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特別SS バレンタインチョコを作ろう

シリアスやってるんで、ここで中和剤を……

 今、私は美織の家にいる。


 その場にいるのは、美織はもちろん、結乃や奏がいる。

 私が今まで仲良くしてきた女子が集まっている。


 なぜこのメンツで集まっているのかというと……


 「今日は2月13日。全員、なにが目的でここに来てるかわかってるわね?」

 「美織さん、御託はいいから作ろうよ!」

 「―――そうね。私もこのテンションの維持がだるくなってきたわ」

 「それでこそ、みお姉だよ!」

 「もう嫌だ……この三人」


 私たちが集まっているのは、美織の言う通り、2月13日。

 明日は、私と翔一が付き合って初めて迎えるバレンタインデーだ。


 だから、私が翔一へのサプライズのために、美織に頼んだのだが、彼女も私と同様にチョコを作るつもりだったらしいので、せっかくならとこのメンバーがそろったというわけだ。


 翔一たちと出会って、早くも1年が経った。


 このメンバーで会うのも、ずいぶんと慣れたものだ。


 だが、三人の下ネタムーブやアホムーブには、いまだについていけていない。

 翔一は、あんなのについていく必要はない。と、言ってはくれるが、私は翔一になんの気遣いもなく、下ネタを言って馬鹿やりあえる美織みたいな関係性も、少しうらやましいので、困りどころだ。


 「玲羅は翔一に本命を渡すのよね?」

 「なっ!?―――そうだよ。なにか悪いか?」

 「いいや、私もそのつもりだし」

 「な、なに?美織も翔一に本命チョコを渡すのか?」

 「好きなのは変わりないからね。まあ、もう何年もフラれっぱなしだから、不安にならる必要はないわよ」


 そう言って、チョコづくりの準備を始める美織。

 本人は何でもないことのようにしているが、私には理解できない。


 「美織は、辛くないのか?」

 「なにが?」

 「そんなにもアプローチしているのに、選んでくれないことが……」

 「そうねえ。昔は思うところはあったわ。でもね、漫画の主人公みたいに優柔不断にされるより、ちゃんとはっきり断ってくれてるのはわかってるから、今はもう自己満足みたいなものよ」

 「それで、いいのか?」

 「あら?私が寄こせって言ったら、くれるのかしら?」

 「あ、あげない!」

 「そういうことよ。人の彼氏を奪う気もないし、私と翔一はこの距離感が心地いいのよ。それに、一番つらいのは選択を強いられてるあいつのほうよ」


 正直、私としては、美織みたいなスタイル抜群の金髪美少女が翔一と仲良くしているのを見ると、モヤモヤするから、本命とか渡すのは勘弁してほしいのだが……


 そんな考えが表情に出ていたのだろう。

 その場に立ち止まっていた私を、美織は注意した。


 「ほら、玲羅も早く作りなさい。ちゃんとしたのを作らないと、翔一に負けるわよ」

 「へ?どういうことだ?」

 「翔一って、根っからの甘党だから、自分でチョコ作るのよ。って言っても、すごいでかいチョコケーキだけど」

 「そ、そうなのか?」

 「毎年、あいつのケーキを食べて、私たちのを渡すのが流れよ」

 「じ、じゃあ、頑張らないとな……」

 「そうよ、さっさとしなさい。あの二人、見てみなさいよ」


 そう美織が言うと、私の視線は二人で仲良くチョコづくりをしている奏と結乃に行った。


 「徹君は、あんまり甘いもの食べないから、少し苦めにしようかな」

 「私は、甘いのを作ろ!先輩、喜んでくれるかな?」

 「絶対喜んでくれるよ!結乃ちゃん、可愛いもん!」


 楽しそうに和気あいあいと作っているさまを見て、私も翔一に思いを込めないといけないなと思い、美織とともに作り始めた。


 ―――の、だが。


 「うーん……この段階で潮を入れようかしら」

 「塩か?しょっぱくならないか?」

 「それもそうなのだけど、水分量が変わっちゃうから……」

 「水分量?水は入れないだろ?」

 「なに言ってるのよ。潮をいれるのよ?」

 「塩だよな?」

 「潮よ」


 何か違う気がする……


 塩を入れたチョコというのは聞いたことあるが、そんなに難しいのだろうか?

