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看病される側

 翌日、目を覚ますと、隣で玲羅が眠っていた。

 すやすやと眠っている彼女のほっぺをつついていると、起きてしまった。


 「……おはよう」

 「……む、なにをしてたんだ?」

 「いや、ほっぺをつんつんしてた」

 「本当になにをしてるんだ?」

 「いやあ、寝てる姿が可愛いなあって」

 「……私はもう動じないぞ」

 「嘘だあ。顔真っ赤だよ」


 そう言うと、彼女はふいっと顔をそむけた。だが、玲羅の耳も真っ赤なので本当に無駄なことを。

 ―――いや、いたずらのチャンスか?


 そう思った俺は、すぐさま彼女の耳をつまんでみる。


 「うひゃあ!?」

 「ふわっふわ……」

 「なに言ってるんだ!」

 「玲羅、体中が柔らかいな。どこ触っても、ぷにぷにとかだわ」

 「もう何言ってるのかわからないな……」


 そうは言うが、彼女も嫌ではないのだろうな。まったく反抗の意思が見られない。

 それどころか、少しずつ彼女の頭が俺のほうに近づいてきている。


 その意味をくみ取った俺は、捕まえるように玲羅を抱きかかえて、自分の上に乗っかるように抱え上げた。


 「そ、そういうことじゃない!」

 「え?違った?」

 「いや、これもこれでいいのだが……」

 「玲羅は身も心も、俺に堕ちてるのだー」

 「なんか、翔一の空気がおかしくないか?」

 「うへへ、玲羅が3人いる―」

 「待って!本当にどうした!?」


 俺の行動を、異常ととったのか、玲羅は自身のおでこを、俺のに当ててきた。


 「すごい熱じゃないか!」

 「えー、熱?そんなことないよお」

 「ヤバい、翔一って熱出すと、こんなにかわいくなるのか……」

 「うへへ、玲羅、ちゅーしよちゅー」

 「ん……これでいいか?とりあえず、薬を飲もう」


 彼女は一度リビングに消えると、奥から薬と水をもって戻ってきた。

 正直なところ、彼女は俺に熱が出ていると知って、かなり焦っているようだ。


 そんな感じはしないんだけどなあ。


 ただただ、玲羅に甘えたい欲が出てきてるだけなんだけど……


 「うーん……まずはご飯だよな。―――たしか、昨日の残りの肉が……ダメだろ!こういう時は消火にいいもの……そうだ!裏に長期保存用の米があったはず!」

 「玲羅ぁ……ぎゅってしよー。もっとちゅーしよー」

 「くっ、可愛い……だが、我慢だ!ご飯作ってきたら、甘えていいから。ちょっと我慢しててくれ」


 そう言うと、彼女は寝室からキッチンに向かい、料理を始めていた。

 俺も手伝おうとするが、体が思ったように動いてくれない。


 玲羅、寂しいよ……


 しばらくすると、彼女が寝室に戻ってきた。


 「ほら、翔一起き上がるんだ―――んっしょ、と」

 「もっとぎゅーっとして……」

 「もう……ほら、満足か?」

 「ぎゅー」


 彼女は、俺のことを抱きかかえながら上体を起こしてくれる。それに乗じて、俺も玲羅にぎゅっと抱き着き続けてみる。すると、彼女は可愛いものを見るような目で、俺の背中に腕を回してくれた。


 ヤバい。玲羅が愛おしい……


 「ほら、翔一。口開けて―――あ、あーん」

 「あーん」

 「くそっ、可愛すぎるだろ!」


 そう悶絶している玲羅が持っていたのはスプーン―――?それに乗ってるのは、お粥?誰が作ったんだ?


