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ドタバタ美織ファッション

 「よしよし」

 「うへへ……」

 「お兄ちゃんたち……イチャイチャするなら上でやってくんない?リビングでやらないでよ」

 「いいじゃん。まだ朝のニュースも見てるし。天気とか確認しないと、早朝から変わってたら洗濯物大変でしょ?」

 「それとこれとは別!ていうか、洗濯物は義姉さん担当じゃん!」

 「外に出したり、干すのは俺がやってるんだけど?」


 昨日の今日で、俺と玲羅は自室でもリビングでもイチャイチャしていた。

 それを見ていた結乃が耐えきれなくなったのか、怒った次第だ。


 まあいたたまれなくはなるか。


 「玲羅、天気予報も確認したし、俺の部屋に行くか?」

 「ああ、もうちょっと撫でてもらってから……」

 「はいはい」


 玲羅の発言に結乃とジト目で見てくるが、一向に意にかえすような反応を見せないため、彼女はあきらめたようだ。


 と、いつもと少し違うがおおむね同じ朝を過ごしていると、突然玄関のドアが開く音がした。


 「お兄ちゃん!」

 「大丈夫、この気配―――美織だな」

 「え?みお姉が?こんな時間に何の用だろう……」

 「さあな」


 美織が来たことに、俺たちが疑問に思っていると、玄関に通ずる扉がバン!と開けられて彼女が入ってきた。


 ―――のだが。


 入ってきたのは、白のワンピースを着ている黒髪の―――いかにも清楚という感じの少女が入ってきた。


 「「「誰?」」」


 その姿を見た一同はもれなく同じ反応を見せた。

 いや、顔が美織だからそうなんだろうけども。


 「どう?これでもう『歩く下ネタ』なんて言わせないわ!」

 「美織、ウィッグつけてなにしてんだよ」

 「これで私はどっからどう見ても清楚美人よ!」

 「うーん……」

 「なんで悩むのよ!」


 俺の家に入ってきた美織は確かに見てくれは清楚美人なのだが、なんだろうか。なんか違う。


 それはほかの2人も思っているようで、美織の言葉には誰もうなずかなかった。


 「清楚美人ってよりも―――そう!清楚ビッチだ!」

 「誰がよ!」

 「あ、それ私も思った!」

 「結乃!?」

 「そ、その、私も……」

 「玲羅まで!?」


 俺たちの評価に美織は膝から崩れ落ちた。

 ちゃんと準備したんだろうな。化粧もしてるあたり、そんなに昨日の言葉が響いたのだろうか?


