてるのを止めなかったの?」


 え?飲ませたと思われてるの?そうでなかったとしても俺が止めなかったと?

 それは大きな勘違いだ。


 「いや、気づいてたら飲んでたんですよ」

 「それでも怒ってあげなさいよ」

 「はあ……?」

 「玲羅もお酒は20になってから。それにアルコールの力をかりないと甘えられないなんて駄目よ。男にとっていい恋人って言うのは、素面でも愛してるって言える女なのよ」

 「……善処する」


 この前にもこってりと絞られるようなことはあったが、これ以上は彼女が可愛そうなので俺から触れない。


 その後は久しぶりの説教でかなり精神的に来ていた彼女は、俺の服の裾をつかんでうつむいていた。

 うん、申し訳ないけど可愛いな。


 ―――というわけで、いつものごとく、この家の俺たちのパーソナルスペースである寝室のご登場です。

 やはり、いつもの家では俺と玲羅と結乃しかいないから場所を選ばなくてよかったが、ここだとそういうわけにもいかないのが困ったところだ。


 「すまない……」


 玲羅は開口一番こう言った。

 だが、別に俺は謝られることだと思ってない。酒飲んだ玲羅にも魅力を感じたし、良いなと思ったのは事実だ。


 「別に俺には謝んなくていいよ」

 「だが、私のせいで……」

 「そう思うなら、未成年で酒飲むな。―――多少なら、玲羅のことに巻き込まれても悪い気はしないけどな」


 俺がそう言って安心させようとするが、それに反して玲羅は少し暗い表情になっていく。


 「私はそんなにダメな子か?」

 「ん?」

 「なんで、翔一は私を怒らないんだ?なんで、本気で叱ってくれないんだ?もしかして、私のことを正すのをあきらめてるのか?」

 「なに言ってんだ?」

 「だってそうだろ?いつも怒ると、あんなにオーラとか何もかもが怖くなるのに、私にはそういうことをしない。私は怒る価値もないのか?」

 「怒る価値……?」


 正直、その言葉の意味は分からない。ただ、ちゃんと怒ってほしい。

 その気持ちは少しだけわかるかもしれない。でも、俺はジジイたちに縛られて厳しくされて、たぶん根のほうは怒るのが嫌になってるだけだと思うんだよなあ。


 だが、玲羅はそういうわけでもないみたいだ。


 「翔一が本気で怒るのなら、頬を張っても、お尻を思いっきり叩いても、欲求のはけ口にしたって文句は言わない!お願いだ!ちゃんと私のことを怒ってくれ!」

 「……玲羅って、結構筋金入りのマゾだよね」

 「……!?」

 「言ってることも結構あれだけど、好きな人に怒ってもらいたい。そういう願望が見えてくる。でもさ、俺、大事な人を怒れないんだ。他人を―――自分の大切なものを傷つけられるのが許せないだけで、たいていのことは許せるつもりだ。だから、玲羅がダメな子とかじゃない。たぶんそういう雰囲気で玲羅が求めるなら、平気で罵声は吐けると思うけどね」


 大切な人ほど、「死ね」とか「クズ」とか言いたくない。これが普通の考えだと思う。ただ、大事な人を怒れるかは、人による。

 大事な人にちゃんとしてほしいから怒るか。もしくは、大事な人の癒しがある場所になりたいと思うか。それくらいの違いしかないと思う。


 「もう、玲羅はさ、早苗さんに怒られたから。俺の役目は玲羅を抱きしめて、慰めてあげることだけだよ」


 そう言うと、俺は普段とは違う、優しい抱擁をする。そのまま手も頭において撫でてあげる。


 「私は、もう少し翔一に厳しくされた方がいい気がする……」

 「しないよ。いつまでも玲羅が甘えられる場所。心の避難所であり続けるから。社会に出て、ストレスでおかしくなりそうなときに、俺を頼ってくれる。それがいいんじゃないかな?俺はこんなにかわいい子が好き好んで抱き着いてくれると思うと、嬉しいよ」

 「むぅ……ダメだ!翔一はダメ人間製造機だ。このままでは、本当に私が駄目人間になってしまう……」


 そうは言うが、彼女自身も俺の背中に腕を回して放そうとしない。

 むしろ、俺よりも腕の力が強い。


 俺としては、彼女は俺を心のよりどころにしてくれればいい。ずっと隣にいてくれれば、ダメになったってかまわない。

 ―――浮気は許さないけど。


 そう思っていると、彼女が俺の体を押し倒してくる。

 何事かと思うが、そのまま彼女は俺を巻き込みながら転がって俺を彼女に乗っかるようにしてきた。なされるがままにしていたが、これは一体?


 「甘えて、良いんだよな?」

 「ま、そう言ったな」


 玲羅の強力な上目遣いによって、一瞬俺の意識が飛んだが、そこはいい。


 「私に乗っかってくれないか?」

 「へ?いいけど、俺、結構重いよ?」

 「かまわない。来てくれ」

 「は、はぁ……?」


 あまりにも突拍子のない願いに、俺は驚いた。

 だが、彼女の願いと言うことで、俺は体重をゆっくりかけながら乗っかる。


 「んふ……」

 「あ、重いか?」

 「い、いや、これでいい。ふぅ、これが翔一の重み……」

 「ん?大丈夫か?」

 「ああ、こんなに気分がいいのだな……本当に私はマゾなのかもしれない……」

 「そんな確認の仕方ある?」

 「翔一、このままキスをしてくれないか?攻めるような激しいやつを……」

 「……わかった」


 そのまま玲羅のリクエスト通りにすべてをこなしていく。

 キスをせがまれ、胸を揉むことを頼まれて。かなりいろいろなことを頼まれた。

 本番こそはない。彼女自身も我慢しているのだろうが、それだけは仕方ない。できることなら彼女の頼みは全部聞いてあげたい。


 「最後に一つだけいいか?」

 「なんだ?」

 「お尻を叩いてくれないか?」

 「また、ずいぶんマニアックなことを……まあ―――行くよ」

 「ああ」


 パチンッ


 あんまり強くはしなかった。

 抱き着いている玲羅の後ろの下側―――腰のくびれから下にある丸っとしたものを音が出るくらいの強さで張った。


 張った瞬間、彼女の体がビクンと震えて、俺に回す腕の力が強くなる。


 「あひゅっ……」

 「大丈夫?」

 「……これが、か。すごいな、本当にゾクッと来た……」


 ああ、もしかして玲羅が変態っぽくなったのって美織のせいなのかな?


 そう思いながらも、俺は彼女の変態的なリクエストも簡単に受け入れてしまうのだった。

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