 スタンダードなチョコしか作れない私にとっては、わからないことだ。だが、思えばこの時点で止めておくべきだった。


 「悩んで仕方ないし、入れるか」

 「そうか……って、なんでボウルを床に置くんだ?」

 「なんでって、潮を入れるのよ」

 「すぅ……私の知っている入れ方では、床に置く必要はなかったはずだが?」

 「結乃!上の私の部屋に、ソロ用のローターがあるわ!とってきて!」

 「わかったー!」


 しばらくして、結乃が戻ってきて、その……口に出すのが恥ずかしいのだが、美織はおもむろにスカートをまくり上げ、パンツを脱いだ。私から、特になにか見えているわけではないが、おそらくボウル目線だと、大事なところが見えているだろう。


 そして、ブィィィン!と起動したローターを股のあたりに近づけていき―――!?


 「なにしてるんだ!」

 「だから、潮を入れるのよ!」

 「そういうことか……絶対にやめろ!」

 「なによ!爪とか髪よりマシでしょ!」

 「同じくらい駄目なやつだ!というか、彼女の前でやることじゃないだろ!」

 「ちぇっ、おいしいと思ったのに……」

 「おかしい……論点がおかしい」


 今の一連の問題を、私はおいしいかおいしくないかで判断したと思われているのだろうか?

 だとしたら、この上なく心外だ。私は、翔一のために止めたんだ。


 それからは、私が止めたおかげで、翔一のチョコに異物が混入することはなかった。


 「そういえば、美織は明津に渡すのか?」

 「……そうねえ。かわいそうだから、渡してあげようかしら?」

 「あげるんだ……」

 「うるさいわね」


 そんなやり取りをしながらチョコづくりを続けていると、ついにオーブンで焼いたり、冷蔵庫で固めたりとすべての工程が終わった。


 完成したチョコを見ると、奏はクッキー風にしていたり、結乃はトリュフチョコを作っていたりと工夫を凝らしていた。


 私も、柄にもなくハート形のチョコを何個も作ってしまった。つい楽しくてやっていたが、我に返るとハートの数だけ翔一を思っているみたいで、顔が噴火するんじゃないかってくらい熱くなった。


 問題は美織だ。

 成型の段階で嫌な予感がしていたが、自分のに夢中になっていたら最後のほうを注意できなかった。


 だから、案の定とんでもないものができていた。


 「みお姉、今年はチ〇コチョコ?」

 「そうね。我ながら完璧にできたわ」

 「あはは!完璧すぎて、逆にグロいよ!美織さん、最っ高!」

 「な、な、な……」


 美織が作ったのは、棒状にして上にそそり立つように伸ばされたものだった。

 表面には、血管のような筋がいくつもあり、リアルすぎて言葉が出てこない。


 そう、完全に戦闘状態の―――ち、ち……男性器だった。


 「なにを作ってるんだ!」

 「義姉さん、落ち着いて」

 「そうだよ。見てよ、めちゃくちゃ面白いじゃん!」

 「というか、去年にみお姉が作ったのは、超リアルなマ〇コチョコだったよ」

 「最悪だ!センスも、才能の使い方も!」

 「ちなみに一昨年は、リアルおっぱいチョコだったわ」


 と言って、数々のリアルチョコの写真を見せてくる美織。

 そして、その写真には毎回頭を抱えている翔一の姿があった。


 「美織、翔一がめちゃくちゃ困ってるじゃないか!」

 「うるさいわね!いいのよ!どうせ、翔一はいろんな女からチョコが送られてくるから、一個くらいふざけても!」

 「え?そんなにくるの?」

 「毎年、あいつはお付きの使用人とかにももらってたわ。何気にあいつ、モテてたから」

 「―――本当に、これで大丈夫なのだろうか?」


 美織の言葉に、一瞬で不安になった。

 そんなに翔一ってモテるのか……


 そんな不安に駆られる私には、一切の興味を持たずに、奏たちがさらに悪乗りを始めた。


 「美織さん、リアルすぎるからモザイクかけよう!モザイク!」

 「そうね。それはいい案ね―――寒天で外側を固めてから、削っていってそれっぽくしようかしら?」

 「「いいね!」」

 「よ、よくない!」


 この後は、もう私では止めきれず、結局モザイクリアルチ〇コチョコが完成してしまった。

 本当にリアルすぎて、最後のほうには直視ができない自分がどれだけ初心か思い知らされた。


 私、翔一とできるのかな?


 「もう、この際箱もディ〇ドのパッケージみたいにしよう!」

 「それありだわ!今年は、完成度が違うわね!」

 「お兄ちゃんの度肝を抜きましょう!」

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