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少年アラキは死を運ぶ  作者: 久方優那
第一章 ファーストステップ
5/6

一日目-3 美貌の少女

前回まで!

通学! 転移! ステイタス! 探索! ゴブリン! 勝利! 油断! リンチ! 謎の少女が殲滅した!

「もしかして、それって他人のステイタスを覗けちゃったりするアイテム?」

「さぁ? てかこんな殺し推奨の物騒な状況で手の内教えるわけないでしょ」

「うん、正論だね、使ってるところ丸わかりな点は置いておくとして。……ところで助けてくれたお礼がしたいんだけど、ちょっと休戦して話し合いするのはどうだろう?」


 僕はこの状況を乗り切るために頭をフル回転させた。

 なんでもいいからなるべく会話をつなげて、情報を集めると同時に、負けない戦略を組み立てる。なんてカッコつけてるけど、今僕は逃げたい気持ちでいっぱいだった。


 いや、なにあの殲滅攻撃。僕に防ぐ術ないしファイトした瞬間ルーズアンドデッドまで一直線。僕も血の薔薇を咲かせることは必至だ。


 敗色濃厚どころか確実に負ける。


 それでも……彼女が僕のステイタスをほぼ丸裸にしたとしても、安易に彼女が襲い掛かってこないだけの理由がまだ存在している――それが僕のスキルの中で文字化けしているあの異能だ。


 彼女自身、わからないと公言しているし、もしそれがブラフなのだとしても、僕の活路はここにしかない。


「は? 普通に嫌に決まってるじゃん。胡散臭いブスのことなんて信頼できないし」

「え、頭沸いてんの? 僕みたいな世界一の美男子捕まえてブスって言い切るとか感受性を疑うよ。大丈夫?」

「ぷっ、自信過剰すぎよアンタ、ギリギリ見てられる顔のレベルのくせにきもっ、ナルシじゃん」

「……自分に自信を持てない人間の僻みにしか聞こえないね」

「は? 私の美貌には自信しかないわよ」

「ぷっ、美貌って、願望強すぎ。どう見ても君は可愛い系のロリ顔だろ。しかも自信しかないとかきもっ、ナルシじゃん……あっ、ごめん、今のは売り言葉に買い言葉っていうか、つい口が滑っちゃっただけで」

「……――次はないわよ」


 両手を上げて、敵意なしの意思表明。

 対して、きりきりきり、と僕に軋む音が聞こえるくらい少女は割と冗談抜きで殺意を込めた矢を弓につがえて、構えていた。なにこの子、おっかない。


「とにかく、僕は今ここで君と争うつもりはないんだ。人を殺すなんて頭がおかしいこと君もするつもりはないんだろ? 僕も無駄に人の命を奪う真似はしたくないと思ってる」



 沈黙が続いた。

 張り詰めた空気の中、僕は彼女の出方を待つ。

 結論から言うと、この場は逃げるしかないと見た。ゴブリンの時は100%勝てる戦いではないかも知れなかった、そんな小心な理由から逃げたかったけど、彼女相手の場合は100%勝てない戦いだともう見切っている。


