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特別SSver2 バレンタインチョコを渡そう

 序章


 今日は2月14日。

 バレンタインという青春の一大イベントを前に、男子たちがそわそわしていた。


 かくいう俺は、たいして興味のないイベントだった。


 なぜかと言えば、ホワイトデーがめんどくさいし、好きでもない人に本命チョコを渡されると非常に困る。

 まあ、金目当てのビッチばっかだけど。この学校で金持ってることはあんまり言ってないから、そう言うことにはならないだろうけど。


 それに、毎年毎年、美織のチョコにおびえなくちゃならなくなる。


 一昨年がリアルおっぱいチョコで、去年がマ〇コチョコだったか?


 今年はチ〇コだな。もう、わかるわ。この流れで普通のが来ても―――いや、あいつは普通をやるような奴じゃない。


 そんな感じではぁはぁため息をしていると、美織と玲羅が一緒に登校してきた。


 「悪いわね、玲羅をさらっていって」

 「なにも言ってないだろ?」

 「あら?嫉妬してくれてないって」

 「そうか……」

 「しましたー!すっごくしてましたー!」

 「すごい棒だ……」


 正直、バレンタインとか関係ない、いつも通りの会話だった。

 だが、クラスの奴らは彼女たちがしゃべるたびにドキドキしていた。


 中身はあれでも、見てくれは美人の美織。普通に綺麗な玲羅。


 俺がいて、可能性はないとわかっていても、期待してしまうものだ。


 「翔一、今日、あなたの家に何人か押しかけてもいいかしら?」

 「いいよ、どうせ毎年やってんだから」

 「そうね。今年もみんなでチョコを渡すのよ」

 「なーんか、そのニュアンスおかしくない?男が俺だけみたいじゃん」

 「そうね、蔵敷はいるわ」

 「すぅ……いつものメンバーじゃないか」


 俺たちは、入学当時より他のクラスメイト達からの畏怖の感情はなくなってきていたが、交友関係そのものはなにも変わらなかった。


 二人が、高嶺の花すぎて話しかけづらいんだろう。


 だからこそ、話しかけてくるのは、変人記者明津だけなんだよな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ―――明津の場合


 新聞部の明津は、昼休みに美織に呼び出されていた。


 指定された時間より早く来た明津は、少し壁によっかかりながら美織が来るのを待った。


 「ったく、こんな日に、お嬢様はなんの用なのでしょうか……」


 明津は、美織を嫌っている。いや、表面上は―――と言ったほうがいいだろうか?


 (私の取材の邪魔ばかり。それどころか、椎名君の取材をするときは、必ずと言っていいほど近くに彼女がいる。その上に、目が合うたびに、こちらをからかってくる。いけ好かない方ですね。初対面の時もあまり好印象とは思いませんが。

 ですが、なぜこのような日に……まさか、バレンタインチョコ?)


 「って、なんであの女にチョコを渡される想像を!」

 「あら?私が渡すのが、そんなにおかしいかしら?モテ男さん」

 「あれは、みんなが私のお金が欲しいだけですよ」

 「そうかしら?そうじゃない女も案外近くにいるかもしれないわよ?」

 「まるで、自分がそうみたいな言い方ですね」

 「なっ!?そ、そんなわけないでしょ!」

 「―――ですね。私もあなたのような女は願い下げです」

 「むかつくわねえ」

 「で、用とは?」


 明津がそう単刀直入に聞くと、美織はポンと小袋を投げつけた。

 彼が、それをぎりぎりでキャッチすると、質問した。


 「これは?」

 「今日はなんの日?」

 「バレンタインですが……」

 「そういうこと」

 「本当に渡してくるんですか……」

 「癪だけど、そうね」

 「ありがとうございます」

 「そうね、ありがたく食べなさい」


 そう言うと、美織は明津に背を向けて去っていくのであった。

 はたから見ると、仲の悪い二人だが、腹を割って話し合えば意外と相性はいいのかもしれない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 椎名&蔵敷の場合


