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環血脳黒虫

 見合いの結果を見て、俺はすぐに彼女の祖父母の家に戻った。


 寄生されているとはいえ、相手は老体だ。それに、この感じだと、この田舎の大半が寄生されている可能性がある。


 今は縛りこそはしていないが、部屋の幽閉しているような状況だ。


 飯とかは俺が作っているので、問題はないが、玲羅の両親―――特に早苗さんがあまりいい顔をしていない。

 必要なことと納得はしてくれているが、それでも自分の親がこんな扱いを受けていれば思うことはある。


 だからこそ、責任もって四六時中様子を見ているのだが……


 そうして過ごしていると、段々と眠気が襲ってきて、珍しく俺がうとうとし始めた。


 「眠い……」


 そんなことを呟いていると、ドタドタと玄関のほうから足音が聞こえてきた。


 足音は、まず俺たちの荷物が置いてある場所、リビング、台所。と、いろいろなところのドアを開けていき、最後に俺のいる祖父母の寝室に来た。


 「翔一!」

 「どわあ!?」


 来たのは、見合いを終えて、まだ化粧とかもしている玲羅だった。着物もしていて、こんなきれいな姿をほかの男に見られたと思うと、少し悔しい気分になる。


 「見合い、断ってきた!」

 「知ってるよ」

 「翔一が大好きだ!」

 「俺もだよ……」

 「だからさ―――」


 俺のことを抱きしめる玲羅は、突然真面目な顔になった。

 まあ、俺もそろそろかなとは思ってた。


 「ちゃんと説明してくれないか?私の祖父母になにが起きているのか……」

 「ちゃんと話すよ―――でも、最初にこれだけはわかっておいてほしい」

 「なんだ?」

 「この事実は、二家とそこに直接的なつながりを持つ者にしか教えられない。つまりな、これを玲羅に教えるということは、二家の一員になる。つまり、玲羅が二家の宗家でも分家の誰でもいいけど、その人たちと結婚しなくちゃなる……」

 「そんなことは問題じゃない。だって翔一がいるんだろう?私とお前は、最後まで一緒にいると決めたんだ。お前の背負ってるものを少しだけ共有させてくれ」

 「なら、教えられるな。心して聞いてくれ―――」

 「ああ」


 俺は今起こってることを話し始めた。


 「最初に、相手の目的は何かわからない。これだけは知っておいてくれ

 ―――ここからが本題なんだが、玲羅の祖父母は二家が生み出した、寄生虫に寄生されている」

 「なっ!?」

 「驚くだろう?俺もだ。本来、こんな一般の田舎で―――都市でもだが、そんな技術を島の外に出すのは本来ご法度だ。だから、起きてちゃいけないんだ。でも、なぜか祖父母は寄生されている。確認はしていないが、こうなると田舎の全体に寄生が進んでいる可能性がある」

 「そんな……治す方法は?」

 「巣を破壊すること。それだけだ」

 「じ、じゃあ破壊すれば―――」

 「俺もこの資料を最後まで読んだわけじゃない。ただ、この虫がいること。寄生されたらどうなるのか、その情報しか与えられていない。その状態でピンポイントで巣を当てるのは難しい。特に今回の場合は、数撃てば当たるというやり方ができない。寄生先が、今回のように老体じゃなく30代くらいの体なら法力を流し込む負担に耐えられるし、手術もさほど苦労しないはずだ。でも―――」

 「高齢の体には、どちらも負担が大きいと?」

 「ああ……破壊すれば、人工の虫だ。地に溶け、害はなくなる。だが、その破壊までが容易じゃない。老体ともなると、手術ではなく、俺の法力をドンピシャで当てて破壊するほうが、切開の必要がない分負担が軽い。ただ、そのピンポイントを一発で打ち抜かないと、それ以上は危険な負担になる。しかも、この虫の厄介なところは、タイムリミットが存在することだ。虫は寄生先の精神と体を同時に食い荒らしていくんだ。だから、早めにしないと破壊しても間に合わない場合も考えられる」


