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第八十七話 奪還

レナンジェスは解決策が見つからないまま3日が過ぎた。


(タイムリミットは後4日。しかし3日以内に答えを出せなければ私はミーアを失う)


そして脳裏に浮かぶミーアの笑顔。何処までも純粋で何処までも可憐な彼女を思い浮かべる。


(私が悪いのだ。ゲームバランスを崩したり異世界に召喚されたり。結果、ミーアの父親の良いようにされてしまった。もし、彼女が婚約したら彼女の父親が公爵の座に就くであろう。そうしたら何もできない。更に悔しいのは公爵家の跡取りを最近、妾との間に生まれた子供に継がせると公言している事だ。許せない。しかし何もできない。私は何故、無力なのだ?私に力があれば…)


そんな事を繰り返し考えている。最悪は豚公爵もミーアの父親も暗殺する手はあり。それを行えばミーアの婚約は白紙に戻るだろう。同時に彼女を最も苦しませる結果になる。もう、レナンジェスが彼女を支えられなくなるのだから。


「レナンジェス」


不意に保険医姿の第一王妃がレナンジェスに声を掛けてくる。


「…はい」


「悩んでいるな」


「…はい」


「話が変わるが私と第二王妃が懐妊したのだ」


「おめでとうございます」


「ありがとう。妾はそれを3日後に発表するつもりだ」


「そうですか」


「そこで我が子の将来の領地を安定させた功労者に褒美を取らせようと思っているのだ」


「領地?」


「あぁ、旧モブ国だよ」


「え?」


「最大の難関のマッチョを大人しくさせ、観光などで国を潤わせた者に褒美を出すのは当たり前だろ?しかし褒賞前にその者は異世界に召喚されて先延ばしになっていたのだ」


「それって…」


「その者には相応しい地位か褒美が必要だと思わないか?」


「王妃様…」


レナンジェスの目頭が熱くなる。


「それでその者は何を望むのだろうな」


「それは…ミーア様との結婚だと思います」


「そうか。その者は妾の妹分だ。セロ公爵家の入り婿に最も相応しいな」


第一王妃はそう言いながらその場を去る。


(私の苦労は無駄では無かったのだな)


レナンジェスは頬に一筋の涙を流しながら第一王妃の後ろ姿を見送っていた。




3日後、レナンジェスは王宮に呼び出される。


「レナンジェス=ハックマンよ。其方はこれまで数々の功績を残してきた。よってここに褒賞を取らせる。何なりと欲しい物を言うが良い」


王は満面の笑みを浮かべながら言う。


(ミーア…)


不意に寂しそうな笑みを浮かべながら見守るミーアの姿が目に入る。隣では彼女の父と豚公爵が無表情でレナンジェスを見つめている。


「私の望みは1つです。ミーア=セロ公爵との婚約です!」


レナンジェスは高らかに言い放つ。


「子爵家の者が!身分を弁えろ!!」


不意に豚公爵が怒鳴り散らす。


「婚約を控えた我が娘に何という事を言うのだ!不敬であろう!!」


ミーアの父も怒鳴りだした。


「静まれ!」


不意に第一王妃が一喝する。すると2人の貴族は黙り込む。


「豚公爵、準男爵よ!其方等は王宮にて王に不敬を働いた!!その意味は解っているな?」


『それは…』


急に顔を青ざめさせる2人。


「王の名に置いて処罰を下す。豚公爵家、準男爵家は取り潰しだ」


王が静かな声でそう宣言した。


「王でも簡単に公爵家とを取り潰せませんぞ!」


豚公爵が王に異を唱える。


「これを見てもかしら?」


不意に第二王妃が1枚の書類を豚公爵に見せる。


「これは…」


「豚公爵家と準男爵家の今までの悪事の数々です。人身売買にモブ国との密通、モブ貴族家を使いプロテインの価格上昇。贈賄に横領まであります」


その言葉に2人の貴族は力なくその場にへたり込んだ。


「父上…それではルーアが…」


不意に俺様王子が慌てながら言う。


「問題ありません。ルーアとその弟はセロ公爵家の養子として迎え入れます」


ミーアがそう言うと俺様王子は驚愕の表情を浮かべた。


「何故…」


途惑いながらミーアに問い掛ける俺様王子。


「ミュージー殿とルーアが居なければわたしはレナンジェス殿と仲良くなる事もこうしてプロポーズされることもありませんでしたから」


ニコリと笑いながら言うミーア。


「…すまない」


俺様王子はそう言うと口をつぐむのであった。




褒賞式も終わり、ミーアとレナンジェスは王宮のバルコニーに出る。この後はダンスパーティーだ。


「まさかこんな形でプロポーズされるなんて」


ミーアは頬を赤らめながら言う。


「私はずっと貴女を好きでした。しかしその気持ちを偽っていた」


「リムル殿やネイ殿も好きだったのでは?」


「…はい」


「私にプロポーズしたなら解っていますよね?」


「生涯、貴女だけを愛します!」


「ダメです」


「えっ?」


「殿方との関係を持たないレナンジェス殿は砂糖の入っていないアイスクリームみたいなモノですから」


『そういう訳だよ』


不意に背後で声を掛けられる。そこにはライディースとジュドーが立っていた。


「え?」


レナンジェスはキョトンとする。


『ご主人様』


今度は第一王妃に連れられて小悪魔~ズがやってくる。


「どうしてみんなが?」


レナンジェスは呆けた表情で尋ねる。


「この者達が豚公爵の悪事の証拠を揃えたのだ。其方が異世界召喚中に色々あったからな」


第一王妃はこれまでの経緯を話し出す。レナンジェスが異世界召喚されている間にレナンジェスが開発した利権を豚公爵が手に入れようとしたらしい。それを大公家の力で阻止したが豚公爵は諦めなかった。そしてミーアとレナンジェスが付き合いだしたと知ると行動を起こしたみたいだ。全てはレナンジェスを暴走させる為に。


それを察知したライディース、ジュドー、小悪魔~ズは悪事の証拠を集めたらしい。元々、黒い噂があった人物だ。証拠集めは楽だったみたいだ。


それを手にした第一王妃は断罪の場を設ける事を考える。そこで思いついたのがレナンジェスの功績に対する褒賞だった。


「そうか…結局、みんなが居なければ私は何も出来なかったのだな…」


「そうですね。だから皆さまも平等に愛してください」


レナンジェスの言葉にミーアは嬉しそうに言う。


「僕はレナンジェスの初めてを貰おうかな」


ジュドーがニヤリと笑いながら言う。


「我はレナンジェスに初めてを捧げたい」


ライディースは妖淫な笑みを浮かべながら言う。


『僕らはご主人様と…ムフフ』


小悪魔~ズは野獣の様な視線をレナンジェスに向けた。


「勘弁してください。私の初めてはミーア様に捧げたいです。勿論、卒業して結婚してからですが」


その言葉にミーアは顔を赤らめながらレナンジェスの脛に蹴りを入れるのであった。


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