 なら、ハッタリをかましてでも、この未知数な少女とここで別れるに限る。幸いにも、よっぽど人格が歪んでいない限り、倫理観的に人殺しを喜んでする奴はいないだろう。


 僕は名前も知らない彼女の人格に命運をかけた。


 断られたら、ここで死ぬ。

 にこにこ笑いながら精一杯の余裕を見せてはいたが、つーっと、嫌な汗が頬を伝う。

 拭うなんてすれば僕が気持ち的に負けていることを示すようなものだ。つまり、ただの雑魚として狩られる未来がそこにある。


 極限状態の強がりだったが、案外僕はこう言うことに向いているみたいだ。ずっと笑顔を貼り付けて、周囲に合わせようとしていたのだから当然か。


「……あんた、名前は?」

「それはフェアじゃない。仲間じゃない相手に弱点になるかも知れない情報をあげるわけにはいかないからね」


 特に、名前による縛りはとてもポピュラーな能力だと思う。

 だけど、彼女の狙いがそこではないこともなんとなくわかった。短絡的に見えて、よく考えている。


「じゃあなんて呼べばいいの」

「そうだね……アラキって呼んでくれたらいいよ」

「アラキね……覚えたわ。今度会う時、殺し合いにならないことを祈ってるわ」


 そう言って去ろうとする少女を僕は呼び止めた。


「いやいや、一方的に聞くのとか人としてどうかと思うよ。偽名でいいからそっちもちゃんと名乗るべきだ」

「小煩い男……。そうね――ユキ様とでも呼んでちょうだい」

「わかったよユキ様ちゃん」

「アンタってほんと……っ、もういいわ。とりあえず、経験値ごちそうさま。また機会があれば囮としてわたしに良い思いさせなさいよね」



 そう言って、サイドテールを靡かせながら弓持ちの少女、ユキ様ちゃんはその場で跳躍し、手頃な近くの木に飛び乗ってから、大きく跳躍して遠ざかっていく。その背中は一瞬で見えなくなった。


「ふぅ……」


 一難は去ったと見ていいのだろうか?

 僕は小さく息を吐き出して、新鮮な空気を取り込んだ。

 ユキ様ちゃんが立ち去ったことを考えれば直近の脅威が遠ざかったのだと安心したくなるのがまた厄介だ。

 安心できる要素は、何一つとしてないというのに。


「何が狙いだったんだ?」


 正直、彼女が顔を見せた理由がわからなかった。

 争わない意志を見せればあっさりと引き下がったし……。

 ただ挨拶をするためだけに、よく分からない人間の前に顔を出すか?


 経験値を横取りして、見つからないうちに逃げるのが一番リスクがないように思う。わざわざ見せつけるように僕のステイタスを看破してみせ、軽く煽り合ってすぐに別れた――この行動に隠された意図とは何なのかさっぱり検討もつかない。


「……何にせよ、収穫はあった」


 僕は角笛を取り出して、そして、ユキ様ちゃんが放置して行ったドロップアイテムの山を集める。





▼緑妖鬼のバンダナ(×3)……敏捷+50。このバンダナは氏族の証です。緑の妖鬼以外の種族が装備していると警戒されるようになります。


▼石の短剣(×4)……筋力+100。最低ランクの武具です。緑の妖鬼はこの石の短剣を使って狩りや解体作業をしています。


▼木の小盾(×3)……耐久+100。最低ランクの防具です。加工されていないためすぐに壊れます。




「全体的にしょぼいな……ユキ様ちゃんも知ってておいて行ったのか」


 でも、何も持たないよりもマシである。というか偽装を勘違いされるほど雑魚と判明したので装備でどうにか誤魔化さなければ生き残れないかもしれない。

 流石に嵩張るし、アイテムポーチに入る枠も後二つつしかないのでバンダナをすべて腕にくくりつけて、石の短剣と緑妖鬼の角笛を残るポーチの枠に収納する。





 