 情報がない以上、俺は何もできない。そう言うと、玲羅は少し絶望したような表情を見せた。

 だが、俺は彼女にそんな顔をしてほしくない。


 「そんな……おじいちゃん、おばあちゃん」

 「大丈夫だ。リミットは確かにある。でも、なんとかする。玲羅の祖父母に曾孫の姿まで見せてあげよう?」

 「っ!?―――それって……」

 「みなまで言うな。もうわかってるだろ?俺の心がどこにあるか。なんで俺が、一つも知らない田舎を助けるか。―――全部、玲羅の笑顔のためだよ」

 「翔一……!」


 感極まった玲羅が、俺のことをさらに強く抱きしめてきた。

 今度は、先ほどの純粋な愛だけではなく、願いのようなものもこもっていた。


 ―――大丈夫。絶対に玲羅を幸せにするから……

 君を、もう雨の中で泣かせない。


 「そういえば、おじいちゃんとおばあちゃんは?」

 「睡眠薬で眠らせてる。さっき気づいたんだが、睡眠薬を飲ませると、食い荒らしの進行も幾分か止まるらしい」

 「本当か!?」

 「まあ、薬自体は飲ませすぎちゃいけないけどな」

 「ありがとう、翔一……」


 そう言って、玲羅はもっとぎゅっとしてくる。

 それのせいか、彼女の体温がじわっと伝わってきて、俺の体に心地よい体温が流れてきた。


 やばい、眠気が……


 俺の眠気に気付いた彼女は、俺の顔を覗き込むように見てきた。


 「翔一、大丈夫か?」

 「ちょっと、睡眠不足が……」

 「じゃあ、私の膝でも腕でも枕にしてくれ―――その……む、胸でも」

 「恥ずかしいなら、そんなことしなくてもいいんだぞ?」

 「っ!いいから!早く寝ろ!」

 「おわあ!?」


 自爆した玲羅は、少し顔を赤らめながら俺のことを抱きしめながら倒れこんだ。

 そんなことをされたら、余計に眠くなるもので―――


 「すぅ……」


 すぐに俺は入眠した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「すぅ……」

 「ね、眠ったか?」


 私は、翔一から信じがたい話を聞いた。私の祖父母が大変なことに……

 それはわかっているつもりだが、なんだろうか―――翔一の寝顔を見ていると、いっぱい翔一にしたいことができてしまう。不謹慎かもしれないが、この気持ちをどうしても抑えられない。


 彼が眠っていることを、頬をつついてみたりして確認し、行動に移した。


 抱き合っている状態を利用して、私は翔一の体を自分の上に置いた。

 体格の関係上、重く感じるかな?と、思ったが案外、苦しくはなかった。


 そのまま私の体の上に来た彼をどうにか操作して、頭が私の胸の上に来るようにした。


 私の胸が―――お、おっぱいが潰される感覚。苦しいような、幸せなような。これがどういう感情なのかは、まだわからない。

 でも、本当に翔一は体の関係を迫ってこない。ちょっと、私が不安になってしまう。


 だが、それくらい大切にしてくれているのはわかる。もう、寝ている間に、私がいたずらするくらいで最近は満足できるようになってきている。翔一が迫ってくるのを待つだけだ……

 まだ、ちょっと恥ずかしいけど


 「んぅ……」

 「ん?―――ぁん……」


 情けない声が出てしまった……


 彼が寝返りをしたことによって、彼の頭と私の胸がこすれた。すると、なんとも理解しがたい感覚が私を襲った。

 くすぐったいような、気持ちいいような。それでいて、鈍い痛みのようなもの。比率的には6:3:1と言ったところだろうか?


 だが、翔一が目覚めるころには、私の息は絶え絶えに、彼の言葉だとものすごく色っぽくなってしまっていることを、私は知る由もなかった。

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