 「ハッピーバレンタイン!はい、徹君」

 「ありがとう、遥。なんだかんだ、チョコもらったの初めてだな」

 「お母さんからもらったことないの?」

 「いや、ノーカンでしょ」


 すっかりと俺の家にいることに慣れた二人は、俺たちがいることに対して興味を持たずにイチャイチャし始めやがった。


 そんなことよりも大事な玲羅からのチョコは、彼女がもじもじし始めて、もらえていない。


 「し、翔一……気に入ってくれるか、わからないが……」

 「おう」

 「ち、チョコ……あげる」

 「ありがとう、玲羅」


 訂正。今しがたもらった。


 玲羅に渡されてからすぐに、ラッピングとかをとると、かわいらしいハート型のチョコが何個か入っていた。


 「そ、その、柄にもなくハートはダメだったか?」

 「すっごくかわいいな。一つ、冷凍保存しておくか……」

 「ま、待て!全部食べろ!」

 「いやあ、もったいないじゃん。彼女が恥ずかしがりながら渡してくれたチョコだよ。毎年一個ずつとり置いておこう」

 「ま、待つんだ……」


 俺が本当にチョコを冷凍保存しようとすると、クイっと服の裾を彼女につかまれた。


 「全部……ちゃんと食べてくれ……」

 「はい、食べます」


 そう言うと、俺は玲羅に渡されたチョコをすべて食べた。

 一気に行ったわけじゃない。ちゃんと味わった。


 「うん、甘くておいしい」

 「そうか。よかった……」

 「ほら、翔一!私からもチョコあげるわよ!」

 「いや、お前のは遠慮しておく」

 「なんでよ!」

 「翔一、賢明な判断だ」


 チョコを食べて、甘い雰囲気を出していると、それをぶち壊すかのように美織が割って入ってきた。

 過去の例から、こいつがろくなことをしないのはわかりきってる。


 「受け取りなさいよ!正真正銘の本命をよ!」

 「いやだなあ……玲羅がいるのに、本命を渡されるのも困るのに、お前のチョコは毎年困らせてくれるからな」

 「お兄ちゃん、みお姉がかわいそう!」

 「椎名君、サイテー」

 「翔一、お前がそんな男だとは思わなかった……」


 俺がチョコを受け取らないことに、玲羅以外の全員が責めてきた。

 結乃、お前は知ってるだろ―――いや、こいつはふざける側か……


 「翔一、正直これは……」

 「ああ、開ければいいんだろ?玲羅もそんな顔すんな。中身どんなだった?」

 「そ、その……///」


 玲羅が恥ずかしがるもの―――


 チ〇コだな。開けたくないよお。


 そう思うが、仕方なく俺は美織に渡されたチョコの箱のラッピングを開けた。

 すると、箱にはしっかりとデザインが施されていた。


 「なになに?極太ディ〇ド―――ぶっ殺すぞ」

 「なによ、パッケージでふざけただけじゃない!」

 「中身もだろ!ほとんど、想像と変わんねえじゃねえか!」

 「うっさい!」


 そう言って、中身を空けることを強要してくる美織。


 箱を開けると中には、寒天が粗目に削られて直視するのが難しい―――いや、言葉を飾るのはやめよう。

 完全にモザイクのかかったチ〇コが出てきた。


 無駄にリアルすぎて、反応に困る。


 「これは?」

 「名付けて、AVチ〇コチョコよ!食べ方は、上からしゃぶる感じで……」

 「……!」

 「す、ストップ!翔一、食べ物を投げちゃだめだ!」


 俺は、玲羅に止められていなかったら、容赦なくチョコを床に叩きつけていたと思う。

 だが、止められて、食べ物を粗末にしてはいけない。そう言われたら、食べるしかないじゃん。


 「たべりゃ、いいのか?」

 「そうよ、食べなさい!本命なのよ」

 「本命の相手に渡すようなチョコじゃないんだけど?」

 「うるさいわね!食べなさい!この完璧な陰茎を!咥えるように!」

 「マジで嫌なんだけど……」

 「し、翔一、お前が嫌なら私が―――」

 「食べます。食べますから、玲羅も頬張ろうとしないで……」


 俺がうじうじしていたせいで、玲羅が美織の魔の手にかかりそうになったので、俺は泣く泣くチョコの先端をかじった。


 口に含んだ亀頭チョコは、見た目に反し甘かった。まあ、チョコだから当たり前なのだが……

 だが、後味は―――


 「なんで苦いんだよ……そこのリアルはいらねえよ

 ―――そういえば、去年のチョコはしょっぱかったな……」


 棒状のチョコの中心には、カカオパウダーだろうか?ほんのり苦かった。

 まじでいらない……


 「よかった……最後にチョコケーキ残しておいて……」


 こうして俺は、心もなにもかもズタボロになりながらも、美織のセクハラから耐え抜き、チョコケーキをみんなにふるまって、今年のバレンタインを終えた。


 感想?

 玲羅のチョコ、マジ最高!―――以上!

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