第1章:夜は色々と危険です
夜は色々と危険です(by長女)
夜。どの家庭でもそろそろ就寝に入ると思われる時間帯。
そんな時間帯だというのに、1人せわしく走っている男性がいた。
男性は追われているのか、時々後ろを振り向いては走っている。
「―――――ッどうなってんだ!? アイツが来るなんて聞いてねぇぞ!?」
『だって、言ってないもんなぁ』
透き通るような声が、男性の頭に降ってくる。
それは比喩でも隠喩でもない、その通りだった。
男性が顔を上に向けると、そこには1人の少女が男性に向かって飛び掛ろうとしていた。本当にそうなのか、カモフラージュなのか、少女は白のセーラー服を着ており、交差させている両腕には大型ナイフが構えられている。
少女は構えていたナイフの1つを男性に向かって投げた。男性はそれを避けるものの無様にすっ転ぶ。
そんな隙を少女が見逃すわけもなく、素早くナイフを拾うと男性に切りかかろうと姿勢を低くし、男性に近づいていく。
が、何につまづいたのか少女は転んだ。構えていたナイフはしばし宙に舞うと、すっ転んでいた男性の頭に突き刺さった。なんていうか、あそこまで決めといてそれはないだろって感じですよね。
「あ……」
少女はそれに気付くと、だくだくと血が流れている男性の頭からナイフを抜き取る。が、時は遅かったらしく、少女の後ろから声がした。
「姉さん。真白姉さん。隠しても無駄ですよ」
真白。それが少女の名前らしく、少女もとい真白はびくぅと大きな反応を見せて後ろを振り返る。
そこには少女が立っていた。姉さんと呼ぶところや、瓜二つなところから、2人は姉妹と見えた。
違う所といえば、髪の色と、彼女と同じ型と思われるセーラー服の色とスカーフの結び方くらいだった。真白の髪は白に近い茶金だが、少女は対照とも言える黒色で、セーラー服も黒色、結びは真白の2つに対して少女は1つ。
「や、闇夜――――」
青ざめた顔で真白は情けない声を出す。闇夜。それが少女の名前のようだった。
「反省会はまた明日、先生と一緒にしますから、とりあえずどいててください。後始末しますから」
と言っても、流れ出た血を消すのと死体の処理だけですけど、と言って真白に可哀相な殺され方をされた男性をチラ見する。きっと男性も悪い事をしたんでしょうけど、さすがにこんな殺され方だと可哀相ですよね。
「ご、ごめんねっ。なんか焦っちゃって――」
「闇夜!」
真白の声を遮るように、陽気な声が闇夜を呼んだ。
闇夜が声がする方向を振り向いた途端、がばと抱きつかれた。
「…………殺していいですか?」
いきなり抱きつかれたことに驚いているのか怒っているのか、闇夜は何気なく抱きついてきた人物の首元を掴んでいる。
「冗談だよ、冗談!」
抱きついてきた人物は笑いながら闇夜から離れた。が、若干冷や汗をかいているように見えるのは気のせいでしょうか?
「光……冗談も度を過ぎれば死に値します」
それが本気か冗談かわからない…………きっと本気なのでしょうね。闇夜の青筋がたっています。それはともかく、抱きついてきた人物の名前は光というらしく、ニット帽を被った少年だった。
「ゴメンゴメン。つい癖で!」
どんな癖なんでしょうか。少なからず、光も真白や闇夜と似ているところを見ると姉弟と見えます。背丈も同じくらいなところから三つ子なのでしょうね。
「でもさ、俺今回何もやってないよ?」
怒られることは無し! と言った態度で言う光に対し、闇夜は無表情になった。
「私は姉さんと2人だけでも十分なのに。先生に明日お願いしようかな」
ぼそりとそう呟くと、後始末にとりかかった。光はその言葉をうけてトリップしたのか、闇夜の言葉をリピートする。
「『私は姉さんと2人だけでも十分なのに』。『2人だけでも十分なのに』。『2人だけで』…………」
一方、さっきから何も言ってない真白はというと――――
「ごめんね、焦っちゃっただけなんだよ。そう、焦っちゃったの。誰にだってあるよね、焦ることって。いや、それで許してもらえるなんて思ってないよ? でもね、焦っちゃっただけなんだよ―――――?」
こちらも同じようにトリップしてます。まぁ、なかなか闇夜も厳しいとは思いますけれど、そこまでショックうけるものなのでしょうか。
闇夜は後始末を終え、その光景を見た。
「……先帰っちゃってもいいですよね」
そういうと闇夜は、2人を置いて帰っていった。
翌日、警察に保護されたとかされてないとか。
と、まぁこんな感じな話ですね。
で、書き忘れたんですけど、この三つ子たちの名字は暦です。いれるタイミングを逃しました。すいません……。
夜は色々と危険って言いますけど、夜に外に出てる人も中々危険だと思うんです。