【魔法剣士】新城才琉 LV.2

 筋力:2 耐久:1 敏捷:1 理力:2 器用:2

―性能評価【F】

スキル

アクティブ

 EX〈■■〉

 A〈魔装〉 C〈剣術〉 C〈魔術〉 E〈一擲〉

パッシブ

 E〈思考加速〉


▼一擲……溜めの状態後、任意の自分の能力値、スキルを一時凍結することで威力上昇。スキル発動中に妨害された場合、不発となる。



武具

▼術理剣グラド LV.1……筋力×1.5。理力×1.5。この武具は魔法すら断ち斬る剣です。斬った対象の数だけ成長します。

▼木の小盾……耐久+100。最低ランクの防具です。加工されていないためすぐに壊れます。


防具

▼魔鉱石チェストプレート……耐久×2。敏捷×0.8。この防具はあらゆる攻撃から装着者の身を守ります。

▼白狼の皮ブーツ……耐久×1.5。敏捷×2。この防具は軽く丈夫で装着者に新しい速さを提供します。

▼緑妖鬼のバンダナ(×3)……敏捷+50。このバンダナは氏族の証です。緑の妖鬼以外の種族が装備していると警戒されるようになります。


アイテム

▼青の林檎……体力・魔力・損傷を全快させ満腹感を得られる林檎です。

▼身代わり木馬……瀕死・即死のダメージを一度だけ無効にします。使用後、木馬は壊れ使えなくなります。

▼緑妖鬼の角笛……理力+500。器用+1000。この笛の音色は緑の妖鬼を集めます。また、近くに存在する鬼種族の能力を爆発的に強化します。

▼石の短剣……筋力+100。最低ランクの武具です。緑の妖鬼はこの石の短剣を使って狩りや解体作業をしています。






「おお……ちゃんとバンダナ三つ分も補正されるのか」


 よくある指輪装備もジャラジャラするだろうけどつけ放題というわけだ。

 ということは、だ。僕がこれから必要なのはトレーニングして鍛えるとかじゃなくて、外部装置、つまり能力値のドーピングアイテムか。


「OKオーケイ。なんとなくプレイスタイルが分かってきたぞ」


 ともあれ、今の僕に必要なものは決まっていた。


「まずは、仲間がいる」


 数は力だ。

 ユキ様ちゃんと対峙して嫌というほど分からされた。

 今後もし敵対者が現れたとして、僕一人では対抗できないので協力者が必要不可欠である。


「うん、まぁ……運要素強めだけどやるしかないもんなぁ」


 しゅっ、しゅっ、と残ったアイテムをすべて術理剣で切り付けた。すると、アイテムは忽ち光り始めて、経験値となってグラドに吸収された。


「へぇ、切られたアイテムはただの物体扱いになるのか」


 これもまたガイドでは分からなかった情報だ。



[術理剣グラド が 進化しました]


▼術理剣グラド LV.2……筋力×1.5。理力×1.5。この武具は魔法すら断ち斬る剣です。斬った対象の数だけ成長します。最後に斬った魔法を一度だけ使えるようになります。



 ガイドが現れて、剣が進化したことを通知される。

 いい加減出てきたり消えたりめんどくさいからせめて視界の端に行ってくれよ。とか考えてたらマジで視界の端に移動してくれた。あれ、もしかしてこれってここに置いておくといいやつなのでは? 確認しようとすればまた目の前に移動してくるし、わざわざ閉じなければ良かったのか。


 にしても、進化っていうくらいだから見た目も変わるかと思えば違うようで、強いて言えば刀身に刻まれた刻印のうち一箇所が白く輝いたくらいだ。それよりもメインはフレーバーテキストに生えてきた一文である。


 ようは、この剣で斬った魔法をそのまま相手にぶつけることができるということだ。魔法を斬るとはどういうことなのか、色々と検証もしてみたいがそれは後回しだ。


 思った以上にチート性能な武器なのでもしかすると僕の能力値が雑魚なのもこの剣のせいなのではと疑いたくもなるが……実際のところ、その手の運営サイドの思惑なんて分かるはずもない。


「とりあえずユキ様ちゃんとは反対側に行くか」


 術理剣グラドを抜き身のまま、僕は探索を再開する。


 もう、ゴブリン程度なら逃げる必要もない。

 偉く長く感じた短い時間だが、これにて僕のチュートリアルは終わったのだ。


 道なき道を歩きながら、さっそく仲間を作るための方法について頭を捻らせた。

金曜日投稿予約できていなかった……。

ワイチューブで多彩な桃さんのだるまサバイバルで緊張感の勉強をしていました。面白かったです()


次回更新予定 2022/09/09 19:00

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