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少年アラキは死を運ぶ  作者: 久方優那
第一章 ファーストステップ
6/6

一日目-4 アイテムハック

前回まで

ユキ様ちゃん相手に太刀打ちできないことを悟って、戦力拡大を目指す僕は、彼女と反対方向に進んでいた。

 一日目、体内時間的にようやく午前も終わる間際、木々が開けた赤い空がよく見える平野に僕は立ち止まって思案する。


「これってどうするべきなのか……」


 仲間探しに歩いてそれなりの時間が経っている。

 この時にはすでに、ガイドが報せるアナウンスで、このゲームは転換を迎えていた。



[【詐術士】の死亡が確認されました]

[残り挑戦者数9]

[報酬のランクが上昇します]



 誰も死ななくて良いはずのこのゲームで、一日目のうちから死人が出ていた。

 最も、このアナウンスだけでは誰が手にかけたのか、それは他の挑戦者なのか、モンスターによって殺されたのかは分からない。だが、もはや考えなしに他人を信頼できない、そんな疑念を育ててしまったのは想像が難しくない。これから仲間を探そうって時にこんなこと起こってしまえば、結果も芳しくなくなるだろう。


 僕は、不自然に地面に転がる装備品を静かに見つめてから黙祷した。


「……」


 遺体はない。経験値に置き変わった故の装備の散らかりようである。ここからすぐに離脱しなければいけないことを理解していながら、何か間違えれば自分がこうなってしまうと思えば、心が騒いでとても冷静に行動することなど出来なかった。


 まずは、この死生観を克服しよう。


 誰かが死ぬ。それこそ、報酬やらプレイヤーの資格やら、意味もまだ不鮮明な理由で理不尽に、未来を奪われる。

 それを回避するために、最善手を取らなければならない。


 仲間を手に入れて、装備を使って強くなる。


 そのためには、たとえ疑われる原因になろうとも遺品を有効使わない手はなかった。






防具

▼村人の服……耐久+100。敏捷+120。この防具は村人が着る普段着です。

▼音無の靴……器用×1.3。この防具を身につけると浮遊効果を得られます。


アイテム

▼発火の実……皮が破れると火花を起こします。食べると空腹を少しだけ回復できますが一体時間、スキルの使用が封じられます。

▼偽装の腕輪……看破によるステイタスの閲覧が行われた時のため偽装することができます。うまく騙してチャンスを作りましょう。装備したアイテムについては偽装の対象外です。




「服よりもズボン系の装備があれば文句なしだったんだけど、貰えるだけマシか。靴は……とりあえずポーチで、木馬はポケットにしまうか。発火の実もデバフが辛いけど食料がないしなぁ……いちおうポケット行きかな」


 墓漁りの盗掘をしている気分でなんとも悲しくなるが、綺麗事は言っていられない。


 追加でポーチがもう一つ手に入れられたらとおもったがそこまで都合良くはいかないみたいだ。嵩張ってしまうのに念のためになるべく多く持ち歩きたいと思うのは僕の欠点であるとわかっているのだが、結局、村人の服も下に着込んで、腕輪も身につけた。


 これ見よがしに偽装の腕輪をつけていれば素のステイタスの低さもユキ様ちゃんのように疑ってくれることだろう。なんやかんやでこれが一番の拾い物だと思っていると……そういえばと思い出す。


「武器はどうしたんだろ……?」


 もうすでに持ち出されていたとか? それらしきものは見当たらないんだけど……と、周辺の地面を探したらあっさりと見つかった。


「あっ、もしかしてこれか……」


 きらりと銀色の輝きを放つそれは、サイズにして爪楊枝ほどの針金みたいだった。


 拾ってみると正解だったらしく、ガイドによって判明する……かに思われたが、ばちっ、とノイズが走った。


 まるで静電気が弾けたように俺と針金の間で抵抗が生まれたかのような演出だったが、実害は一切なく痛みは襲ってこない。


「なんだこれ……?」


 いずれにせよ、実害がないなら問題はないか。

 とはいえなんなのか気になっていたところ、ガイドが気になっていたことについて案内を流した。



[スキル〈■■〉によって専用装備の所有権を獲得しました]

[偽装針レディーオの抵抗を無効化します]


▼偽装針レディーオ LV.3……筋力+300。耐久+300。敏捷+300。理力+300。器用+300。この針は刺した対象のかたちを偽ることができます。偽装状態の維持可能枠3。刺した対象の数だけ成長します。




 

次回投稿予定 2022/09/16 19:00

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