表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

花はそうして落ちていった

「この花が枯れたら…」


「なに?」


小さな俺は聞いたんだ。


爺さんは教えてくれたはずなんだけど、上手く聞きとれなかった様な気もするし、それとも教えてくれなかったのかもしれなくて、ただもう昔過ぎて思い出せない。


そこには沢山の花が咲いていて、色んな人が横切っていく。


人々は花を見ては写真を撮ったり、匂いを嗅いだりして去っていく。


中には毎日訪れて、話しかけて行く人もいる。



花は、人間の癒しなんだな。



雨の日は、みんな花を見には来ない。

だってわざわざ傘さして花の前に来てどうするんだ?

肌寒くて足元だって濡れるだろうし、花を輝かせる太陽の光だって無い。匂いだって届かない。


そもそも花だって雨に濡れてしなだれた姿を見られるのは、恥ずかしいだろ。


だけどたまに、雨の中やってきては、濡れた花を熱心に撮り続ける奴もいるんだ。

次に雨が降るのはいつかな、なんて言いながら。



濡れた花がいいだなんて、変わってるよな。



いつからか、俺一人でそれを見てるんだ。

爺さんはいつの間にかいなくなって、俺だけが見てるんだ。


隣には誰かいたような気がするんだけど、

誰だったのか、それが昨日の事だったのか、もっと前の事だったのか…。


花びらが萎れて、落ちた。

しょうがない事なんだ。

花は咲いたら、いつかは枯れて、終わるんだ。


終わった後の事なんて考えないさ。



ただ、落ちるだけなんだ。



「次はお前の番だな」



爺さんはそう言ったんだ。

その時になって思い出すなんて、上手くできてるよな。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