 そう思うと、すぐに答えは出てきた。


 「玲羅が作ったお粥?」

 「ああ、そうだ。おいしいか?」

 「おいしいよ。どんなシェフに作らせたものよりもおいしいよ。玲羅の愛情が詰まってるからかな?」

 「つ、つま……てるよ!詰まってるよ!私の愛情!」

 「あはは、玲羅真っ赤―!」

 「くっ、誰のせいだと……」


 そんなこんなで、俺は玲羅の作ったお粥をすべて食べた。

 それは、とてもおいしくて、脳が蕩けてしまいそうだった。


 やっぱり、自分が作るより玲羅とか好きな人が作ってくれる料理は格別だ。もしかしたら、玲羅も同じことを思ってくれてるのかな?


 「玲羅は……俺の料理を、おいしいと思ってる?」

 「ああ、もちろんだ。本当に、毎日作ってくれて、幸せだぞ」

 「そうかあ……幸せかあ。俺はキスしてる時が一番幸せかなあ」

 「じゃあ、するか?」

 「うん」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 本当に翔一が可愛くなった。


 熱を出して正気を失っているせいなのか、それとも本性が現れてしまったのか、いつもは絶対に見ない―――いや、なんだかんだいつもの翔一っぽいところはあるが。なかなか見れない姿を拝むことができた。


 本当は体調の悪い人にキスとかはしないほうがいいのだろうが、どうしても我慢できなかった。


 とろけるような、甘い舌使い。もう、私はメロメロなんだろうな、どうやってもごまかしようのない、翔一が大好きな乙女になったんだ。


 キスを終えると、彼はすやすやと眠り始めた。

 なにげに起きているだけで体力を使っていたのだろう。


 「すぅ……」

 「ふふ、翔一……」


 可愛い翔一。初めて見たが、すごくよかった。

 こうして熱を出しても、私にくっつこうとしているのを見ると、心臓が締め付けられるような感覚になる。


 だが、決して嫌な感じはしない。


 きゅっと締まる感じなのだが、なんだか心地の良いもの。なんていうのだろうか、愛してると実感できる?そんな感じだ。

 私もこういうのは初めてだから、なんとも言葉に表しがたい。


 でも、初めての相手が翔一で、私は幸せ者だ。


 高校で付き合って、まともに結婚まで行けるのは中々難しいものだろう。わずかなすれ違いとかで大変なことになる。

 でも、私は翔一をものすごく愛してるし、信用してる。


 よくよく考えたら、完璧で一途な人なんてそう、いないだろう。そんな風に考えると、運がよかったのかなんというか。


 翔一との出会いを運にはしたくないが、あの時傘をさしてくれなかったら、たぶん私は悪い男に引っかかってたな。簡単に家について行ってしまうほどだからな。今考えると、うかつではあったかな?

 でも、翔一だからよかったな。


 「んぅ……れいらぁ」

 「もう……甘えたがりなんだから」


 寝ながら、私の名前を言う翔一に、いつも私をよくしてくれるお礼に、できることはないかと考えた。

 だが、これがなかなか難しい。


 なんせ、私にできることが抱きしめるくらいしか思いつかないのだ。翔一ならアブノーマルなことも思いつくんだろうが、どうしても普通以上の発想が出てこない。


 だが、悩んでていても仕方ないので、とりあえず翔一を抱きしめる。


 「んぅ」

 「く、苦しいのだろうか?―――こういう時、自分の胸が恨めしいな……」


 抱きしめると、少し翔一は苦しそうにした。

 なぜかと言えば、自身の胸に顔をうずめる形になってしまい、呼吸がままなっていないのだろう。


 なら、少し恥ずかしいが……


 私は、そのまま翔一を上にずらしていった。胸にこすれる感覚とかで、一瞬意識が飛びかけたが、どうにか繋ぎ止めた。

 すると、私の目の前に翔一の顔が来た。


 こうすれば、翔一の顔を埋めることはなくなる。

 ただ、ちょっと私が理性を保てる気がしないな。なんだろうか、いつしか、私も美織の影響を受けてしまったのかな?

 少しだ。少しだけ―――翔一を襲いたい気分になってしまう。


 この後、私が我慢できたかは秘密にしておこう。

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