 そんな美織に、俺は感じたことを言った。


 「なんていうかさ、美織に清楚は似合ってないよ。服装とか化粧を清楚にしても、美織のあふれ出る自身の表情がすべてを破壊するんだよ」

 「うぅ……そんなのどうしようもないじゃない……」


 そううなだれる美織を見ていられなかった結乃が、とんでもない提案をしてきた。


 「じゃあ、みお姉に似合うファッションをみんなで選ぼう!ルールは、この家にあるもので!」

 「結乃……あなたって人は」

 「それはいいな。玲羅もやるか?」

 「わ、私もいいのか?私、正直センスとか……」

 「いいわよ。もう翔一に『歩く下ネタ』とか言われたくないわ」

 「え?そんなに傷ついたの?―――本当に悪かった……」

 「じゃあ、責任取って」

 「あ、本当は傷ついてねえな?」

 「じゃ、じゃあまずは結乃から行きましょう!」

 「おい、逃げんな」


 俺の手から逃れた美織は、まず結乃の選んだ服に着替えようと、妹についていった。

 正直、結乃のセンスも不安しかないな。―――まあ、待ってるしかあるまい。


 残された俺たちは、先ほどの続きをするかの如く、体を重ねた。むろん、エロ目的ではない。


 玲羅が俺の胸板に寝そべるようにしてるだけだ。


 「結乃の次はどっちが行く?」

 「じゃあ、私が行こう」

 「わかった」

 「翔一はさ―――」

 「ん?」

 「私の服を選んでくれと言ったら、選んでくれるか?」

 「選ぶけど、俺も言うほどセンスはないよ?」

 「かまわないさ。恋人の選んでくれた服なら―――よほど前衛的じゃない限り大丈夫さ」


 そんなやり取りをしていると、上から結乃が降りてきた。


 「お兄ちゃんできたよ!」

 「おお……大丈夫だろうな?」

 「大丈夫だよー。ほら、みお姉来て!」


 そう言って、結乃が誘導してきた美織の姿は―――


 「清楚がダメなら、思い切ってギャルファッションに!」

 「だ、大丈夫なのかしら、これ」


 化粧こそしていないが、はだけて谷間を露わにした胸元に、短すぎて少しかがむだけで下着が見えてしまいそうなスカート。

 これはギャルというより……


 「ギャルビッチじゃねえか!」

 「結乃、これはない……」

 「えー、ド派手で可愛いじゃん!」

 「これは直結男が寄ってくるぞ。よかったな美織、モテモテだ」

 「いやよ!そんな男たち、タイプじゃないわ。私はもっと一途な男がいいのよ!」

 「はいはい。じゃあ、次は玲羅だな」


 そう言うと、玲羅が俺の腕の中から離れて、美織を連れて上に向かっていった。


 「結乃、どこにあんな服あったんだ?」

 「あー、使わない服を、何着かあんな感じに改造してるの。どうせ着ないから」

 「いいけど、本当に外であんなの着るなよ?」

 「わかってるって」


 しばらくすると、玲羅と一緒に美織が降りてきた。


 「玲羅、できた?」

 「ああ……でも、私の服だとどうしても限られてしまってな」

 「別に、結乃の部屋にあるものとか使っていいんだぞ?」

 「え?」

 「私は、家の中って言ったんだよ。自室限定にすると、お兄ちゃんが詰むから」

 「確かに……ま、まあいい!美織、入ってくるんだ!」


 玲羅が合図して入ってきた美織は、先ほどとは全然空気が違った。


 シンプルなシャツに、ピッタリサイズのジーンズ。まあ、玲羅のいつもの私服という感じだろうか?


 「あー、玲羅なら完璧だった」

 「なによ、わたしなら不服だっていうの!」

 「そうは言ってねえけど、ばっちり体のラインが出る服は、美織より玲羅のほうが似合うな」

 「まあ、そうね。このジーンズ、ケツ周りがキツイのよね」

 「こら、女の子がケツとか言うな。せめて、腰回りって言いなさい」

 「なに?そんなに私のお尻が気になるの?」

 「ムカ……」


 俺の言葉に対して、美織は挑発的に腰をこちらに向けて振ってくる。

 馬鹿なのか、こいつは……


 我慢できなくなった俺は、美織のそばまで寄って―――


 バコン!


 ―――思いっきり蹴り上げた。


 「いった!?なにすんのよ!」

 「てめえが悪いだろ!誘惑みたいなことしやがって!」

 「うっさいわね!やってみただけよ!」

 「やんな!馬鹿!―――次は俺の番だ、行くぞ」

 「あ、ちょっと!」


 俺は蹴りを入れた後は、間髪入れずに美織を自室に連れ込んでいった。


 俺たちに取り残された、結乃と玲羅は呆然としていた。


 「大丈夫なのか、あの二人」

 「大丈夫だよ。だいたいあんな感じだから」

 「ちょっと、妬いてしまうな。あんな距離感は、恋人としてなるには少し難しいから」

 「お兄ちゃんなら、頼めばお尻に蹴りくらい入れてくれると思いますよ?」

 「チガウッ!そういうことじゃない!」


 そんな会話は、俺の耳のもとには届くことはなかった。


 俺の部屋にて―――


 「美織は、どんな感じの服がいいんだ?」

 「んー、何でもいいのよねえ。正直、服とかよくわかんないし」

 「同感」

 「法が許せば、裸でいいのに」

 「それは理解できない」


 ごちゃごちゃわけのわからないことを言う美織に似合う服を探してはいるのだが、さすがに玲羅の部屋に無断で入れない。

 結乃は別にいいけど、さっきの話だと改造服しかない気がする。


 「ていうか、翔一の部屋になにかあるの?」

 「いや、玲羅に着せようと思ってるコスプレの数々はあるよ」

 「あなた……私が言うのもなんだけど、なかなかの変態よね」

 「うるせえよ」


 そう言いつつ、クローゼットを開けて、コスプレ服を見渡す。

 ―――だが、まともに常用できる服はなさそうだ。


 「全然まともな服ないじゃない」

 「いや、当たり前でしょ」

 「まあ、なんでもいいから、着させなさい」

 「なんでこの人は上から目線なんだろう……」


 というわけで、どうしようもないので美織に選ばせた結果。

 彼女はなぜかメイド服をとった。


 そのまま、俺より早く降りていき、結乃たちにお披露目した。


 いや、俺なんも悪くなくない?


 「お兄ちゃん、趣旨わかってる?」

 「翔一、こういう服は私が着るから……」

 「いや、美織が自分で選んだんだぞ?」


 俺が混乱している中で、美織はさらに余計なことを言い始めた。


 「ご主人様、お嬢様方、今日のお昼は私がおつくりいたしましょう」

 「お兄ちゃんサイテー」

 「おい、しばくぞ美織」

 「し、翔一、こういうことがしたかったのか?言ってくれれば……」

 「あー、もう収集つかねえわ!終わりだ!終わり!」

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